UNISON SQUARE GARDEN結成20周年記念インタビュー|日本武道館と初ベストアルバムで飾る結成20周年 観客と、リスナーと共有したい記念日の思い (2/2)

20年前の「俺たちめっちゃカッコよくね?」の感覚は合っていた

──先ほど出た「ロックバンドは正論じゃ測れない」という話からつなげると、今回リリースされる20周年ベストアルバムもそうですよね。10周年のときに出たのはシングル表題曲を省いた変則的ベストの「DUGOUT ACCIDENT」で、15周年のときはカップリング集「Bee side Sea side ~B-side Collection Album~」で、20周年でようやくシングル表題曲を集めたベストを出す。これもセオリーにはないやり方ですよね。

田淵 そういうことを考えるのが好きなので(笑)。

──これがとんでもない作品で。DISC 1はデビュー当時に作られて音源化されていない未発表曲の再レコーディングに、最新曲を1曲プラス。DISC 2とDISC 3は過去のシングル表題曲を中心にしたベストセレクションで、「センチメンタルピリオド」とか、初期の楽曲は録り直したり、リミックスしたり、ほかにもおまけがたくさんついたボックス仕様。これも田淵さんの発案ですか?

田淵 はい。「お祝いの作品を作ろう」ということです。いろんな経緯があるんですが、キャリア的にベストアルバムを出すタイミングはここしかないだろうというのが1つと、今のストリーミングサービス全盛時代において、ベストアルバムなんか売れないよねというのが1つあって、この2つの問いを掛け合わせて導き出す答えはなんでしょう?と。とにかくお祝いの作品として、値段が高い代わりに絶対買ってよかったと言ってもらえるものを作る。これも自分なりの意地ですね。「お祝いしてくれ」と言っていいのは今年だけなので、「これはお祝いだから絶対買うんだ」と言ってもらって、それぞれの家に届いて、宝物のように思ってくれるものを目指そうとして、やりました。

──斎藤さんはDISC 1の未発表曲集についてはどんな思いがありますか?

斎藤 DISC 1、最高ですよね。今のUNISON SQUARE GARDENが絶対にやらないことばっかりが詰まってるから。それを今の感性でギターを入れ、歌を歌い、というところで親心のようなものも芽生えたし。

──しばらく会っていなかった子供たち、みたいな。

斎藤 特に1曲目の「星追い達の祈り」という曲は2004年の7月24日に3人で街のスタジオに入って「せーの」で初めて合わせた曲なんです。そのとき3人の中で「あれ? 俺たちめっちゃカッコよくね?」みたいな、何も言わない意思疎通が起きて。終わったあとも興奮気味で、ロビーで「このバンド、本気でやろう」という話をしたこともなんとなく覚えているんです。その20年前の自分たちの感覚はちゃんと合っていましたよ、という、形にしてやれた感じもあったりします。「ほら、カッコいいよね」って。そのあとも全部が全部楽しいだけで進んできたわけではないけど、そういうことも全部含めて、1つの答えを1曲1曲に出してあげている感じがして、その感覚は今回しか味わえないレコーディングだなと思えて、楽しかったですね。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G)

──田淵さんは、DISC 1の楽曲に関してはどんな思いが?

田淵 とにかく今回は人が喜ぶ作品を作ろうという気持ちが強かったです。ベストアルバムに新曲が入るのはセオリーだから、1曲ぐらいはがんばって作ろうと思っていたんですけど、もうひとがんばりして、より人を喜ばせるためには何をするべきかな?と思ったときに、この、どこかで記憶から葬ろうとしていた曲たちの存在が(笑)。

──よみがえってきたと。

田淵 そう。ただその楽曲はサブスクには出さないという。本当に物好きな人に聴いてもらって「何これ、めっちゃいい」と思ってほしい。その人が喜べば曲も報われるし、出した甲斐もあるし、そんな感じで作ったものですね。

「アナザーワールドエンド」につづった、バンド人生の中で1回だけ言う言葉

──ちなみにDISC 1の楽曲は、新曲1曲を除いてサブスクリプションには提供されないので、CDでしか聴けません。それぞれにきっと、当時音源化されなかった理由はあるんでしょうね。ほかのアルバム曲との兼ね合いとか、バンドのスタイルの変化とか。

田淵 そうですね。それは受注生産限定盤のブックレットの中にコメントで書いてあるので、ぜひ読んでもらえたらと思います。

──個人的にもDISC 1の楽曲にはいろいろ発見があって、非常に楽しかったですね。全体的に歌のキーが低いなと思ったんですが、それってたぶん田淵さんがまだ斎藤さんのキーを把握していない時期に書いたからかな?とか。

斎藤 いやいや、違うんですよ。逆に“把握していた頃”なんですよ。

田淵 だんだん限界を上げ始めた。「まだ行ける、まだ行ける」って。

斎藤 そう。どんどん把握しなくなっていった(笑)。

──なるほど、そういうことか(笑)。そして、そんな11曲のあとに新曲「アナザーワールドエンド」が収録されています。これは最近作った、まっさらの新曲ですか。

田淵 はい。これも、新曲があったほうが喜ばれるだろうなということです。

──これは素晴らしいロックバラードで、演奏も歌も本当にエモーショナルです。特に歌詞がよくて、田淵さんの一番優しくて柔らかい部分がそのまま出たような、20周年にふさわしい言葉だなと思いました。

田淵 いい例が思い浮かばないんですけど……小説のシリーズ最終巻にキャラクター全員が大集合して一番面白くなる、全部読んできたからこそわかるこのカタルシス、みたいな。それまでの作品を読んでいなくてもいいんだけど、全部読んでいるとより深さがわかるんだ、というものに近いかもしれないですね。あんまり人に向けて曲を書くことはなくて、この曲も別にそのつもりはないんですけど、でもまあ「これを書いたら聴き手がグッとくるだろう」というものは、隠す必要もないというか。

田淵智也(B)

田淵智也(B)

──「明らかに自分に言われている」と思える歌詞ですね。聴き手としては。

田淵 そのあたりの言葉選びに関しては、長いバンド人生の中で1回だけ言う言葉として選んだ気はします。

──特にラスト5行が本当にグッときます。田淵さんの、今まで歌詞にはしなかった思いがそのまま書かれている。

田淵 今後もたぶん、歌詞にすることはないと思います。でもそうすることで、さっきの伝説の話と同じで「あのベストに入ってる新曲、お前聴いたか?」って、5年後にも語り継がれてほしいみたいな気持ちがありますね。

──歌い手としては、どんな曲ですか。「アナザーワールドエンド」は。

斎藤 基本的には普段と変わらないんですけど、自分の中の“エゴ対わかりやすさ”のバランスにおいて、エゴ少なめで歌いましたね。それはやっぱり曲の持っている性質とか、UNISON SQUARE GARDENが20周年を迎えたここまでの時間を踏まえると、自分のエゴよりは、聴いてくれた人にまっすぐに響いてほしいという気持ちがあるので。ベストアルバムの1枚目の最後の曲なので、自然とそういう気持ちがあふれながら歌っていたかなと思います。

3人がぶつかり合っても大丈夫なスピードなら倒れない

──話は全然変わりますが、斎藤さん、20年間にリリースしてきた中で特に好きなアルバムはどれですか? いい悪いじゃなくて、単純に“好き”というアルバムは。

斎藤 えー、(スマホを出して)ちょっと確認していいですか(笑)。なんだろうな……「Dr.Izzy」かな。音の感じがすごくいいんですよね。

──それはエンジニアさんが違うとか?

斎藤 エンジニアは一緒なんですけど、彼のモードと僕らのモードがうまく噛み合ったというか、このときの音はみずみずしい感じですごく好きだな。そこからだんだんと、またバンドの音が塊になっていくんですよね。それはそれで好きだし、自分たちで望んでやっていることなんですけど、強いて言うなら「Dr.Izzy」の雰囲気が好きです。

田淵 私は「MODE MOOD MODE」ですかね。あれを超える作品はもう作れないと思います。すべてが完璧というか、造形美とか曲の並びとか、すべてが美しいなと思っています。どこかの取材でも話しましたけど、4枚目の「CIDER ROAD」のあたりからつかみかけていた、「こうやって作ったらいい曲になるぞ」というやり方が完成した1枚かなと思います。1枚の作品を流れよく作るというのと、自分の作曲能力と、先行シングルのバランス配分とかが奇跡のように噛み合ったアルバムで、1つのバンドのストーリーの中でたぶん1回しかたどり着けない、不思議な力が出まくっていた頃の作品だろうなと思いますね。

──ベストアルバムと合わせて、過去のアルバムも聴き直してみてほしいですね。あと、20年間でのライブの進化についても聞かせてください。ライブバンドとしてのユニゾンはどういう進化の仕方をしてきたのか。どのへんが強くなったとか、今の視点から見てターニングポイントはあったと思いますか?

斎藤 まず3人という、しのぎを削り合わざるを得ない編成の中で、3人ともちゃんと自分を貫くわがままさを持っていたことですね。それをぶつけ合うときに、尖ったところを平らにしてならしていくよりは、ぶつかっても大丈夫なぐらいスピードを上げていくというバランスの取り方をずっとしていて。それがいつしかパフォーマンスとして成り立つようになって、チャームポイントとして受け入れられてからは、わがままさと、誰かを喜ばせようみたいなものと、自分が報われたいみたいな気持ち、その全部が一緒になった感じがしています。そういう不思議なバランスのまんま進んできた結果、すごくたくさんの人に愛してもらえている。そこは感謝しているというか、ラッキーだったなと思うところですね。

鈴木貴雄(Dr)

鈴木貴雄(Dr)

──今の表現は、ユニゾンのスタイルをズバリ表していると思います。ぶつかっても大丈夫なぐらいスピードを上げていく。まさにそれですね。

斎藤 スピードを上げれば倒れない、自転車みたいなものですかね。そして気付けば、UNISON SQUARE GARDEN特化型ミュージシャンになっていた(笑)。ほかの人と合わせたときに通用しない、ここでしか褒められないうまさ、みたいなことも感じますけど、そういうバンドが1つぐらいあっても面白いし、そこは唯一だなと思います。

──まさに唯一無二のバンド、唯一無二の20年間だと思います。最後に、9月から開催される20周年ツアー「20th BEST MACHINE」についても聞かせてください。武道館を経て、どんなツアーにしたいと思っていますか?

斎藤 武道館は今までUNISON SQUARE GARDENが好きだと言ってくれた人に対して、「こんなにカッコいいバンドだぞ。おめでとう」と言う場所だと思っていて。でも9月からのツアーはオールタイムベストツアーだから「あのシングル曲を生で聴いてみたいから初めて行きます」という人もいるような気がしていて、そういう人がUNISON SQUARE GARDENのライブの楽しみ方に気付いてくれる場所になったらいいな、という感じかな。20周年はファンに向けた1年という感覚ではいるんだけど、このツアーに関しては、もうちょっと広くとらえているかもしれない。

──今も話に出ましたけど、田淵さん、これはオールタイムベストツアーになるんですね。

田淵 そうですね。斎藤くんの言う、もうちょっと広くとらえるという感覚を踏まえて、あえて知らない曲を挟むことによって前後の曲が輝くみたいな、今までユニゾンの黄金比で作ってきたセットリストの美学はあんまり使えないかな?という予感がしています。ライブを観た人が「知っている曲をいっぱい聴けてよかった」と思えるのがふさわしいツアーのような気もするので、そこのバランスを考えることになりそうですね。

──武道館は泣く人がいるかもしれないけど、こっちは笑顔の人が多くなりそうな気がしますね。楽しみにしています。

田淵 武道館が終わったら、9月はたぶんそういう感じになるかもしれない。そんな気がします。

UNISON SQUARE GARDEN

UNISON SQUARE GARDEN

ライブ情報

UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE "ROCK BAND is fun"

2024年7月24日(水)東京都 日本武道館
<出演者>
UNISON SQUARE GARDEN

Stagecrowdにて生配信実施!

<視聴チケット>
販売期間:2024年7月1日(月)12:00~24日(水)18:30
※見逃し配信なし


UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE オーケストラを観にいこう

2024年7月25日(木)東京都 日本武道館
<出演者>
UNISON SQUARE GARDEN


UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE “fun time 歌小屋”

2024年7月26日(金)東京都 日本武道館
<出演者>
UNISON SQUARE GARDEN / クリープハイプ


UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024「20th BEST MACHINE」

  • 2024年9月7日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年9月8日(日)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年9月11日(水)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2024年9月14日(土)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2024年9月16日(月・祝)石川県 本多の森 北電ホール
  • 2024年9月17日(火)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2024年9月21日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2024年9月22日(日)広島県 ふくやま芸術文化ホール・リーデンローズ
  • 2024年9月28日(土)香川県 サンポートホール高松
  • 2024年10月1日(火)栃木県 宇都宮市文化会館
  • 2024年10月2日(水)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2024年10月5日(土)神奈川県 ぴあアリーナMM
  • 2024年10月6日(日)神奈川県 ぴあアリーナMM

プロフィール

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビューを果たした。結成20周年記念日となる2024年7月24日に初のベストアルバム「20th ANNIVERSARY BEST SPECIAL BOX『SUB MACHINE, BEST MACHINE』」をリリースし、同日に東京・日本武道館でアニバーサリーライブ「ROCK BAND is fun」を開催。9月からは全国ツアー「20th BEST MACHINE」を行う。