前作の衝撃から11年の時を経て、4月8日からついに配信がスタートしたNetflixアニメ「TIGER & BUNNY 2」。4月13日にシングルリリースされた主題歌「kaleido proud fiesta」を演奏するのは、もちろんUNISON SQUARE GARDENだ。テレビアニメ「TIGER & BUNNY」の初代主題歌「オリオンをなぞる」から、劇場版2作の主題歌「リニアブルーを聴きながら」「harmonized finale」を経て、4回目のタッグとなるタイバニとユニゾン。しかしその特別な関係の裏側には、知られざるストーリーが隠されていた。
音楽ナタリーでは、2年前にリリースされたアルバムを携えたツアー「TOUR 2021-2022『Patrick Vegee』」を終え、4月から始まる対バンツアー「fun time HOLIDAY 8」に臨む直前のメンバーにインタビュー。斎藤宏介(Vo, G)と田淵智也(B)に、新曲制作に至るストーリー、ユニゾン流のタイアップ論などについてたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 宮本英夫
タイアップをやるからには、楽曲は作品のものであるべき
──ユニゾンにとって、「TIGER & BUNNY」シリーズとのコラボはこれで4曲目。2014年の「劇場版TIGER & BUNNY-The Rising-」に提供した「harmonized finale」以来、8年ぶりになります。
田淵智也(B) 僕は「harmonized finale」で終わりのつもりでいたんですけどね。もうやり切ったので「もしも続くなら僕たちは応援しますよ」みたいなスタンスだったんです。でも「TIGER & BUNNY」のプロデューサーさんが、今回の作品に懸ける熱とか、これだけ時間が空いてから「2」が制作された経緯とか、さらには僕が「harmonized finale」で終わりだという気持ちでいたことも当然知ったうえで「それでも自分が考えたのはユニゾンしかいなかった」という話をしてくれたので「よし、じゃあやりましょう」ということになりました。そこにはいろんなドラマがあったような気がします。
斎藤宏介(Vo, G) そのへんの詳しい話は全部田淵に任せていたんですけどね。ただ「TIGER & BUNNY 2」の制作が決まって「『主題歌をぜひユニゾンで』と言われている」という話を聞いたとき、田淵は一度“フィナーレ”と謳った以上あんまりやりたくなさそうな感じを出していたんですけど、(小声で)「いや……俺はやりてえな」とは思っていました(笑)。
──あはは。でもそれは本音ですよね。
斎藤 なので、田淵に「無理しなくていいと思うけど、俺はやりたいな」とは言いました。「あとはプロデューサー頼む! 説得してくれ!」という感じです。
田淵 ロックバンドのストーリーを考えたときに、何か1つのものと長く仲よくすることにはリスクがあると僕は思っているんですよ。だから、1つの作品に関わるのは3曲までということは、わりとバンドの活動の中で早い時期から決めていたんですね。「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も3で終わったし」という、僕の理屈では必ずそれが出てくるんですけど(笑)。3で終わるのが好きだし、逆に、3曲以上やることのリスクも感じているので。じゃあなんで今、4曲目をやってるんだ?というと、「気が変わったので」ということも大きいし、これまでのタイバニとの関係や、プロデューサーの言葉や、メンバーの受け止め方が追い風になったこともあります。あとは、たぶん10年前ほどこだわりがなくなったというか。自分のこだわりに多少の揺れがあっても「バンドができれば、なんでもいいか」という感じになったことも大きいかもしれない。
──その「kaleido proud fiesta」の第一印象は、また斎藤さんがライブで息切れしそうな曲が1曲増えてしまったなという感じでしたけれども。
斎藤 あはは。確かに。
──「TIGER & BUNNY」第2幕の開幕にふさわしい、解放感、華やかさ、勢いがあるロックチューンですね。曲調のイメージは最初からそういう方向で?
田淵 そうですね。「これこれ!」という感じ。作品のタイアップをやるからには楽曲は作品のものであるべきだし、作品のファンのものであるべきなので、UNISON SQUARE GARDENという看板は1回外してもいいと思っているんですよ。楽曲の役割としては。
──タイアップものを作るときは、いつもそういう意識になる?
田淵 そうです。ただ僕らはステージに立ってライブをやっている人間なので、また別の理屈が発生してくるんですね。「ユニゾンの名前でやるからには、こういうふうにしなきゃいけないよね」というものとうまく掛け合わせていくのがタイアップをやるときの作法なんですけど、まずは作品のファンの目線で「これだよこれ!」と思えるものがないとダメなので。例えば前作から10年経った今、僕らが「EDMにハマってます」とか言ってそういう曲をやったら、たぶん誰も止めないだろうけどファンだけは「何か違う」と思うだろうし。そうなると誰も幸せにならない。そこで「待ってました!」という感じのものがあったらいいよね、と思うと、楽曲のキーやBPMの感じは自然に決まってくるんですよ。
──ですね。
田淵 その一方で、今の我々だからできるコードワークの美学とか、メロディの美学みたいなものをどれぐらい入れ込んで新鮮味を持たせられるか。歌詞を書くときも、4作目ならではの言葉使いだったり、そういうものを日々少しずつ考えながら作っていった、という感じです。
自分は曲の一部になりたい
──斎藤さんが聴いた楽曲の第一印象は?
斎藤 いい曲だなと素直に思いました。作品を作るときの僕の今の気分として「肩に力を入れない」というのが大きいテーマとしてあるので。しっかり身の詰まった音よりは軽やかなものにしたい、というか。歌うときも今までは「力の入った会心の出来」というものを追い求めていたんですけど、それは曲の中の一部でよくて、もっと肩の力を抜いて聴けるもののほうが今の気分としては好きなんです。「kaleido proud fiesta」はそこと合致していて、曲のよさと自分のモードとバンドのモードとが、バチン!とハマったなと思っています。
──さっき「ライブで大変そうな曲」とか言っちゃいましたけど、やってる側としては、そんなに大変ではない?
斎藤 大変じゃなくなるようにがんばってます(笑)。日々音楽をやっている中で、引き出しも増えてくるんですけど、その要素は大事な1カ所だけに入れて。自分のテクニック披露の場にするのではなく、自分が曲の一部になりたいというか、そういう感覚ですかね。
──歌い出しの歌詞が「かくしてまたストーリーは始まる」で、もうそのまんまというか(笑)。サービスと言ったら変ですけど思い切り寄せてますよね、タイバニの世界に。
田淵 そうですね。
──そのうえで、あえて、自分の心情を乗せた部分はあります? 田淵智也個人の、もしくはユニゾンとしての「今これが言いたいんだよ」的なものは。
田淵 歌詞に関しては全然ないかな。タイバニのファンが喜べばいいなと。Aメロの書き出しで「これが運命だったんだ、期待してたかい?」って歌われたら、ウワー!ってなるじゃないですか。「このワードを言ったら再会にふさわしいだろう」というものと、あとはファンの人たちにこの作品を祝福してほしい気持ちがすごくあったんですね。そこでAメロの書き出しの1行目はわりと言葉先行で浮かんできて、「これだな」というふうに思いながら作っていきました。
──そうでしたか。
田淵 言葉に関しては完全に今までの曲をなぞっているし、これまで聴いてきた人たちがニヤリとするような仕掛けもあるし。それはサービス精神ということではないんですけど、「これが一番いいよね」って、楽しみながら書いていましたね。メロディに関しては……「オリオンをなぞる」の頃よりはコード理論について多少わかっているし、ピアノでコードを作るようになったこともあって複雑なものができるようになったんですけど、そういう意味ではだいぶ変わっているかなと思います。一瞬だけ転調する部分とか、そういうところは今っぽい作り方でできたかなと思いますね。ユニゾンの「明るめ疾走感シングル」という、基本的な枠組みはそんなに変わっていないんですけど、細かいところに凝っていて、時間はめちゃくちゃかけましたね。調子に乗ってハモリもいっぱい付けちゃったんで、大変ですけど。
斎藤 ふふふふ。
田淵 一応3人だけで成り立つようにハモリを振り分けたんですけど。昔は「サビだけハモっておけばいいや」という感じで作っていたのが、最近はいいと思ったらハモリのラインをどんどん入れて行くようになっているからシングルの曲はコーラスが増えましたね。ライブでやるたびにいつも思います。
斎藤 最近、エンジニアさんと話していたときに「田淵さんの歌がうまくなっています」と言ってたんですよ。「だから使う機材を変えたんです」って。
田淵 へえー。
斎藤 コンプレッサーを変えたんだって。
田淵 最近は自分が提供する曲で仮歌も歌いまくっているし、ボーカルディレクションとかもやりまくってきたので。必然的に音感が付いたところはあるかもしれない。いつもレコーディングの最後にハモリを全部録るんですけど、めちゃめちゃサクサク進むなあとは思っています。
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気楽にできる要素がないとバンドは続かない