UNISON SQUARE GARDEN|今を楽しみながら未来を待つ、アイデア満載の新機軸配信ライブ

結成16年目を迎えるUNISON SQUARE GARDENが、初の有料生配信ワンマンライブ「USG 2020 "LIVE(in the)HOUSE"」を7月15日に開催する。これは5月に発表した「2020年内の活動計画5大トピックス」の一環で、無観客ながらもファン投票に基づくセットリスト作成、特製フードやグッズのデリバリーなどユニークなアイデアを盛り込んだ、プレミアム感あふれるホームパーティ的なライブとなりそうだ。

音楽ナタリーでは今回の配信ライブ開催までの経緯、バンドの未来や現在の音楽業界への提言、年内リリースが発表されたニューアルバム「Patrick Vegee」の予告など、さまざまな話題について3人の本音を聞いてみた。

取材・文 / 宮本英夫 撮影 / Viola Kam(V'z Twinkle)

自分の心が死なないためにどうしよう

──本題に入る前に、自粛期間中の話を少しだけ。世の中を見渡しての話でも、個人的な話でもいいですけど、どんなことを考えて過ごした時間だったのか?ということが知りたいです。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G) いやー、テーマがでかい。

──そんな難しく考えず(笑)。雑感という感じでいいんですけども。

斎藤 そうだなあ……こういうときだからこそ自分のための時間の使い方をしていたいと思って、ひたすら籠もってあれこれ音楽をやってました。

──田淵さんは?

田淵智也(B) ひと言で言うのは難しいな。まあでも、「人々の考えが変わっちゃったな」という感じはあって、あまりにいろんな価値観の人が出てきたから、人の思いに考えを巡らすのに疲れたというか……だからこそ自分がワクワクすることを、自分の心が死なないために、仕事じゃなくてもやるしかないなとは思っていました。とにかく自分の考えられる範囲で「これやりたい。楽しそう」というものを考えて、結果として「どうせ無理だろうな」ということでも思い付いた自分を褒めてやって、「今日も楽しかったな、明日もがんばろう」みたいな感じの毎日を続けていくしかなかったというか。とにかくこの数カ月は、いろんな人がいろんな考えをするようになっちゃったなというのが大きな出来事です、という感じです。

鈴木貴雄(Dr) 何が一番引っかかったの?

田淵 いやもう、音楽業界全体が委縮しちゃったから。業界の中の人の考えがいろんな方向に行っちゃったから。

鈴木 田淵のスタンスと、大きくぶつかるスタンスがどこかにあったということ?

田淵 あー、いや、例えば音楽ライブで「こうやって客入れたらいいじゃん」とか「こういう音楽発信の形もありじゃない?」って思いついても、それを言えないし、言っても変わんないしって状況があって。アイデアはいくらでもあるけど、たぶん口に出したらめちゃ怒られるだろうから。

鈴木 それは、例えば?

田淵 えーっとね、これ言ったら炎上するな(笑)。

斎藤 ふふふ。

田淵智也(B)

田淵 まあそんなふうに、何か方法を思い付いたとしても「こういうのやったらいいんじゃない?」と言ったらすさまじく叩かれると思うから。自分が思い付くワクワクごとが、誰かを敵に回す可能性が昔よりも大きくなったからあんま言いたくないみたいなのがあって。単純に僕の理想がどうとかよりは「今のライブハウスはこうしなきゃいけない」「こうやればライブやっていい」という条件に対してあまりそこにワクワクしないんですよね。ライブハウスを救う手段は、できるだけ考えないといけないんですけど。

鈴木 田淵はとにかくライブしたい人間だから。この大喜利で笑いを取るのは大変だね。お題の時点でワクワクしない。

田淵 そうそうそう。「この業界でワクワクしてください」のお題が、果てしなく難しくなったなとは思っていて、それかもしれないですね。誰が悪いという批判をしたいんじゃないんだけど、単純にワクワクしない。そんな中で音楽家として自分の心が死なないためにどうしようか?ということをずっと考えてる、という感じかな。それで今とりあえず思い付くアイデアとして、アルバムも作ってたし、配信ライブもやるし、できることは全然あったら、自分の心的には「ギリセーフ」みたいな感じです。

鈴木 個人的には、この状況をポジティブにとらえるしかないじゃないですか。逆に言えば、コロナウイルスや自粛というものが生まれなかったら、配信ライブをやるということには絶対ならなかったし、悪いこときっかけではあったけど、そこから新しいものが生まれてるから、しばらくはそれを楽しんで、この大喜利でボケ続けて、自粛が明けるのを待つのがいいんじゃないかなと思ってます。

UNISON SQUARE GARDEN

配信ライブには1回本気で向き合わなければ

──7月15日の配信ライブ「USG 2020 "LIVE(in the)HOUSE"」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になってしまった対バンツアー「fun time HOLIDAY 8」の代わりにやる企画、という解釈でいいんですか?

田淵 もともと「fun time HOLIDAY」は4月に配信でやろうとしてたんですよ。ツアーを飛ばすと決めたときに「出演者のスケジュールを押さえてくれ」と言って、テレビ番組みたいなことをやろうとしたんですよね。司会も入れて。でもそのあと、また世の中の状況が微妙になったので「やっぱりやめよう」という話になって、次に何かをやれるタイミングを探していたら、7月15日になったという感じです。

──斎藤さんが配信ライブをやろうと決めたときに最初に思ったことは?

斎藤 僕はやっぱり生のライブが一番だと思うので、それはありつつ、でもこの状況で何ができるのか?ということを一生懸命考えると、とにかくバンドが動いていたほうが僕らは楽しいので、それはなんとかやりたいなということと。あと、ずっと僕らの活動の真ん中に置いているライブというものをなんとか形にして、楽しんでもらえるあれこれを考えていくのも、バンドの個性が見えて面白いなと思ってます。やっぱり生でやりたいなというのは、根底にあったうえで。

──貴雄さんは?

鈴木貴雄(Dr)

鈴木 最初に聞いたときは……どういう流れでやることになったんだっけ?

斎藤 「この日に会場を押さえてるから何かする?」みたいな。

鈴木 ああそうか、それで配信っていうアイデアになったんだ。というか、配信は個人的にやりたいやりたくないに関わらず、もうすべてのバンドマンが避けて通れない義務といっても過言ではないものに、しばらくはなるだろうなと。なんにせよ1回本気で向き合わなければいけないものになってますよね。そりゃあ生が一番楽しいに決まってるけど、ライブを構成する楽しい要素のうち1つは自分たちが音楽を鳴らすこと、もう1つはそれを受けた人たちの反応を直で感じられることで。その大きな2つの片方がない状態だから、スタジオで「今日はいい感じだね」というのと同じぐらいの喜びになってしまうだろうけど、それでも楽しいことには変わりないから。小さな楽しみだとしてもしっかり楽しんで、いつか終息するときを待ちたいですよね。医学の進歩を待ちながら、さっき言った大喜利をし続けながら、待ち続ける感じなのかな。