UNISON SQUARE GARDENのニューシングル「いけないfool logic」が9月27日にリリースされる。
テレビアニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」オープニング主題歌として書き下ろされた表題曲は、タイトルも曲調も演奏もとことんポップで“ハッピーに全振り”した強烈な1曲だ。分厚いストリングスとブラスセクションとともに奏でられる疾走感のあるサウンドは、4月にリリースされた最新アルバム「Ninth Peel」のリード曲で、同じくストリングスとブラスを配した「恋する惑星」をもしのぐ華やかさ。アルバムを携えてのライブに明け暮れる日々の中で、田淵智也(B)曰く「バンド史上最もハッピーな楽曲」はいかにして生まれたのか? メンバー3人で共作したカップリング曲「あまりに写実的な」、そしてアルバムツアーの模様を収録した映像作品の話と合わせて、斎藤宏介(Vo, G)と田淵に語ってもらった。
取材・文 / 宮本英夫
「ここまでやる?」ぐらいのところまでやりたいタイミング
──ここまでハジけた新曲が届くとは思わず、うれしい驚きでした。これはテレビアニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」オープニング主題歌として依頼があってから作り始めた曲ですか?
田淵智也(B) そうです。話を聞いた時期は今年の頭ぐらいだった気がします。たぶんディレクターが、アルバム(今年4月発売の最新アルバム「Ninth Peel」)が完成するまでオファーの件を伝えるのを待ってくれてたんだと思います。毎回僕はアルバムを作り終えると“終わりモード”になってしまうんですけど、そのタイミングで来た話だったという記憶があります。
──まず、どこから手を付けたんでしょう。
田淵 アルバムができた直後だったので、まずアニメの制作サイドの話を聞いて、あとはとにかくアイデアが浮かんでくるのを待とうと思っていましたね。自分で「これならワクワクできるかも」という要素が浮かぶと、自然とテンションも上がってきて、時間さえあればアイデアが出てくるという経験則を信じて、アイデアが浮かぶタイミングを計りながらの制作だったような気がします。
──アニメのストーリーには、クライムミステリーというか、どちらかと言えばシリアスなトーンが強いですよね。
田淵 僕もそう思ってたんですけど、スタッフの方が「(曲は)全然そういうものじゃなくていいですよ」と。それで改めて原作を読んでみて、「なるほど、こっちをフォーカスするのね」という気付きがあって、歌詞の内容がなんとなく見えてきた感じですね。
──その“こっち”を具体的に言うと?
田淵 「原作とどうリンクしているか」というのは、聴けばわかるレベルのわかりやすさでいい、と思ったところがあって。たぶんオープニングの画は「主人公2人が支え合ってるんだ。バディなのだ」という感じになるだろうから、それがわかる単語が聞こえたほうがいいだろうなと思って、シンプルに恥ずかしがらずに言葉のチョイスをしましたね。そこが決まってしまえばあとは自由、という感じで作っていきました。
──そうか、バディものなんですね。ジャンルで言うと。
田淵 そう。「推理ものなんだ」と思わずに、監督から言われた目線で読んでみると、「なるほど」という感じがすごくあったので。作品の方向性を作るのは監督だから、この作品を推理ものとして作るのか、人間関係ものとして作るのかは、監督から話を聞くまでわからなかったんですけど、「君がいて、僕がいて」という要素をまず紹介して、「この2人が主人公ですよ」ということを認識させるのがオープニングの役目なのかなと思ったりしました。風景描写よりは心象描写に寄ったほうが、たぶん監督の描きたい画に合うんだろうなって。まだ画を見ていないのでアレですけど、そう期待しているところはあります。
──なるほど。
田淵 曲調については、多少自由度はあるだろうなと思っていたんですけど……バンドのバイオグラフィ的な話で言うと、ちょうどアルバムを出したあとで、来年には結成20周年が来るタイミングだから、その先のアルバム収録タイミングで記憶に残らないような曲になったら悲しいな、と思ったんですね。だからこそ、「ここまでやる?」ぐらいのところまでやっておけば、アニメにもうまくハマったり、客にも「珍しい曲だね」と思われたり、今後のライブでの使いやすさも変わってくるかもしれない。それが自分の中では重要なテーマだったんです。だから、今回共同アレンジで加わってくれた伊藤翼くんに「とにかくどんな音を入れてもらってもいいから自由にやってほしい」というオーダーをして、それが自分的にもワクワクできるポイントになったんですね。同時に作品的には、スタッフが言ってることに面白半分で乗ってみたというか、「こんなシリアスなティザー映像にこんな明るい曲書いちゃっていいんですか?」みたいな(笑)。「主人公2人の心の触れ合いを、あえてハッピーな方向で書いてみました」とか、ちょっとビビリながら伝えたんですけど、すごく喜んでもらったからラッキー!と思いました(笑)。
──斎藤さん、この曲の第一印象は?
斎藤宏介(Vo, G) すごくいい曲だなと思ったのは覚えてます。翼さんに渡す前かな。田淵から「こんな楽器が入ってくる想定で」みたいな感じで聴かせてもらって。
田淵 3月か4月のツアー(4月から7月まで行われた全国ツアー「Ninth Peel」)直前じゃないかな。
斎藤 最初から最後まで、めっちゃいい曲だなと思いましたね。こういう“キャラ”のある曲って、いざライブでやるとすごく聴こえ方が変わるので、それがすごく楽しみです。
とにかくハッピー全振り
──掛け合いのコーラスパートで、田淵さんのボーカルが目立ってるのもちょっと珍しいかなと思いました。それも、この曲は自由にやっていいという姿勢の表れなのかなと思ったりして。
田淵 それと近い話かもしれないですけど、アウトロの「♪ラララ」とかも、いつもは「ダサい!」というものも臆することなく入れていこうと(笑)。とにかくハッピー全振りみたいな。「Ninth Peel」でやり切ったあとに面白いと思えるものがどうしてもそういう方向だったし、直感に従っていけば面白くなるだろうという感じでしたね。
斎藤 翼さんのレコーディングを見させてもらったんですけど、ずーっとニヤニヤして楽しそうでした。「あとで減らせばいいやと思ってどんどん音を足していったけど、1個も減らさなかった」と言ってました(笑)。その感じ、マジで最高だなと思って。本当に好きでやってるという、その風を吹き込んでくれたのはめちゃくちゃありがたかったですね。僕自身も、より曲のことが好きになれました。
──「いけないfool logic」というタイトルも、超キャッチーですよね。あの曲のオマージュ?とか、一瞬思わせたりして。
田淵 サビを書いたときに「これしかないだろう」と。さっきの話で言うと、なるべく個性があったほうが思い出に残りやすいと思って、タイトルも自分たちのカッコつけアティテュードというよりかは、「面白がって作ったな、あのときは」という要素になればいいなとは思ってつけましたね。