UNISON SQUARE GARDENの結成15周年アニバーサリー企画がいよいよ佳境に入ってきた。大阪・舞洲スポーツアイランドに2万5000人を集めた7月の野外単独公演「プログラム15th」、そして初のトリビュートアルバム「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」に連動して、8月の東京・新木場STUDIO COASTでの豪華出演者大集合によるトリビュートライブという、夏の二大イベントを大成功させたバンドの次の一手は、今年唯一の新曲であるシングル「Phantom Joke」のリリース。この曲はアニメ「Fate/Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア‐」オープニングテーマとして制作された。9月からはアルバム「Bee side Sea side~B-side Collection Album~」の再現ツアーもスタートし、15周年のフィナーレへ向けて全力疾走を続ける3人に、この夏の記憶と秋冬シーズンにかける思いをたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 宮本英夫 撮影 / 草場雄介
ユニゾンはすごく愛されてしまっている
──振り返ってみて、舞洲の野外ライブはバンドにとってどんな位置付けでしたか。
斎藤宏介(Vo, G) 舞洲は、15周年でいろんなことをやらせてもらう中で一番真ん中というか、スタンダードな大きな催し物だと思ってました。普段「遠征なんてするな」と言ってるUNISON SQUARE GARDENが、「ぜひ大阪に観に来てください」と言ってバスまで用意して(笑)、1本きりのワンマンライブを行うという。全国各地から集まってもらったワンマンライブだったので、真正面から臨んだ感覚が強いですね。
──野外という特別なシチュエーションに、2万5000人の大観衆。
斎藤 ステージ上はとにかく、最初から最後まで楽しかったですね。2万5000人って野外フェスではよく見る数字ですけど、その1人ひとりがバンドに向かう熱量がフェスとは比べものにならないぐらい大きかったし、子供を連れて来てる人がいたり、後ろのほうで何か飲みながらゆったり観てる人がいたり、何がなんでも一番前で観てやるという人がいたり。15年も続けてるといろんな人が来るんだなって、そういう1つひとつが面白かったですね。
──貴雄くんの、あの日の記憶は?
鈴木貴雄(Dr) “愛”を感じましたね。僕はもともと、反骨精神をモチベーションの9割にしてドラムをやっているところがあって、現状への不満、自分へのいら立ち、社会での生きづらさ、もっと自由に生きたいとか、そういう思いが強かったんですけど、それが去年のアルバムでわりと達成されてしまって。この1年は「このままでいいのか?」と悩みながらやってきたんですが、あの日のライブをやって、ユニゾンはすごく愛されてしまっているなと思いました。ただ自分たちが好き勝手やってるだけなのに、それを喜んでもらえる、人によっては生きがいにまでしてもらえるものを、中途半端なままで終わらせるのはもったいないという気持ちを、ステージ上で感じたんですよ。
──なるほど。
鈴木 自分の気持ちは1回置いておいても、UNISON SQUARE GARDENというものを行くところまで行かせないと、マジでもったいないということを感じて。ほかにもいろんな要因があってですけど、ちょっと吹っ切れた感じがしました。こんなにカッコいいものをよりカッコいいものにするには、俺がカッコよくならなきゃいけないし、その一角を担う覚悟を改めて取り戻した感じはあります。
──いい話ですね。田淵くんが舞洲で感じたことは?
田淵智也(B) いやー、もう、僕にとっては準備のほうが大事というか。セットリストとか構成とか「2時間半で終わらせるためにどうしよう」みたいなことを考えるのが、モチベーションの大半を占めていたので。普段は「ベース弾いてみんなでライブやって楽しい」という、それが僕がバンドをやる理由なんですけど、舞洲に関してはとにかく1つのショーとして、それこそ僕らが頭を下げて全国から来てもらった人たちに「いいもん観たな」と思ってもらうための構成のほうが大事だから、僕が「楽しい」「この曲好き」とか思うのはあとの話かなと思っていて。
──ああー。なるほど。
田淵 楽しくなかったとかそういうことでは全然なくて、そっちのほうに気持ちがいっていたので、ライブ中も「この構成はこうならないときれいに終わらないからちゃんとしなきゃ」みたいな気持ちのほうが強かった。そもそもユニゾンは客を喜ばせるためのバンドじゃないけど、あの日に関しては「絶対喜ばせなければいけない」という強い思いがあって、僕らのライブに足を運び続けてきてくれた人に「見続けてよかった」と思ってもらうことが目的なので。あの1日がちゃんとしたショーとして成り立つための、自分の中でいまだやったことのない挑戦だったので、やりがいと達成感はめちゃくちゃ大きかったです。自分にはこういうセンスもあるんだなって、自分の可能性を信じられるいい瞬間だったなという印象ですね。
──それも15年の重みじゃないですか。今だからできること。
田淵 本当にそうですね。今までの貯金がないとできないことだし、それこそファンがいないと成立しない。「15年やってきてよかったね」って僕らも思ったし、ファンのみんなも思ったはずなので。ア二バーサリーらしいことをやろうとしたのは僕にとってバンド人生の中で初めてで、それにしてはそこそこたいしたものができたなとは思ってます。「こんなことできるバンド、ほかにいないだろう」というのは、自信になりました。ファンが「そりゃ次のライブにも行くよね」と思えるものはできたかなと思います。
ずっとハイライトが続いているようなトリビュートライブ
──そしてそこから1カ月後には、新木場STUDIO COASTで豪華ゲストが入り乱れてにぎやかなトリビュートライブが行われました。あの2日間はどうでしたか?
斎藤 とにかく準備が大変だった! こんなにがんばったぞって自分から話すのは好きじゃないけど、それにしてもがんばった(笑)。ただその甲斐あって、本番の最中はずっとハイライトが続いているようなライブで、「バンドやっててよかった」と思いましたし、バンドを始めたきっかけの、高校生の頃のあの感じがずーっとあるような2日間でした。こんなカッコいいミュージシャンたちと一緒にステージに立ててることがうれしかったし、普段の飲み仲間がステージに立ってる姿を横から初めて見て「かっけーな」と思う瞬間があったり。
鈴木 金井(政人 / BIGMAMA)だよね。
斎藤 まあ、金井なんだけど(笑)。
鈴木 あいつは本当に、普段のときと、ステージ上のカッコよさのギャップがハンパない。
斎藤 一緒にステージに立つと全部わかっちゃうんだよ。何を考えてこうしてるのか?とか、なんでこういう態度を取るのか?とか。終わってから2人で答え合わせをしたんだけど、本当に……まあ金井の話はいいわ。話が長くなる(笑)。
鈴木 もったいないよね。せっかくのインタビューが(笑)。
斎藤 あと、パスピエの大胡田(なつき)さんとか、LiSAちゃんにも、SKY-HIにも思ったけど、本番へ向けたスイッチの入れ方がすごいんです。リハーサルでは見られなかったスイッチが入って、もう1つ上に行く感じを見られたときに、思わずニヤニヤしちゃったりとか。堂島孝平さんが、直前まで上下ビシッとスーツだったのに、本番では俺らの私服を着て出てきて「バカだなー」という感じとか(笑)。9mm Parabellum Bulletの滝(善充)さんが、ギターソロを弾きながらどこかに消えちゃったりとか。1つひとつが愛おしくて最高でした。
鈴木 あとはイズミカワソラさんがかわいくてよかった。音楽と人間性がイコールで、フラットで、お茶目で、でも芯の強さがあって、すごくかわいらしいステージでよかったなあと思います。あの色は12組の中でほかにない色でしたね。そして東京スカパラダイスオーケストラは今、僕が音楽をやってる理由の1つになるくらい重要なバンドで、一緒にできて本当にうれしかったです。僕は嫌いなものが多いというか、カッコいいと思わないものが多い人間なので、何かと排除しがちなんですけど、スカパラに関してはずーっと憧れで、そんなアーティストは今までいなかったんで。俺が死ぬまで死なないでほしい、ずっと背中を見せてほしいと思います。
斎藤 ユニゾンはバンドとしてのセッションをしないという決まりごとがあったから。俺はスカパラさんとここ数年コラボレーションをやらせてもらっていたので、バンドとしても一緒にできてよかったです。この感動を2人と共有できたことがうれしかったな。
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バンドってカッコつけなくてもいいんだよ
2019年10月8日更新