とことん音楽性にこだわった多次元アイドルプロジェクト

「UniteUp!」とは、ソニーミュージックが総力を挙げて手がける多次元ボーイズアイドルプロジェクト。ソニー・ミュージックレーベルズが音楽制作を、ソニー・ミュージックエンタテインメントとソニー・ミュージックアーティスツがキャストマネジメントを、アニプレックスとCloverWorksがアニメーション制作をそれぞれ担当する形を取っており、各社の強みをシームレスに連携させることで最大限のシナジーを生み出す、グループ企業ならではの試みと言えるだろう。これによって、ハイクオリティな楽曲、確かな実力を持つ声優 / シンガーによる歌唱、上質なアニメーション作品といった多方面でのアウトプットを齟齬なく高水準で展開することができるわけだ。

具体的には、まず2021年12月にプロジェクトの公式YouTubeチャンネルが開設された。そこでは、人気楽曲のカバーを歌うKIKUNOYU、EVAN、すずといった歌い手、ブラックミュージック色の強いハイブロウな楽曲を披露する高尾大毅、二条瑛士郎、東郷楓雅といったソロアーティスト、はる賀と名乗る謎のシンガーソングライターなど、さまざまなアーティストたちがバラエティ豊かな楽曲を多数発表してきた。のちに彼らに扮して歌唱を担当した声優やシンガーらの正体が明かされ、さらにはこれら点々と公開されてきた楽曲群が線でつながるストーリーをアニメーション作品としてオンエアすることも発表。2023年1月よりテレビアニメ「UniteUp!」が絶賛放送中だ。さらに、作品内グループによる音楽作品のフィジカルリリースも今後続々と行われていく。

もちろん、2次元と3次元を股にかけたアイドルコンテンツはこれまでにも数えきれないほど制作されてきており、この分野において「UniteUp!」が後発であることは言うまでもない。しかし本プロジェクトは後発の強みを積極的に生かさんとする姿勢を明確に打ち出しており、綿密なマーケティングなどを行ってきた結果、独自の魅力を備えることに成功している。その大きな1つが、音楽メーカー主導コンテンツならではの音楽へのこだわりだ。

「UniteUp!」プロジェクトにおいては各グループごとに別個のプロデュースチームが編成されており、それぞれの方針で独自に楽曲が制作されているのだという。同一作品内に複数グループが登場したり、楽曲ごとに担当ソングライターが違ったりすること自体は珍しくない（むしろそれが普通だ）が、作品全体の音楽的なクオリティを均一化するために、プロデュース業務は一本化するケースがほとんど。「1作品に1ディレクター」が常識であるところに本作ではあえて「1グループに1ディレクター」体制を取ることで、各グループ間にリアルな音楽性のバリエーションを生み出しているというわけだ。

つまり、「UniteUp!」はアイドルコンテンツのファンやボーイズグループのファン、声優ファンのみならず、コアな音楽ファンにとっても要注目の作品だということになる。各チームが強いこだわりを注いで作り込んだ楽曲群を、ぜひその耳で聴き比べながら楽しんでもらいたい。

Anela「希望の声 EP」レビュー

前述した音楽作品のフィジカルリリースのうち、その先陣を切るのがAnela「希望の声 EP」だ。Anelaは作中における伝説的なアイドルグループで、大月凛（CV：斉藤壮馬）と辻堂真音（CV：中島ヨシキ）からなる2人組。「TARGET」「Break border」といったエッジのきいたサウンドが織りなすEDMナンバーから「君の手」のような美しい2声のハーモニーが炸裂する繊細なバラードまで、幅広い楽曲を歌いこなす表現力の高さが特徴だ。

Anela「希望の声 EP」初回限定盤ジャケット

本作の表題曲「希望の声」は、上記のような既存曲とはまた異なる彼らの新たな一面を見せる王道のミディアムポップナンバーで、さわやかなバンドサウンドに乗せた2人のユニゾンが開放的に響き渡る1曲となっている。タイトル通り希望を感じさせる歌声を堪能できるほか、Dメロでは彼らの真骨頂とも言えるハーモニーもさりげなく披露。ライブなどの場においてキラーチューンとなっていくことに疑問を差し挟む余地はないだろう。

もちろん本作には前述した既発曲3曲も収録。全4曲をまとめて聴くことで、彼らの実力や魅力をあらゆる角度から味わい尽くせる1作に仕上がっている。