UNISON SQUARE GARDEN結成20周年記念インタビュー|日本武道館と初ベストアルバムで飾る結成20周年 観客と、リスナーと共有したい記念日の思い

音楽ナタリーで3回にわたって展開するUNISON SQUARE GARDEN結成20周年記念特集、その締めくくりは斎藤宏介(Vo, G)と田淵智也(B)の最新インタビューだ。ユニゾンは20周年記念日の7月24日を軸に東京・日本武道館にて、異なる内容のライブを3日連続で開催。さらに同日には大ボリュームの初ベストアルバム「20th ANNIVERSARY BEST SPECIAL BOX『SUB MACHINE, BEST MACHINE』」をリリースする。2015年の初開催以来となる武道館公演について、ベストアルバムや本作に収録される新曲について、20年間のターニングポイントや未来への展望について。聞きたいことはたくさんある。

思えばUNISON SQUARE GARDENの20年は、セオリーを疑い、挑戦を重ね、ロックバンドのロマンを追求し続けた長く曲がりくねった壮大なドラマだった。そのクライマックスとして設定された20周年に、今こそ祝福の喝采を贈りたい。ロックバンドは、やっぱり楽しい。

取材・文 / 宮本英夫

結成20周年を日本武道館で迎える意義

──まず「日本武道館で3日間のライブを、それぞれ違う企画でやろう」というのは、誰が言い出したんでしょう。田淵さんですか?

田淵智也(B) はい。「結成日の7月24日に武道館を押さえてほしい」というのは5年前から言っていたんですが「連続した複数日のほうが取れる可能性が上がるかもしれない」ということで、3日間取ってもらいました。ただ、自分にとって結成日に武道館でワンマンをやることに大きな意味があったので「じゃあ、残りの2日は別のことをしよう」と言って企画を立てた。そういう順序ですね。

──それで結成日はワンマン、2日目はストリングスとブラスを入れたライブ、3日目は盟友・クリープハイプとの対バンになったと。結果的にアニバーサリー感がアップして、より豪華になったと思います。

田淵 友達とかに聞いたら「2日目に行きたい」という人が多かったです。「おかしいな、24日に気合いを入れていたんだけど」と思いましたけど(笑)。まあでも、普段じゃないライブを観たいという気持ちもわかるので。

──田淵さんとしては、あくまで結成日のワンマンが中心の3日間だと。

田淵 そう。結成日にあそこでワンマンをやることには自分の中ではちゃんとした理由があって、「この日、ここじゃないとダメなんだ」というつもりだったので、意地を張ってやりきろうという気持ちでいます。

田淵智也(B)

田淵智也(B)

──「この日ここじゃないとダメなんだ」という理由は、なんだったんでしょう。

田淵 あまり長々としゃべると、よりわかんなくなってくるんですけど……自分の中で武道館を勝手にすごい場所だと思っているんですよね。ちょっと売れたらやるとか、結成当初に公言してそこを目指してやっていくとか、そういう風潮がより強まっていると思うんですけど、自分としては「俺はこの会場の一番正しい使い方を知っているんだ」という意地みたいなものがあって。あとから振り返ったときに「ユニゾンの武道館の使い方って、ちゃんと意義があったよな」と言われる過去になっていたらいいなと思ったんです。

──それは過去に観たライブなどを通じて、田淵さんの中で確立していった武道館の美学みたいなものですか?

田淵 何なんでしょうね? 矢沢永吉さんとか、THE BLUE HEARTSとか、BOØWYとか、みんなが知っている武道館のストーリーみたいなものがあるじゃないですか。僕は特にTHE BLUE HEARTSの「ブルーハーツ、武道館を見学。」(1988年の映像作品)というタイトルがすごく好きで、行ったこともないのにすごいところなんだとずっと思っていたんです。その後the pillowsが20周年で武道館公演をやって、ああいう武道館の使い方を見ちゃうと「あれ以外の使い方をしちゃいけない会場だろう」という気持ちがすごくあって。いけないという規制は何もないけど、ちょっと人気が出たらやるというのはなんか違うよな、というのは今でも思っているし、いろんな価値観がある中で「ユニゾンはこうやった」とあとから言われたい、という気持ちはあるかもしれないです。

──斎藤さんは、武道館に対して思い入れ的なものってありますか?

斎藤宏介(Vo, G) 思い入れはありますね。20周年にこだわるのは田淵のロマンではあると思うんですけど、仲間たちがようやく立った武道館のステージとか、そういうのを見てきてますし。あとUNISON SQUARE GARDENは9年間武道館のステージに立っていないので、その間に誰よりもライブをやってきた僕たちならではの「あんなこともこんなこともできるよな」というものがすごく蓄積されているんですよね。それを客席との距離が近い武道館で見せて、みんなで「20年おめでとう」と言い合えるのが、今はすごく楽しみです。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G)

──今、斎藤さんの言った「田淵のロマン」という言葉が、すべてを表しているような気がしますね。

斎藤 けっこう前から言っていたもんね。たぶんthe pillowsの20周年を見た次の日から「20周年は武道館で」と言っていたので。

田淵 影響受けすぎ(笑)。

斎藤 あれはいつだっけ。the pillowsが今年35周年だから、15年前?

田淵 2ndアルバム(「JET CO.」)を作っているときかな。

──2009年ですね。そのときから「20周年になったら武道館で」と言っていたわけですか。

田淵 はい。

斎藤 だから、2015年に「結成10周年で武道館ライブを」という話が出たときに田淵が渋っていたのも、おそらくそういう理由だったと思う(笑)。

田淵 10年ぐらいで立っていい場所じゃないと思ってたから。

釣られるので、客席では泣かないでいただけると

──ちょっと感動してます。これはすごい溜めですよね。

斎藤 15年もロマンを掲げるってカッコいいですよね。

田淵 そう……なんですかね。うまく言えないですけど、ロックバンドは正論ではないというか、正しい / 正しくないじゃなくて、自分の中に持っているロマンというものを貫かなきゃいけない。そのバンドを好きになって、CDを買ってチケットを買ってライブに来て、売れているか売れていないかではなく「私はこのバンドが好きなんだ」という人たちが報われる瞬間が、1日はあってもいいよなというつもりで駆け抜けてきた15年、20年なのかもしれないです。

──いい話です。

田淵 客の立場になると、15年も20年も同じバンドを好きでい続けるなんて、マジで奇跡みたいな話なんですよ。そこで「このバンドを好きでよかった」って、本当に満足する瞬間を作ってあげたいという思いはあるかもしれない。長く続けたバンドの、長く続けた先のすごい1日っていう、バンド的にも客の熱量的にもピークな日が1日あって、しっかり終わらせてからその先に行くみたいな、そういう感じですかね。1年後とか5年後とかに「私たち、あの結成20周年のワンマンを観てたんだ」という感覚が後世に語り継がれればいいなと。

──めちゃくちゃいい話ですけど、自らハードルを爆上げしている気もします。

田淵 そうですね(笑)。出し切る気でいます。あの、伝説のライブってあるじゃないですか。僕はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの解散ライブの映像を定期的に観返していて、行っていないのに行った気になって、ライブの構成とか終わり際とか全部覚えてるんです。the pillowsの20周年の武道館もそうだし、そういう伝説のライブって、ユーザーにとっては「生きててよかった」と思える日だと思うんですよね。だから今回の7月24日も、自分たちの手を離れて伝説に、というのは超おこがましいですけど、「あのバンドが20年を迎える流れの中にこんなドラマがあって、こんなドラマもあって」という1つのストーリーが完結する感覚がある。そこで時間をともにして、一緒に伝説を作ったんだという体験を経て、演者とユーザーがその次の未来へ進む、みたいな感じがいいなと……それは勝手に僕が、過去から影響を受けているだけなのかもしれないですけど、人にとってのロックバンドの記憶って、そういうものであってほしいなと思うんです。売れている売れていないとか、流行っている流行っていないとかはマジでどうでもよくて、「このロックバンドと一緒にいて楽しかったんだ」という、そんな人生であったほうがいいよなと思ったときに、完璧な記念日みたいなものを作っておきたい。

鈴木貴雄(Dr)

鈴木貴雄(Dr)

──でもユニゾンのことだから突飛なことをやるわけじゃなくて、ステージ上では思い切り音を出すだけかなという気はします。

斎藤 わかんないですよ? 俺のギターのヘッドから火が出るとか。「20年経ってやりたかったことはこれだ」って(笑)。

田淵 でもまあ記念日にふさわしい、わりと慣れている曲をやるだけなので。準備は大変っちゃあ大変ですけど「あの曲がまったく覚えられない」みたいな不安はないです。

斎藤 どっちかというと環境だよね。やっぱり特別な1日だからその重みが両肩にのしかかってるし。一番気を付けたいのは、本当に「泣きたくない」ということで。歌っていると絶対に影響が出ちゃうから、それは最後のほうまで気を付けようと思っていますね。

田淵 すごいじゃないですか、斎藤くんが泣いたら。

斎藤 それでもいいんだけど、4曲目とかで泣いちゃったら残りの時間はどうするのか(笑)。

田淵 それも伝説になりますよ。怒髪天の30周年の武道館で、増子(直純)さんが「今日は何をやっても泣いちゃうな」みたいなことを言うシーンがあったじゃないですか。それなんですよね、記念日というものは。みんなでたどり着いたこの日というのは、ファンも「おめでとう」だし、俺たちも「よくやった」だし、その流れで言うと斎藤くんが泣いたら最高じゃない?

斎藤 もし本番前にこれを読んでいる方がいたら、釣られるので、客席では泣かないでいただけるとありがたいです(笑)。できるだけ笑顔で観ていただけるとうれしいですね。