音楽ナタリー Power Push - UNCHAIN
このグルーヴで世界を目指す
UNCHAINが今年デビュー10周年を迎えることを記念し、リメイクベストアルバム「10fold」を6月17日にリリースする。
今作は彼らが過去に発表した楽曲のリメイクバージョンを中心に、新曲「Kiss Kiss Kiss」「Come Back To Me」を加えた全10トラックを収録。過去曲はアレンジのみならず歌詞も大幅に改変され、代表曲「Show Me Your Height」が「Get Ready」に改題されたりと曲によってはタイトルまで変更されている。レコーディングはアメリカ・ロサンゼルスにて行われ、ドラコ・ロサのアルバム「VIDA」を手がけて昨年グラミー賞を受賞したSadaharu Yagiがエンジニアを担当。世界レベルのハイクオリティなサウンドプロダクションで、バンドの確かな演奏力と豊かな表現力が余すことなく表現されている。
2013年から3作品リリースしてきたカバーアルバムシリーズ「Love & Groove Delivery」が大きな注目を集め、ここ数年でこれまでと違った新しいファン層を獲得しているUNCHAIN。Daft Punkの「Get Lucky」やファレル・ウィリアムスの「Happy」などのヒットを機に世界的な規模でファンクやディスコが見直されている中で、ひたむきにグルーヴィなブラックミュージックを志向し続けてきた彼らは、今の時代と歯車ががっちり噛み合った状態にあるように見える。追い風に吹かれながら彼らはどんな思いでこのアルバムを作り上げたのか、メンバー4人に話を聞いた。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 小坂茂雄
どこの国に行っても通用するようなダンスチューンを作りたい
──「Love & Groove Delivery」の3作品が話題になっていたので、今回リメイクアルバムを作るという話を聞いたときに僕が最初に思ったのは、「カバーアルバムシリーズですごく手応えがあったから、自分たちの曲もセルフカバーしてみようと思ったのかな?」ということで。
谷川正憲(Vo, G) ははは(笑)。なるほどー。
谷浩彰(B) いや、このタイミングでベストアルバムを出すっていうのはもともと念頭にあったんですよ。
谷川 デビュー10周年なので、今までやってきたことの集大成になるものを出したいなと考えてたんです。でも、ただ昔の曲を集めたベスト盤を作るのは面白くないなって思って。もう10年もキャリア積んできたし、10年前の曲を今レコーディングしたらもっといいものができるなっていう自信があったから、今回こういうものを作りました。
谷 昔リリースした曲を今改めて聴いてみると、なんかごちゃごちゃしてるというか、ものすごく盛り込まれてるんですよ。
谷川 それはそれでいいんだけどね。
谷 いいし、今聴いても「カッコええ」って思うんですけど、今のUNCHAINのモードとは違うものなので。そういう曲を今のモードでやれたら面白いんじゃないかなって。
谷川 まあ、やりたいことは10年前からずっと変わってないんですけどね。言ったら「お客さんの体を揺らしたかった」ってだけなんで。「どうしたら踊ってくれるかな」っていう考え方が10年経って変わってきたんだと思います。より“本物志向”になってきたというか。ロサンゼルスに行ってSadaharu Yagiさんにエンジニアをお願いしたのも、「どこの国に行っても通用するようなダンスチューンを作りたい」っていう気持ちがあったからだし。
谷 だから今回、アルバムの収録曲は「グルーヴがある踊れる曲」を選んだんです。曲目だけ見たら「え、ホンマにベスト?」みたいな意外な選曲だと思うけど。
──「やりたかったことは10年前から変わってない」とはいえ、UNCHAINは今までアルバムを作るたびに新しいことを試して、「自分たちに何ができるのか」という実験を続けてきたバンド、という印象があります。「Hello, Young Souls!!」でダンスロック寄りにしたり、「SUNDOGS」で全曲日本語詞にしたり、「Eat The Moon」でたくさんのゲストを入れて壮大な音作りにしたり。
谷 そうですね。いろいろなことに挑戦してきたので、おかげでいい意味でも悪い意味でも勉強になったというか。で、前作「N.E.W.S.」でもう一度ディスコを突き詰めてみたら、その方向性がバッチリはまって。
吉田昇吾(Dr) もともとやってみたかった音楽が、最近になってやってみたらできるようになってた、っていう感じです。
谷川 いろんなタイプの楽曲に挑戦したいっていう気持ちはずっとあるんですけど、4人でできることって、もしかしたらそんなに幅広くないのかもしれないですね。例えば、ライブでやってしっくりくるサウンドっていうのが、この4人でできることなのかな、とか。
アメリカで通用するかしないかで全部判断した
──ロサンゼルスではレコーディングだけでなくライブもやってきたんですよね。反応はどうでしたか?
谷 新曲「Kiss Kiss Kiss」はロスのライブでやったのが初めてだったんですけど、そのときに向こうの人にすごくウケがよくて。
谷川 そうですね。やっぱり最初は「大丈夫かな?」って、すげえ不安でしたけどね。20年近くバンドやってますけど、ホントに初めてステージに立ったときみたいな感覚に戻って。「ここからもう1回スタートできるんじゃないか」みたいな感覚も味わえましたし、すごくいい体験でしたね。
佐藤将文(G) サウンドチェックをしたときに、それまで「ああ、ジャパニーズが来たよ」くらいの雰囲気だったPAさんが、ちょっと演奏したらめっちゃテンション上がって「Wow!!」みたいな感じになって(笑)。音出しが終わったあとも、まだ本番もやってないのに握手しに来たので、「あ、これはいけるな」って思いました。環境の違いとか不安はあったけど、ちゃんといいグルーヴを出せればしっかり反応してくれるんだなってわかりました。
──「Kiss Kiss Kiss」みたいな音楽でアメリカの人から反応がよかったのはうれしいですよね。実際、今回のアルバムは先入観なく聴いたら日本人が作った作品だと気付かない人も多そう。
谷 でも逆にYagiさんは、日本人らしい部分を面白く感じてくれたみたいですね。「Super Collider」みたいなちょっと日本語が混じった歌詞のほうが、アメリカではオリジナリティと捉えられていい評価されると思うよ、みたいに。
──UNCHAINのように英語詞がメインだと、言葉の壁がなくてアメリカで受け入れられやすいかもしれませんね。
谷川 ただ、やっぱりネイティブじゃない僕たち日本人が書く英語詞っていうのは、現地の人が聴くとニュアンスに食い違いが出てくるし、それは僕たちにはどうしてもわからないところなんですよね。例えば渋谷のギャルの言葉がちょっとずつ変化してるみたいに、「意味は合ってても今の人はそんな言い回しはしない」みたいなこともあるので。だから今回は歌詞を書き換えてそういう部分を改善しました。言葉の部分でも世界に通用するものを目指して、現地の方にトレーナーとして付いていただいたんです。Yagiさんからも「もうネイティブにしか聞こえない」ってお墨付きをもらいました。まあ、僕らはネイティブじゃないんでホントかどうか全然わかんないんですけど(笑)。
──「ネイティブに聞こえる歌詞にこだわった」ということは、今回の作品は海外で勝負するために作った部分もあるんですか?
谷川 はい。そのつもりじゃなかったら「Kiss Kiss Kiss」は作れなかったんじゃないかなと思いますね。
──歌詞を書き換えるだけでなく改題した曲もありますよね。タイトルを変えるって、その曲にとってかなり大きなことだと思うんですが。
谷 そうっすよね、普通(笑)。
谷川 もう全部、アメリカで通用するかしないかで判断して、中途半端なことしないでおこうって思って。「Show Me Your Height」はUNCHAINで一番有名な曲なので、ここにきて曲名を変えるのは大きな決断ではあったんですけど、でも「変えちゃえ」って。今後この曲は「Get Ready」という名前でやっていきます。
谷 でもたぶん、ライブとかで間違えて「Show Me Your Height」って言っちゃうと思う(笑)。
次のページ » ロサンゼルスのスタジオはざっくりしてる
- リメイクベストアルバム「10fold」2015年6月17日 / CROWN STONES
- Type-A [CD+DVD] 3700円 / CRCP-40410 / Amazon.co.jp
- Type-B [CD] 3000円 / CRCP-40411 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- Kiss Kiss Kiss
- Super Collider
- Get Ready(ex. Show Me Your Height)
- Tonight's The Night
- My Bicycle
- Come Back To Me
- Movin' My Soul
- Give Me Life(ex. Inspire of life)
- Life Is A Wonder(ex. Life Is Wonder)
- The Sun And Iris(ex. 太陽とイーリス)
Type-A DVD収録内容
- Spin My Head
- "NORTH"
- bb...
- Make it glow
- Lite The Truth
- 少女ジレンマ
- Don't Need Your Love
- The Grounds Of Heaven
- Easy Come, Easy Go
- "WEST"
- Number-One
(2014年11月13日に東京・LIQUIDROOMにて開催の全国ツアー「"N.E.W.S." Release One Man Tour~7th News~」ファイナル公演の模様を収録)
特典映像
- 「Making of 10fold」In Los Angeles
UNCHAIN Debut 10th Anniversary "10fold" Tour 2015
- 2015年10月23日(金)宮城県 enn 2nd
- 2015年10月27日(火)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2015年10月28日(水)広島県 CAVE-BE
- 2015年10月31日(土)東京都 LIQUIDROOM
- 2015年11月6日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2015年11月13日(金)大阪府 BIGCAT
チケット料金:3800円
一般発売日:7月25日
オフィシャルサイトでは6月28日23:00まで先行受付を実施中。
UNCHAIN「10fold」発売記念イベント
- 2015年6月21日(日)東京都 タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース
START 15:00 - 2015年6月27日(土)神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店 イベントスペース
START 17:00 - 2015年6月28日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 12:00 - 2015年7月4日(土)東京都 たまプラーザテラス ゲートプラザ 1Fフェスティバルコート
START 15:00
UNCHAIN(アンチェイン)
京都府京丹後市出身のロックバンド。1996年に中学の同級生だった谷川正憲(Vo, G)、谷浩彰(B)、吉田昇吾(Dr)によって結成される。後に佐藤将文(G)が加入。ジャズ、ブルース、フュージョン、ソウルなど幅広い音楽を独自の解釈で昇華させたグルーヴ感あふれるサウンドや、フロントマン谷川のクリアでソウルフルなボーカルなど、豊かな音楽性が耳の肥えたリスナーから支持を集める。2005年に1stミニアルバム「the space of the sense」が発表されると、無名の新人バンドにもかかわらず好セールスを記録し、その名が一気に全国区へと拡大した。結成当時から英詞にこだわっていたが、よりメッセージを伝えるために2008年リリースの作品から日本語詞を採用。2011年6月発売のアルバム「SUNDOGS」は全曲日本語詞の作品となった。2013年2月に発表したカバーアルバム「Love & Groove Delivery」が大きな反響を呼んでシリーズ化され、2014年2月に第2弾、2015年2月に第3弾をリリース。2015年6月にはデビュー10周年を記念して、過去曲を新たに作り直したリメイクベストアルバム「10fold」を完成させた。