音楽ナタリー Power Push - UNCHAIN

結成20周年を迎えたバンドの新たな挑戦

今年3月にアルバム「with time」を発表したUNCHAINが、今度はコラボレーションアルバムをリリースした。結成20周年を記念して制作されたそのアルバム「20th Sessions」には、鬼束ちひろ、BRADIO、BAND-MAID、LEGO BIG MORL、ねごと、大石昌良が参加。UNCHAINの音楽性と6組それぞれの個性が共振、融合、あるいは異種配合され、バンドの持ち味と新味をダブルで味わえる逸品に仕上がっている。20周年という節目に他者と交わることで自分たちの姿を改めて見つめ直し、これから彼らはどこへ向かおうとするのか。いろいろな挑戦が隠されている各楽曲の制作エピソードで本作を振り返りつつ、今後目指す音楽性も語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 後藤壮太郎

「歌ってもらうだけ」っていうのは絶対にしたくなかった

──今回、コラボレーションアルバムを作ろうと思った動機から教えてください。

UNCHAIN

谷川正憲(Vo, G) ここ4年くらい、毎年アルバムを2枚作るというハイペースな活動をしていて「今年ももう1枚作るよね?」という話になったときに、「結成20周年の記念として特別なものをやりたいね」となったんです。で、最初は誰か1組とスプリット作品を作ろうかという話だったんですけど、それがどんどん広がっていっちゃって結果、大変なことになったっていう(笑)。

──コラボ相手はどんなところにポイントを置いて選んでいったんですか?

谷川 普段からリスペクトしている人というのが大前提にありました。その上でまずはUNCHAINとやってる画が見える人たち。BRADIOとかLEGO BIG MORLとかはそうですね。あとは逆に画が見えない人たちですね。

──鬼束ちひろさんとか?

谷川 はい。BAND-MAIDもそうだと思いますが、「どうなっちゃうんだろう?」っていう化学反応が面白そうな人っていう。あとはUNCHAINを知らない人に届けようっていう意識もあったんです。カバーアルバムもそういう意図があったんですけど、自分たちの名前でやってるだけではなかなか広がらない部分もあって。ほかのアーティストと絡むことで、より広がりが持てるんじゃないか、UNCHAINを知らない人にも届くんじゃないかと考えてました。

──今回のコラボ曲はすべて、UNCHAINが作曲し、コラボ相手が作詞するという作り方になっていますが、そのスタイルをとった理由は?

佐藤将文(G) 最初から全員に歌詞を書いてもらうという形が決まっていたわけじゃないんです。始めは一緒に曲を作るとか、プロデュースをしてもらうっていう案も出てましたから。でも「歌ってもらうだけ」っていうのは絶対にしたくなかったんです。

──世の中にはそういう形のコラボもありますよね。

谷浩彰(B)

佐藤 そうじゃなくて、もっともっと「共演」したくて。もちろん一緒に曲を作っていってもよかったんですけど、時間的な制約もあるし、だったら相手に歌詞を書いてもらうことで、「2組で1つの作品を作る」っていう部分の深みが出るなって。そう考えていたら、うれしいことにたまたま全組、歌詞を書いてもらえることになったんです。

谷浩彰(B) あと、カバーアルバムを出したときに他人の曲を歌う谷川のよさに気付いたんで、相手に歌詞を書いてもらうと面白そうだなとは思ってました。特に鬼束さんの歌詞は個人的に楽しみにしていて。上がってきたときに「うわ、やっぱすげえな」と思いましたね。

2時間後には鬼束さんから歌詞が送られて来た

──鬼束さんとはどんなつながりがあって、今回オファーしたんですか?

谷川 1年くらい前に、ひょんなキッカケでUNCHAINのライブを観に来てくださったんです。鬼束さんは、僕らが中学生のとき、お茶の間で観てたテレビの中の人なんです。思いきり「月光」の時代。なので本当に恐れ多かったのですが、ライブを観て気に入っていただけたみたいで、これを機に思い切ってオファーしてみるのもいいんじゃないかってことで。

──鬼束さんとの「緊張」はどんなイメージで書いたんですか?

谷川 今回は1アーティストにつき10~20曲くらい曲を用意して、その中から1曲選んでもらうという作り方をしたんです。その中には書き下ろした曲もあれば、けっこう昔の曲もあるんですが、これは確か2011年くらいに作った曲で、当時こういうレゲエ調の曲はあまりUNCHAINにはなくて、そういう曲もあったら面白いなと思いながら、ちょっとお試しで作ってみた曲なんです。

──リズムパターンやドラムの音色にはレゲエ味を感じつつ、派手なブラスが入っているからか歌謡ソウルの風味も感じる曲でした。

谷川 それは言われますね。メロが歌謡っぽいって。

──でも、そういう曲を鬼束さんが選んできたと。

谷川 ゴスペルっぽい曲だったり、鬼束さんの世界観に寄ったようなダークな感じの曲も渡したんですけど、意外にもこれを選んできてくださって。あと、この曲に、こういう歌詞を乗せてきたところがすごいなと思っていて。しかも、鬼束さんって歌詞を書くのが世界一速いんじゃないかと思うくらい速いんですよ。「この曲にします」っていうメールが来た2時間後くらいにもう歌詞が送られて来た。

佐藤 「たとえばこんな感じはどうですか?」っていうなんとなくの歌詞じゃなくて、もうコレが送られて来たんですよ。

──以前、「1曲15分くらいで書く」っていう彼女のインタビュー記事を読んだことがあります。何かに取り憑かれたようにブワーッと言葉が浮かんで来るんでしょうかね。

谷川正憲(Vo, G)

谷川 かもしれないですね。レコーディングのときもマイクを持つと人が変わった感じになって、ひと言も話しかけられない、みたいな。

──鬼気迫る感じがあるんですね。

谷川 そう。本人は特に意識を切り替えてるつもりはなく、普段通りらしいんですけど、グーッと入り込んでる気配を感じて。ミュージックビデオ撮影のときも、ひと言しかしゃべれなかったですから。

──まさに「緊張」なんですね(笑)。

谷川 ホンマにそうです(笑)。

──「緊張」の歌詞にはどんな印象を持ちましたか?

谷川 最初に読んだときは全然わからなくて。そういうときでも歌ってみるとわかる場合が多いんですけど、この曲は歌ってみても「これ、なんなんだろう?」っていうところがけっこうあったんですね。それで何度も読んだり歌ったりして。映画とかにもありますけど、何回も観ないとわからない感じというか、そういう深みと重みをすごく感じましたね。読めば読むほど、本当にすごい歌詞だなと思いました。

ミニアルバム「OUTSIDE」2016年10月5日発売 / 1620円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1045
「OUTSIDE」
収録曲
  1. 緊張 / UNCHAIN with 鬼束ちひろ
  2. Bomb A Head / UNCHAIN with BRADIO
  3. Wonder / UNCHAIN with 彩姫 from BAND-MAID
  4. Don't Stop / UNCHAIN with カナタタケヒロ from LEGO BIG MORL
  5. 浮遊 / UNCHAIN with 蒼山幸子 from ねごと
  6. ひだまりのうた / UNCHAIN with 大石昌良
  7. The Kids Are Crazy / UNCHAIN
  8. Koe / UNCHAIN
ライブ情報
UNCHAIN 20th anniv. 3-Game-Match “Mr.VIRUSOUL スペシャル”
  • 2016年10月20日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / LUCKY TAPES
  • 2016年10月27日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / Keishi Tanaka
  • OPEN 18:30 / START 19:00
    チケット:3500円(ドリンク代別 / 整理番号付)
    INFO:ディスクガレージ 050-5533-0888
UNCHAIN「20th Anniv. Special Live
『You & U』」
  • 2016年12月18日(日)東京都 日本橋三井ホール
    <出演者>
    UNCHAIN
    ゲスト:蒼山幸子(ねごと) / カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL) / 彩姫(BAND-MAID)
    ※ソールドアウト
UNCHAIN アコースティックワンマンLIVE
  • 2017年2月3日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2017年2月12日(月・祝)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
UNCHAIN(アンチェイン)
UNCHAIN

京都府京丹後市出身のロックバンド。1996年に中学校の同級生だった谷川正憲(Vo, G)、谷浩彰(B)、吉田昇吾(Dr)によって結成される。後に佐藤将文(G)が加入。ジャズ、ブルース、フュージョン、ソウルなど幅広い音楽を独自の解釈で昇華させたグルーヴ感あふれるサウンドや、フロントマン谷川のクリアでソウルフルなボーカルなど、豊かな音楽性が耳の肥えたリスナーから支持を集める。2005年に1stミニアルバム「the space of the sense」が発表されると、無名の新人バンドにもかかわらず好セールスを記録し、その名が一気に全国区へと拡大した。結成当時から英詞にこだわっていたが、よりメッセージを伝えるために2008年リリースの作品から日本語詞を採用。2011年6月発売のアルバム「SUNDOGS」は全曲日本語詞の作品となった。2013年2月に発表したカバーアルバム「Love & Groove Delivery」が大きな反響を呼んでシリーズ化され、2014年2月に第2弾、2015年2月に第3弾をリリース。2015年6月にはデビュー10周年を記念して、過去曲を新たに作りなおしたリメイクベストアルバム「10fold」を完成させた。また2016年10月には結成20周年を記念し、鬼束ちひろ、BRADIO、BAND-MAID、LEGO BIG MORL、ねごと、大石昌良をゲストに迎えたコラボアルバム「20th Sessions」を発表した。