オーイシとの対バンはリスキー!?
オーイシ そういう人たちのアイコンになれてるのがすごいよね。要は最高のオフ会をやってるわけじゃない。
堀江 そうだといいなと思ってバンドやってますね、ここ最近は。俺がただそう感じてるだけなので、実際はわかんないですよ。あるいは、変身願望のある人も多いのかなって。俺自身も、VRでめちゃかわいい犬耳の女の子になってライブがしたいんですけど。
オーイシ あれ? おたくのコンポーザー、大丈夫ですか?
一同 ははは(笑)。
堀江 そういうのと同じで、それこそ現実世界では虐げられる側かもしれないけど、ここなら変身できて、いつもの自分じゃない自分になれるような、そういう場所でもあったらいいなとは常々思っていて。
生田 僕らのライブが人生初ライブって子も多いよね。「今までアニメのイベントとかは行ったことあったけど、ライブハウスは怖くて行けませんでした」みたいな。で、「初めてのライブがペンギンでよかった」っていう感想をお手紙とかでいただいたり。もちろん、ライブ慣れしたお客さんで、ペンギンのライブも気に入ったから通うようになったっていう方も増えてますけど。
オーイシ それこそ、こないだロッキン(「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」)の出演も決まったじゃない。言っちゃえばさ、あれって陽キャの祭典じゃん。
堀江 だから怖いっすよ。
オーイシ あははは!(笑)
堀江 「出演が決まってうれしい」っていうのとはまた別の感情ですよ。だって絶対怖い人いっぱいいるじゃん。
オーイシ いるね。じゃあ君ら、楽屋でずっとメンバーだけで固まってるやつだ。でもロッキンの出演は、自分たちで決められるものではないから。「ペンギンならフェスを盛り上げてくれる」っていう、運営側の評価があってこそだから。
堀江 ありがたいです。でも、今決まってるイベントで個人的に一番怖いのは、オーイシさんとの対バンですけどね。鷹司はわかってると思うけど、正直、一番リスクがある。
オーイシ ちょっ! 言い過ぎやで(笑)。
堀江 ウチってメンバーが5人いて、曲を作ってるのは俺だけど、結局は生田鷹司のバンドなんですよ。つまりバンドであっても歌ありきなんです。そのボーカルの鷹司がね、技術が高いのは俺も認めるところなんだけど。
生田 技術的にもキャリア的にも、諸々オーイシさんをリスペクトしすぎてるっていう。
オーイシ ああ。いや、大丈夫だよ!
生田 えーっ!
オーイシ ホントホント。僕は歌のうまさじゃなくて、「おしゃべりクソ眼鏡」で売ってるんで。昔はカッコつけて「ヒリヒリしたギターロックを聴かせてやるぜ」的な感じだったんだけど、あるときから、要はアニメソングに携わるようになってから、お客さんに対してサービスするようになったんです。つまりお客さんが楽しいのが一番。そこに自己実現だったり喜びだったりを見出して、だから眼鏡かけてカタカナにして「オーイシですよー」ってやってるんです。
オーイシマサヨシのスタンスはエンタメ
堀江 俺はそんなオーイシさんに、イングヴェイ・マルムスティーンが1周回ってももクロ(ももいろクローバーZ)さんのバックでギター弾いてるようなものを感じるんですよ。俺はそれがすごく好きなんですけど、そこに抵抗は?
オーイシ まったくなくて。むしろ、今まで増やしてきた引き出しを開ける機会がアニソンにはすごく多いから。
堀江 何やってもいいですからね。
オーイシ なおかつそれがアニメファンの方に通じたときのうれしさっていうのは、やっぱりハンパなくて。僕は今ね、音楽というよりはエンタメをやってるっていうイメージしかなくて。音楽って、エンタメに包括されるジャンルでしょ。もちろんそこにはアートも関わってくるんだけど、いずれにせよ音楽よりも大きなエンタメという枠が、Tom-H@ckと出会ったことによって見え始めて。だから今技術の話してたけど、めっちゃ偉そうなこと言うと、楽器はうまく弾けて当たり前、歌もうまく歌えて当たり前なんですよ。結局スキルって、ストレスなく音楽をするための手段でしかない。そのうえで良質のエンタメを提供するっていうのが、カタカナの「オーイシマサヨシ」のスタンスになってるかな。
堀江 逆に、漢字の「大石昌良」のときは、より音楽的と言うか。
オーイシ そうだね。そっちはもうバッチバチに弾き語りのスキルを見せると言うか、「アコースティックギターでこんだけできますよ」みたいな。それにしたって単に技術をひけらかしてるだけじゃないんだけど、そういう開き直り方ができてます。
堀江 いわゆる名義がいくつもあるのはいいですね。
オーイシ そうそうそう。だから今が一番楽しいかも。俺、二十代の頃は正直、何していいかわかんなくて。まあ、それはそれで焦燥感とかが音に表れてて、いい部分もあったと思うんだけど、30歳を過ぎていろんなものを自分でコントロールできるようになってから、音楽がすごく楽しくなって。スタジオに入るときもさ、昔は夜中の1時とか2時に終わることが多かったけど、最近は夕方の5時に終わらせるようにしてるもんね。
一同 おおー。
オーイシ 朝10時くらいから入ってさ。例えばサウンドイン(東京・千代田区にあるレコーディングスタジオ)でレコーディング終わって、夕焼けに染まる国会議事堂を横目で見ながら高速乗って帰ってるときの勝ち組感ったらないわけですよ。「定時で帰ってまっせ」みたいな。
堀江 ペンギンではまずないからね、そんなこと。
オーイシ 僕も、鷹司くんと地元が近いんだけど、愛媛出身の田舎者だからさ、「東京で踏ん張らなきゃ」みたいな気持ちがずっとあって。自分が東京にいてもいいんだって思えるシチュエーションだったり景色だったりに触れることが1つのモチベーションになってるから。そういう意味では、今この三十代後半が、非常に自己実現感があって、「まだまだ田舎には帰れないな」って思える瞬間はたくさんあるなあ……って、めっちゃいい話しましたね。ライブのMCに取っとくべきだったかな。
──記事に書くの、やめときます?
オーイシ いや、でもこれMCで言ったらどんな空気になんねんっていう。しんみりしちゃうよね。そのあとで「それでは聴いてください、『ようこそジャパリパークへ』!」とか言いづらい(笑)。
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オーイシ対ペンギンは「遊戯王」!?
- オーイシマサヨシ「Hands」
- 2018年7月18日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
1350円 / PCCG-70431
- PENGUIN RESEARCH「WILD BLUE / 少年の僕へ」
- 2018年9月12日発売 / SACRA MUSIC
-
初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / VVCL-1290~1 -
通常盤 [CD]
1400円 / VVCL-1292 -
期間生産限定盤
[CD+DVD+グッズ]
2200円 / VVCL-1293~5
- 大石昌良 / オーイシマサヨシ
- 愛媛県宇和島市出身のシンガーソングライター。大学の軽音楽部の仲間である川原洋二、沖裕志と共に1999年に結成したSound Scheduleでボーカル&ギターを担当する。2006年にSound Scheduleが解散してから、2008年にシングル「ほのかてらす」でソロデビュー。2011年にはSound Scheduleの再結成でも話題を呼んだ。またアニメソングシンガー・オーイシマサヨシとしての評価も高く、オープニング主題歌を担当した人気アニメも多数。2015年にはTom-H@ckとのユニット・OxTを結成。2017年7月にはアニメ「けものフレンズ」オープニングテーマのセルフカバーなどを収めたニューアルバム「仮歌」をリリースした。2018年7月にシングル「Hands」を発表する。
- PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
- 生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に1stミニアルバム「WILL」を発表。以降もコンスタントにリリースを重ね、2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」をリリースした。2017年11月よりライブツアー「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」を開催。2018年1月に4曲入りCD「近日公開第二章」を発売し、7月に初の東京・日比谷野外大音楽堂ワンマンライブを行う。
2018年7月9日更新