UNISON SQUARE GARDEN「カオスが極まる」インタビュー|ユニゾンの挑戦は止まらない、アニメ「ブルーロック」主題歌で表現した新たなサウンドアプローチ (2/2)

ボーダーすれすれのタイトリング「カオスが極まる」

──ワード的に言うと、「カオスが極まる」というタイトル自体、今までのユニゾンになかった感じですよね。歌詞はどんなふうに書いていったんですか?

田淵 最初に浮かんだのは「邪魔だ、すっこんでろ」ですね。

──またすごいところから始めますね(笑)。

田淵 「これ最高! これがあればもう大丈夫」と思ったから、そこから3カ月は何も書いてませんでした。その間、頭の中でいろんなパターンを考えて完成させていった気がします。タイトルはけっこう決まらなかったというか、なんでもよかったというか……「カオス」「極まる」ってロックバンドとしてギリ恥ずかしい単語じゃないですか。

斎藤 カップリングに「放課後マリアージュ」を入れといてそれ言う? 恥ずかしい単語はこっちでしょ(笑)。

田淵 そっちはキュートでいいじゃん(笑)。で、タイトルは歌詞で浮かんできたものにしようと思っていて。「ぶちかましてくれ」とかサラサラっと書いていた流れの中で、恥ずかしいけど、ロックバンドとしてギリギリ許されるかなみたいな単語を探していて、そのボーダーをクリアしたのが「カオスが極まる」だった。

──サビの途中に出てくるワードですよね。「カオス極まる」。

田淵 これがサビ頭に出てくると“ダサいゾーン”に入っちゃうんですけど、ちょろっと出てくるだけならいいかと思って、この単語を書いて。最後にタイトルを考えたときに、「カオスが極まる」って、あんまり聞いたことないし、程よくダサくてなんかいいなという、ボーダーすれすれのタイトリングな気がします。

UNISON SQUARE GARDEN

UNISON SQUARE GARDEN

──今の話、田淵さんの脳内の動きがわかって面白いです。

田淵 まあ、斎藤くんが歌って気持ちいい言葉、俺のフェチズムの極致みたいな言葉のオンパレードをけっこうすらすら書けたので。タイトルが何になってもカッコいい曲になるだろうという無責任さはあったかな。言葉選び的には言いたい放題言ったし、作品の内容も汲んでるし、「ぐちゃぐちゃにしてくれ」というオーダーに対してちゃんと応えられた感じはあるので、気持ちよく書けた歌詞ではあります。

「放課後マリアージュ」のイントロのギターは発明

──カップリングの話もしましょう。これはタイアップではないですし、カップリング用に作った曲ということですか?

田淵 ツアーを回っている中で作った曲の1つだったような気がします。「曲が溜まったらアルバムを作ろうかな」ぐらいの感じで作っていた曲のうち、表題曲の対抗馬として一番合うと思ったのと、あとは前作(「kaleido pround fiesta」)もそれで味を占めたんですけど、僕らはカップリング曲をサブスクに入れないので、世に知られなくてもいいからファンに向けたおまけとして機能する、一番いい塩梅の曲ということですね。アルバムに入っていてもいいかなと思ったんですけど、カップリングの温度感として一番合うかなと思ったので。

──はい。なるほど。

田淵 楽に作った曲であることは間違いないけど、手は抜きたくないんですよね。前作の「ナノサイズスカイウォーク」もそうだし、この「放課後マリアージュ」もそうだし、「あのバンドのCDを買ったら、サブスクで聴けない曲が入ってて、しかもいい曲らしい」というものを、空気として作りたいと思っていて、そうなると、カップリングを作るためのモチベーションが上がるんですよ。「絶対2曲作らなきゃいけない、でもライブではできない」とか、そのお題の中でやると曲がかわいそうだなと思ってたんです。でも今は「あのバンドのシングルをCDで買うといい曲が付いてくるらしいぞ」という、時代に逆行してるけどそれがいいみたいな感じと、この温度感の曲があれば喜ぶやつは喜ぶだろうという感じもあって、最近のカップリング制作はモチベーションが高まっているんです。それは前回から始めた試みだから、2曲目でコケるわけにはいかないんですよね。

──表題曲とまるでタイプが違う、さわやかでメロディアスでストレートなギターポップ系の曲です。

田淵 リード曲みたいに凝ったものを作るだけじゃなくて、「田淵、もっとシンプルな曲を作ってくれよ」と思われてるところもあると思うので。その場所としてもカップリングはすごくいいなと思ってます。アルバムになると、気合いが入った曲とその間を埋める大事な曲とがあって、こういう曲ははじかれやすいんですよね。

──ボーカリストにとっては「放課後マリアージュ」はどんな曲ですか?

斎藤 好きですよ。かわいらしさにフォーカスして自分も走り出せたのは、このタイトルのおかげだと思うので。すごく気に入ってるのがイントロのフレーズで。ここは「スティールパンみたいな音でやったら楽しそうだな、それをギターでやったら発明かも」と思ってやってみたんですけど。

──あ、あれ、ギターなんですね。

斎藤 そうなんですよ。あれは最近の自分のレコーディングの中でも、テンションが上がった瞬間でした。

田淵 あの音が出せる、「放課後マリアージュ」っていうエフェクターを出したほうがいい(笑)。絶対売れると思う。特許取ったほうがいいと思うぐらい、発明の音だと思います。

左から斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)。

左から斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)。

音楽の体験のさせ方を最後まであきらめない

──時代を見据えた果敢な挑戦と、ロックバンドの本質とを掛け合わせた2曲。話を聞いていると、さっき斎藤さんがおっしゃった「新しいタームが始まってる」という言葉の通りだなと思います。

田淵 コロナのこともあって、時代がより変わったというか、もうロックバンドってみんなサブスクで聴くからCD買わないよねとか、そういう風潮がより顕著になってきたなと思っていて。そこに対して「何をやったら意義ある感じにできるのか?」というテーマに向かって走るのが楽しいですね。買わなくていいCDをどう売ろうかとか、挑み甲斐のあるテーマだし、それも1つのゲームみたいなものだと思うので。

──なるほど。

田淵 そう思うと、モチベーションが上がるんですよ。

斎藤 ちなみに今回はカップリング曲のミュージックビデオも作って、それがシングルの初回限定盤に入ります。この映像はYouTubeには上がらないから、シングルを買った人だけが観れるんです。

田淵 ティザーとかは上がってて。最近Twitterでもにぎわってましたけど、サブスクという便利なものができた代償の犠牲者はいるよねということと、お客さんも音楽に対するお金の払い方を忘れちゃったと思うんですね。月1000円払ったら音楽が聴き放題で、YouTubeでフルサイズのMVが見れるでしょという、そういう時代なんですけど、それだけになるとたぶんこのカルチャーはもう終わりなんですよ。終わっていいんだったらそれでいいけど、そういう中で「よくわかんないけど、このバンド好きだからライブ行くんだよね、CD買っちゃうんだよね」みたいな人たちをちゃんと肯定してあげたい気持ちがすごくあるんですね。月1000円払って音楽を聴いて、フェスに行って、それで音楽体験はすべてクリアできちゃうみたいな風潮は、僕的には超つまんねえな、嫌だなと思っていて。僕らはサブスクにも曲を出すし、フェスやイベントにも出るけど、それだけじゃない体験のさせ方を最後まであきらめないぞ、と思うとやる気が湧いてきます。

──素晴らしいアティテュードだと思います。

田淵 そういう中でずっとライブをやっていることが、僕的にはすごく大事なことなので。「ライブやってるから来いよ」と言い続けることで、100人中1人ぐらい気が変わるかもしれないじゃないですか。そして自分から何かをする体験を通じて人生が変わるんじゃないかな?と思っていて。そこをあきらめちゃうと、月1000円払うだけで音楽通ぶってる人たちばかりになっちゃうから。便利でいいんですけど、もったいないよなと思うんですよね、カルチャーとして。そんな気はしています。

──たぶん、ほかのアーティストもすごく考えてると思うんですよ。アーティストだけじゃなく聴き手も、カルチャーとしての音楽が好きな人たちは誰しもが、それぞれのやり方で。

田淵 考えなきゃいけないんですよ。便利になると、考えなくなるんですよね。その中で「自分はここにいます!」と叫ぶ努力を、やったほうがよくない?と思うんですけどね。

──常に問題提起をしていくロックバンドだと思います、ユニゾンは。

田淵 そして僕たちは、ライブに来てもらえばなんとかなると思っているから。今のツアーも、ディレクターからもトイズファクトリーの社長からも褒められたけど、これだけの数をやってないと出ない音というのがやっぱりあって、それは若手のバンドには出せないものだと思うんですね。若者のバンドに唯一勝てるのはそれぐらいだけど、そこはキャリアがなせるわざだから。ライブ会場まで連れてくればなんとかなるんじゃねえか?という自信があるので。そのためには、「僕らに気付いてください!」と手を挙げるのは、ある程度は必要かなと思いますね。メディアで目立つのは苦手なので、そこまではみ出したことはやりたくないですけど。

UNISON SQUARE GARDEN

UNISON SQUARE GARDEN

──10月25日から始まる「fiesta in chaos」ツアー、楽しみにしています。

斎藤 正直、ツアーのことは初日になるまでわからないんですけど(取材は9月末に実施)、今年はずっとライブをやらせてもらっていて、ツアーの合間にもずっとお仕事をして、毎日を充実して駆け抜けている感覚があるんですよね。1日1日にちゃんと向き合っている感覚があって、ゼロからとは言わないですけど、朝起きて「よし、今日もがんばるぞ」みたいな日々が続いているので、ライブもそういうふうになってきている気がします。

田淵 楽しいツアーになると思いますよ。

ツアー情報

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022「fiesta in chaos」

  • 2022年10月25日(火)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2022年10月26日(水)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2022年11月1日(火)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2022年11月2日(水)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2022年11月7日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2022年11月11日(金)青森県 青森Quarter
  • 2022年11月12日(土)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2022年11月15日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2022年11月16日(水)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2022年11月18日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2022年11月26日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場

プロフィール

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2015年7月に結成10周年アルバム「DUGOUT ACCIDENT」をリリースし、初の東京・日本武道館単独公演を成功させた。2019年7月にはカップリングベストアルバムとトリビュートアルバムを同時リリース。さらに大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場で結成15周年ライブ「プログラム15th」を開催した。22022年4月にNetflilxアニメ「TIGER & BUNNY 2」のオープニングテーマのシングル「kaleido proud fiesta」を、10月にテレビアニメ「ブルーロック」オープニング主題歌の「カオスが極まる」をシングルとしてリリース。同月より全国ライブハウスツアー「fiesta in chaos」を開催する。