UNISON SQUARE GARDEN「Ninth Peel」インタビュー|ひと皮むけたニューアルバムを経て到達した3ピースバンドの真骨頂 (3/3)

ボーダーラインを超えてしまってもいいや

──それぞれが役割を変えながら、全体のバランスを保ちながら前進していく。素晴らしいです。あと、曲の話をもう少し。8曲目の「もう君に会えない」はとてもエモーショナルなスローナンバーですね。切ない思い出を回想するような、物語のある歌詞で。

田淵 バラードなので、あんまり抽象的な言葉を使いすぎると毒にも薬にもならない曲になるんですよね。

──リリースに先駆けてライブ映像が公開されたので(スペースシャワーTVのライブ番組「DRIP TOKYO」にて)、歌詞に出てくる「彼」や「彼女」が誰を指しているのかという考察もされているようです。

田淵 あ、そうなんだ。そこはノーコメントで(笑)。

──そこは想像に任せるとして、この美しい曲を書かせた動機はなんですか?

田淵 歌詞が書けたことによって、より「いい曲だな」と思えたのは確かです。僕はバラードが得意ではないので、バラードっぽい曲ができてもアルバムの中の毒にも薬にもならないゾーンか、シングルのカップリングか、ボツか、みたいな感じになるんですけど。この曲は歌詞が決まったときにアルバムの中の“知る人ぞ知る曲”になったというか、人気は出なくていいけれど、いい曲になったなと思いました。最初はもっと外した言葉使いをしてたんですよ。抽象的なままで「もう君に会えない」という言葉も使ってなかった気がする。歌詞に「まとわる様に」というのがありますよね。それが最初のタイトルだったんですよ。

UNISON SQUARE GARDEN

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──それはかなり抽象的に聞こえますね。

田淵 でもそれだと、毒にも薬にもならないゾーンに収まっちゃう。せっかくなら振り切って書いたほうがいいだろうなと。それもキャリアのなせる業というか、さっき言った「なんでもいい」精神というか。でもこの曲はそういうわざとらしい言葉を使っても、ちゃんと自信を持って出せるという感じはあったので。5年前だったらたぶんやってなかったと思います。でも今ならこういう言葉を使ってもOKかな?と。

──なるほど。

田淵 「Numbness like a ginger」もそうですけどね。こんなにわかりやすい歌詞でいいのか?みたいな。作詞に関しては今でもそういう目線の、自分の中のボーダーラインがあるんですけど、そのボーダーラインを超えてしまってもいいや、みたいな感じが年々増えてきてます。みんなもそういうのが好きだったりするし、斎藤くんが歌うとちゃんと意味も出るし、結果、自分の中の作詞のバリエーションが広がって、今まではなしだったものに対しても「別に書いてもいいか」みたいな。変に抽象的な言葉でまとめるぐらいだったら、むちゃくちゃ直接的なほうがイチかバチかで意義が出るのではないか?と思えるようになりました。

歌ではっきりさせられた、楽曲の持つ飛距離

──歌詞は全体的にわかりやすく、感情や意志をはっきり示す方向になって来ていると思いますよ。以前の楽曲と比べても。「スペースシャトル・ララバイ」や「フレーズボトル・バイバイ」も非常にストレートで前向きな、メッセージ性が強い言葉が並んでいるし。

田淵 語弊があったら申し訳ないですけど、書きたくて書いているというよりは、「なんでもいいゾーン」に入っているという感じです。それで別に俺の好きな作詞術が変わるわけでもないし、ユーザーに対しての説明もできるし、「田淵、変わっちゃったな」と言われないだけの自信があるし。今でも俺のフェチズム全開!みたいな歌詞は書けるし、わかりやすい歌詞を書くようになったからって幅が狭まったわけではない。作詞における自分のロマンはずーっと変わっていないので、という感じです。

田淵智也(B)

田淵智也(B)

──田淵さんはソングライターとして幅を広げてきているわけですが、斎藤さんはどうですか? 歌い手として、今回のアルバムではどんなことを意識していましたか?

斎藤 前作を出した2年半前と比べると、ちょっとだけ客観視することを心がけていたかもしれないです。「ここの歌い回しはこうで、語尾はこうで」みたいな細かいところを意識して歌うやり方も大好きなんですけど、例えば「スペースシャトル・ララバイ」とかは、「1曲通して明るい色の声でやろう」と思ったり。トータルで与える印象を大事にして、こだわるところは少なく、でもそこが刺さるように……という歌い方を、このアルバムでは心がけていた気がします。

──なかなか絶妙なところですね。技術に加えて、気持ちの持っていき方というか。

斎藤 曲が届いていく場所、みたいなものを意識したのかな。もっと遠くに向けてというか、ライブで歌って「うわー気持ちいい」みたいな曲と、「もう君に会えない」のようにすぐ隣にいる人に向けて歌うみたいな、それぞれの楽曲の持つ飛距離みたいなものは、歌でよりはっきりさせられたかなと思います。

──そうですね。確かに。

斎藤 個人的に今回のアルバムは一張羅でごり押しするというよりも、カラフルに聞こえたほうがいいと思っていたので。ギターも1曲ごとに変えるし、それなら同様に声色も変わるべきだと思ったし。それを自分なりに一生懸命やっても、結局聴き手が「UNISON SQUARE GARDENらしさ」として判断したときに取っ散らかったものにならないというのは、もうわかっているから。だからこのアルバムを作れたのかもしれないです。

何が出るかわからない、俺らっぽいツアーに

──バンドの現状や進化、目線の変化がよくわかったので、「Ninth Peel」がさらに大切なアルバムになった気がします。リリースツアーも楽しみですね。4月から6月にかけてのツアーですけど、そのあとにもあるんですよね。

田淵 そうですね、今年の後半にもツアーをやります。

──すごい。今年もライブ三昧。

田淵 それしかやることがないので(笑)。

──「スペースシャトル・ララバイ」のようなシンプルなギターロックは当然として、「恋する惑星」なんかはライブでどんなふうに聞こえるのか楽しみです。

田淵 やらないかもしれない(笑)。去年のツアーがマジで楽しくて「ライブは最新曲がなければいけないというわけでもないだろ?」という自信がついたんですね。さかのぼれば、リバイバルツアー(2021年開催の「Spring Spring Spring」「CIDER ROAD」)のときに味を占めたことでもあって、今回のアルバムが前回より1曲少ないのにもそのあたりの理由があったりして。「絶対新曲やんなきゃ」とも思っていないし、そのほうが何が出るかわからない感じのいいツアーになる気がするし、俺らっぽいんじゃないかなと思っています。

斎藤 ライブはライフワークなので、もう特に言うべきことはないです(笑)。定期的にライブができるのが一番うれしいことですね。もちろんライブ当日とかには適度な緊張感と責任感は芽生えるんですけど、そこも込みでライフワークになっていて。いつも通りの気持ちで毎回とてもいいライブにできると当たり前に思っているから、それがまた今年も継続できるのはうれしいですね。

UNISON SQUARE GARDEN

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ライブ情報

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2023 "Ninth Peel"

  • 2023年4月16日(日)千葉県 森のホール21
  • 2023年4月22日(土)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2023年4月29日(土・祝)栃木県 栃木県総合文化センター
  • 2023年4月30日(日)群馬県 高崎芸術劇場
  • 2023年5月7日(日)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
  • 2023年5月13日(土)熊本県 熊本県立劇場
  • 2023年5月14日(日)福岡県 福岡市民会館
  • 2023年5月17日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年5月18日(木)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年5月20日(土)和歌山県 和歌山県民文化会館
  • 2023年5月27日(土)神奈川県 ぴあアリーナMM
  • 2023年5月28日(日)神奈川県 ぴあアリーナMM
  • 2023年6月4日(日)新潟県 新潟テルサ
  • 2023年6月10日(土)香川県 ハイスタッフホール
  • 2023年6月11日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2023年6月16日(金)広島県 上野学園ホール
  • 2023年6月18日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年6月24日(土)福島県 けんしん郡山文化センター 中ホール
  • 2023年6月25日(日)宮城県 東京エレクトロンホール宮城

プロフィール

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2015年7月に結成10周年アルバム「DUGOUT ACCIDENT」をリリースし、初の東京・日本武道館単独公演を成功させた。2019年7月にはカップリングベストアルバムとトリビュートアルバムを同時リリース。さらに大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場で結成15周年ライブ「プログラム15th」を開催した。2022年4月にNetflilxアニメ「TIGER & BUNNY 2」のオープニングテーマのシングル「kaleido proud fiesta」を、10月にテレビアニメ「ブルーロック」オープニング主題歌の「カオスが極まる」をシングルとしてリリース。2023年4月に9枚目のオリジナルアルバム「Ninth Peel」をリリースし、全国ツアーをスタートさせる。