音楽ナタリー Power Push - UNCHAIN

結成20周年を迎えたバンドの新たな挑戦

正反対の方向に振り切ったオリジナル2曲

──本作にはUNCHAIN単独名義の曲も2曲収録されています。実はこれも何かとのコラボになっているんですか? たとえば初めてのエンジニアさんとのコラボとか。

佐藤 特にそういうのはないです(笑)。もともとオリジナルは2曲くらい入れようと思ってたんですよ。

谷川 というのは、これをキッカケに初めてUNCHAINを知ってくれた人に、自分たちがどんなバンドかっていうのを見せておきたいと思って。

佐藤 だから、この2曲は正反対の方向に振り切って作ったんです。

──「The Kids Are Crazy」はどんなイメージで作ったんですか?

谷川正憲(Vo, G)

谷川 これは最近のUNCHAINの流れとは違う方向なんですけど、テンションの高い曲をやりたいなと思ったんです。前作の「with time」は、わりとBPMを落としめで大人のビートみたいな落ち着いたディスコって感じだったんですけど、この曲はテンション高く、でもファンクであるっていうところに重点を置いて作ったんです。

──作る上で参考にした曲とかはあるんですか?

谷川 Jamiroquaiの「A Funk Odyssey」のボーナストラックに、8分近くずっと高速ファンクをやってる曲があるんです。たとえばテンポがBPM140だとすると、140は140でもテンションが高い140ってまた違うんですよ。そのボーナストラックはテンションの高い140をずっと続けるっていう。すごく難しいんですけど、そこを目指したんです。

──テンポが速くなるとリズムが走りがちだけど、走っちゃダメっていう。

谷川 そう。ロックな曲だと140が142、145になってもOKみたいなとこあるんですけど、この曲は141にしない!みたいな。だけど、カッチリ弾いてもグルーヴが出ないからそれもダメ。高いテンションでそのギリギリを攻めるっていう。

──この曲ではファルセットのような高音ボイスも、曲の艶っぽさ、ファンク度をアップさせてるなと思いました。

谷川 ファルセットじゃなくてミックスボイスなんですけど、その音域が最近になって出るようになってきたんで、調子に乗って多用してるんです。そのファルセット感をうまく使うと、曲がファンキーに聞こえたりするので、そこを目指したんですよね。

──「Koe」はどんな思いから書いた曲ですか?

谷川 お客さんのおかげで20年間やってこれたことへの感謝ですね。いわば声明。そういう意味で「Koe」なんです。

──この曲でも、さっきのミックスボイスを使っていますね。

谷川 同じような声の出し方なんですけど、ちょっと柔らかいトーンにすることでまた違った色気が出ると思って。正反対な曲調ですけど、同じような手法で歌ってみました。

──歌声は柔らかいし、メロディもゆったりしてるんだけど、演奏はカチッとしていてテンポも速い。ちょっと違和感を覚えるその組み合わせが面白かったです。

UNCHAIN

谷川 確かにテンポが速いんですよね。BPMは130くらいあるかも。

佐藤 しかも8分乗りの、テンテンテンテンっていう刻みだし。

谷川 でも、そこは意図的にやったんです。カチッと歌っちゃうと出したい雰囲気が出なくて。

──かといって歌に合わせて演奏をレイドバックさせるのも違うと?

佐藤 そう。バンドまでそうやっちゃうと、ちょっとクサくなっちゃうんですよね。

僕らみたいな音楽性は大人になるほど豊かに表現できる

──後ろ乗りの演奏にレイドバックした歌を乗せるとクサくなるというか、一気にソウル臭が増しますよね。でもUNCHAINが鳴らす音はそういう方向じゃない。とすると、UNCHAINが求めるブラックミュージック感、ソウルミュージック感ってどんなものなんですか?

谷川 僕の考えでは、意外と黒人のミュージシャンって後ろ乗りじゃなくて、前乗りだったりするなと思ってるんです。歌も実はレイドバックしてないんだけど、日本人が真似するとそうなっちゃうと思ってるんですよ。

──日本人がブラックミュージックを体現しようとすると、リズムを後ろで取りがちっていう?

谷川 たぶんそういうところがあるんじゃないかと。でも、本当は違うんじゃないかと思っていて。特に最近のブラックミュージックはグリッドにメッチャ合ってて、歌はレイドバックというよりも……レイドバックもするんだけど、ちょっと前にもいくっていう感じなんです。ただ、それはなかなか真似できないんですけどね。おそらく黒人の人はそうやろうと意識してないだろうし。

 というか、意識してできるもんでもないだろうから。

佐藤将文(G)

佐藤 ただ、UNCHAINには、どうしても出てしまうシャッフル感っていうのもあったりして。それがあるからちょっとブラックな感じがするって言われるんだと思うんです。

谷川 だから、UNCHAINとして目指すのは、まさに「Koe」みたいな感じ。リズムはカッチリとしながらも、歌や上モノはわりと自由なタイム感でやってるっていう。それが近いのかなと思ってるんです。

──「僕たち、ソウル音楽やってます」というバンドはたくさんいますが、タイプはいろいろじゃないですか。UNCHAINが目指すソウル感は、Suchmosともceroとも違うだろうし、シティポップと呼ばれてるようなグループが言うソウル感とも違うだろうし。だからこそ、どんな感じを求めているのか、改めて聞いてみたかったんです。

谷川 今は僕らはやっぱ、洋楽でいうとMaroon 5みたいな感じをやりたいんだと思うんです。Maroon 5がソウルか?って言われると、また違うと思いますけど。だから、本物のブラックミュージックというよりも、ブルーアイドソウル寄りなんだとは思いますね。

──そのうえで、今後はどんな音楽性を追求していきたいと考えていますか?

谷川 UNCHAINはこの20年でいろんな方向の音楽性にチャレンジしてきましたけど、もうアッチャコッチャ行くような感じでもないかなと思っていて。近年の「N.E.W.S.」「10fold」「with time」は、僕たちの中でいい流れで来れてるなと思うので、その流れを大切にしつつ、それを崩さないサウンドで、なおかつ挑戦したいなと思いますね。

──その3枚のアルバムでダンスミュージック指数は上がってきてると思うんですが、そういう方向を突き詰めていきたいということですか?

左から佐藤将文(G)、谷川正憲(Vo, G)。

谷川 そうです。で、挑戦というところでは、もうちょっとアーバンなものをやってみたいと今、僕は思ってるんです。ロバート・グラスパーとまで言っちゃうと違うかもしれないし、ディアンジェロもまたちょっと違うかな。けど、うまいことバランスを取りつつ、ああいう雰囲気を出せたらなと。……って、これはまだあまりメンバーにも言ってないことなんですけど。

──だそうですよ、佐藤さん。

佐藤 考えておきましょう。……って、なんか偉そうに言ってますけど(笑)。でも付いていきますよ。

──めざせ30周年っていう気持ちで。

佐藤 そうですね。そのときも楽しくやれていたら。

谷川 僕らみたいな音楽性は大人になるほど豊かに表現できるものだと思ってるんです。今までの曲の中にも、ライブを重ねるたび、年を経るたびによくなってる曲があるし。だから、これから先も長いことUNCHAINをやっていけるんじゃないかと思いますね。

UNCHAIN
ミニアルバム「OUTSIDE」2016年10月5日発売 / 1620円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1045
「OUTSIDE」
収録曲
  1. 緊張 / UNCHAIN with 鬼束ちひろ
  2. Bomb A Head / UNCHAIN with BRADIO
  3. Wonder / UNCHAIN with 彩姫 from BAND-MAID
  4. Don't Stop / UNCHAIN with カナタタケヒロ from LEGO BIG MORL
  5. 浮遊 / UNCHAIN with 蒼山幸子 from ねごと
  6. ひだまりのうた / UNCHAIN with 大石昌良
  7. The Kids Are Crazy / UNCHAIN
  8. Koe / UNCHAIN
ライブ情報
UNCHAIN 20th anniv. 3-Game-Match “Mr.VIRUSOUL スペシャル”
  • 2016年10月20日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / LUCKY TAPES
  • 2016年10月27日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / Keishi Tanaka
  • OPEN 18:30 / START 19:00
    チケット:3500円(ドリンク代別 / 整理番号付)
    INFO:ディスクガレージ 050-5533-0888
UNCHAIN「20th Anniv. Special Live
『You & U』」
  • 2016年12月18日(日)東京都 日本橋三井ホール
    <出演者>
    UNCHAIN
    ゲスト:蒼山幸子(ねごと) / カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL) / 彩姫(BAND-MAID)
    ※ソールドアウト
UNCHAIN アコースティックワンマンLIVE
  • 2017年2月3日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2017年2月12日(月・祝)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
UNCHAIN(アンチェイン)
UNCHAIN

京都府京丹後市出身のロックバンド。1996年に中学校の同級生だった谷川正憲(Vo, G)、谷浩彰(B)、吉田昇吾(Dr)によって結成される。後に佐藤将文(G)が加入。ジャズ、ブルース、フュージョン、ソウルなど幅広い音楽を独自の解釈で昇華させたグルーヴ感あふれるサウンドや、フロントマン谷川のクリアでソウルフルなボーカルなど、豊かな音楽性が耳の肥えたリスナーから支持を集める。2005年に1stミニアルバム「the space of the sense」が発表されると、無名の新人バンドにもかかわらず好セールスを記録し、その名が一気に全国区へと拡大した。結成当時から英詞にこだわっていたが、よりメッセージを伝えるために2008年リリースの作品から日本語詞を採用。2011年6月発売のアルバム「SUNDOGS」は全曲日本語詞の作品となった。2013年2月に発表したカバーアルバム「Love & Groove Delivery」が大きな反響を呼んでシリーズ化され、2014年2月に第2弾、2015年2月に第3弾をリリース。2015年6月にはデビュー10周年を記念して、過去曲を新たに作りなおしたリメイクベストアルバム「10fold」を完成させた。また2016年10月には結成20周年を記念し、鬼束ちひろ、BRADIO、BAND-MAID、LEGO BIG MORL、ねごと、大石昌良をゲストに迎えたコラボアルバム「20th Sessions」を発表した。