ナタリー PowerPush - UNISON SQUARE GARDEN
エンタテインメント性あふれるアルバム「JET CO.」で鳴らすバンドの第2章
UNISON SQUARE GARDENが2ndアルバム「JET CO.」をリリースした。
昨年は80本におよぶライブ活動を経て、ひと回りもふた回りも成長を遂げた彼ら。この作品はジェットコースターを思わせるタイトルのとおり、さらに屈強なアンサンブルが響くギターロックに、まるで遊園地のような楽しさをフィーチャー。疾走感の中に蒼きやるせなさを忍ばせて、ロマンチックなバラードに切なさをにじませる。ダイナミックに、ポップに、スリリングに駆け抜ける全12曲が収録されている。
このアルバムで、バンドとしてまた新たな場所へと到達した3人が、今作に託した想いを語ってくれた。
取材・文/上野三樹
「俺が一番楽しいけどね」って言える、そこに戻れる自信がついた
──2009年は都内だけでもLIQUIDROOM ebisu、赤坂BLITZ、渋谷CLUB QUATTRO 2DAYSとワンマンライブを成功させて、自分たちでもバンドが大きくなっていく実感があったのでは?
斎藤宏介(Vo, G) そうですね。1stアルバムをリリースして、ツアーをやって、「UNISON SQUARE GARDENとしての足跡を残した」という感じがすごくありました。だからこそ「次は何をしよう?」って思えたし、振り切れたというか「もっと過剰にやっても大丈夫だな」っていう自信がつきましたね。
鈴木貴雄(Dr) ライブをやってても、いろんな場所でいい笑顔を見れたんです。そうすると「自分たちのやってることは人に笑顔とか夢を与えるんだな」と思えて。そう感じてから今回のアルバムを作ったので、今までとは違ったベクトルで物事を考えられるようになりました。昔はただバンドをやりたいだけだったんですけど、「もっと夢を見せたい」っていう気持ちにもなったし。アルバムもそういうものになってるんじゃないかなと思います。
──UNISON SQUARE GARDENは今、何を鳴らすべきなのか? ということをこれまで以上に考えた時期でもあったのかなと思ったんですが。
田淵智也(B) 曲作りにおける苦悩とかは特になかったですね。ただ、CDが世に出る、ライブにお客さんがいっぱいいるっていう、今までになかった風景の中で、どこかで自分を見失っちゃう瞬間があって。「僕はまず誰のために音楽をやってるんだっけな?」というのを考えたときに、「やっぱり自分のために音楽をやってるんだな」っていう思いに立ち帰れたのは原動力になったと思います。なんで音楽をやってるかというと、自分が世の中に対して満たされないからだし、まだ見れる景色があると思ってるからで。たくさんの人にライブに来てもらって「ユニゾン最高です!」って言ってもらってる中で、それでもなお「いや、俺が一番楽しいけどね」って言える、そこに戻れる自信がついたのは大きいと思ってますね。結果的にお客さんが喜んでくれるのはすごくうれしいこと。でもその結果に行くために、まずは自分の最初の目的である「俺、音楽が超好きなんですけど」っていうところが大事ですよね。
──自分が楽しいからやる、というシンプルな原動力で制作に入れた、と。
田淵 それはリリックにも表れてきていて、作詞家としての自信がついたのは自分の中での成長だなと思います。だから世に出ていって消費材と言われても怖くないっていうか。そういう恐れがなくなった感じがします。
自分を主張することとバンドを立てることはちゃんと同居できる
──前作はユニゾンがロックバンドとしてのスタンスを示したものでもあったと思うんですが、今作「JET CO.」は皆さんがこのバンドの良さを客観視できた上で作られてるような感じもしたんですね。で、そこがすごくいいと思う。
田淵 何がやりたいかがわかるアルバムになったと思うんですよね。迷走したり悩んだりしてこういうアルバムができたんじゃなくて、何がやりたいかっていうのに基づいてこのアルバムが完成したっていうことは、声を大にして言いたい。それは1stアルバムを作ったとき以上に達成感がある。ごまかしがないというか。CDをリリースするときって「どう聴かれるんだろう?」ってそわそわしちゃうんですけど、今作に関しては「これに対して世の中がなんて言うんだろう?」っていうワクワクしかない。それが、前と違うところかな。
斎藤 うん、ちゃんと「自分にしかできない」っていうものを作ろうと考えてましたね。自分がちゃんと音楽の中にいて、3人もいて、そこで自然に出てくるものを1つ1つ大事にできた。今は絶妙なバランスで、3人ともちゃんと主張できるようになってきてる感じはあります。
──これまでと3人のバランスは変わったんですか。
斎藤 そうですね。変わってきてる気がします。自分を主張することとバンドを立てることはちゃんと同居できるんだよっていう感覚のコツを掴んだ感じっていうんですかね。片方を立てれば片方が立たないじゃなくて、みんなで一緒にエッセンスを加えられるようなやり方がわかってきました。
鈴木 本当に、周りを立てることを学んだ1年だったと思います。俺は、ドラマーだけど支えるだけじゃ面白くないっていうのが根本にあって。俺もアーティストだから主張していきたいし。今までは、その主張が先に立っちゃってぶつかるっていうことを繰り返してきたんですけど、名脇役になるカッコ良さもあるんだなって知りました。だから最近は作業もすごくスムーズだと思います。
──鈴木さんは、自己主張したいっていう気持ちが前から強いですもんね。
鈴木 そうですね、それが小学校時代からあります。
──そんなにさかのぼりますか(笑)。田淵さんがかなり明確なイメージで曲を作れたから、3人での作業もスムーズに行ったという感じでしょうか?
田淵 うん、あとはやっぱり「絶対ここは鈴木くんに任せたほうが面白い」っていうのがわかってきたから。最初に、ギターはこうしたい、ドラムはこうしたいっていうのはあるんですけど、自由にやらせたいって考えも自分の中で出てきて。何となくの曲の概要とか醸したい雰囲気とか詞の感じっていうのは最初に全部渡すんですけど。「これはもう基本的にぶっ壊してくれてかまわないので」っていう曲もありますし。人に任せることができるようになったのは、自分の中での新しい回路だなと思います。
CD収録曲
- メッセンジャーフロム全世界
- コーヒーカップシンドローム
- チャイルドフッド・スーパーノヴァ
- cody beats
- 気まぐれ雑踏
- キライ=キライ
- ライドオンタイム
- meet the world time
- 夜が揺れている
- アイラブニージュー
- スノウアンサー
- 23:25
UNISON SQUARE GARDEN(ゆにぞんすくえあがーでん)
斎藤宏介(Vo,G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)から成るスリーピースバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2006年8月に1stミニアルバム「新世界ノート」リリースし、ライブハウスおよび下北沢ハイラインレコーズのみの販売で1000枚を完売。2007年にはメンバー主催のイベントをスタートさせ、ソールドアウトの快挙を成し遂げたほか、同年12月には初の単独ライブを成功させる。2008年1月に2ndミニアルバム「流星前夜」を発表。印象的なメロディーとボーカル斎藤の独特な歌声、そして圧倒的なライブパフォーマンスが話題を呼んでいる。