ウルフルズが約2年ぶり、通算15作目となるニューアルバム「ウ!!!」を6月26日にリリースする。
2018年2月に結成時からのメンバーであるウルフルケイスケ(G)がソロ活動に専念するためバンド活動休止を発表し、3人となったウルフルズ。彼らはファンクラブツアーを行い、9月にはバンド主催の野外イベント「ヤッサ2018」を開催した。そしてビクター内のロックレーベル・Getting Betterへと電撃移籍。そのような激動の1年を経て完成させたのが、全10曲の快作「ウ!!!」だ。
3人はいかにして、初期衝動と冒険心、そして「前進あるのみ」の心意気に満ちたこのアルバムを作り上げることができたのか。音楽ナタリーではアルバム完成に至るまでの道のりをたどった3人の言葉を、約1万字のロングインタビューで紹介する。
取材・文 / 内本順一 撮影 / 吉場正和
ヘアメイク / SUGO(LUCK-HAIR) スタイリング / 堀井香苗
サンコンに降りてきた「ウ!!!」
──「ウ!!!」というとても潔いこのアルバムタイトルはどのように付けられたんですか?
トータス松本(Vo, G) サンコンが閃いたんですよ。
サンコンJr.(Dr) 曲順を決める日やったっけ? 最後のほうの工程に差しかかった頃に「ぼちぼちタイトルを決めてください」とスタッフに言われて。じゃあみんなでアイデア出そうってことでスタジオに集まってね。その段階で98%くらいほかのタイトルに決まっていたんですけど。
──それって教えてもらってもいいですか?
サンコン 「1.2.3」という。収録曲のタイトルがアルバムタイトルになることが多かったから、それも「ワンツースリー天国」から取ったんですけど、「1.2.3」って書くと、「イチ・ニ・サン」と読む人もおるやろうし、読みづらいよねという話にもなって。それに対抗できるアイデアが出なかったんだけど、曲順を決めて聴いてみたら、今こそ「ウルフルズ」というタイトルを付けたいという思いが強くなってきたんです。でも「ウルフルズ」は過去の作品にもうあるし、「それに近いタイトルないかな」と思っていたら、これがポーンと降りてきた。「ウ」1文字で、ビックリマークが3つ。意外といいぞと思って、飲みの席で「実はさっき、こんなん思いついたんやけど」って2人に言ったら「いいかも!」となって。
ジョンB(B) うん。「なかなかいいな」と。
サンコン カタカナ1個だけやったらバランス悪いけど、3人ということでビックリマークを3つ付けてね。
──もちろんウルフルズの“ウ”ですけど、声に出すとソウルミュージックのシャウトみたいですもんね。
トータス そうそうそう。ソウルっぽい響きというのも大きかった。
ウルフルズでできることを精一杯やりたいし、それが一番楽しい
──今作は2年ぶりのアルバムになるわけですが、この2年はなかなか激動でしたね。
トータス なかなかの2年間でしたね。
──長いバンドキャリアの中で活動休止も復活もありましたけど、それとはまた別の意味で。
トータス そうですね、ホンマに。ウルフルが2つに分かれたもんね。
──この機会に改めてお聞きしますが、ウルフルケイスケさんからはいつ頃、どのように話があったんですか?
トータス 「人生」を作ってるときですね。50歳も過ぎて、自分もいつまで音楽やれるかわからへんからソロに専念したいってことを言い出して。僕はソロをやるにしてもウルフルズやりながらのほうがええでって言ったんやけど、頑なに「いや、ソロに専念したい」と言うんでね。意志が強かったんで、これはしょうがないなと、そういう感じでしたね。
──そんな話をしながら「人生」を作っていたというのも、まさに“人生”って感じですね。
トータス ホントにそうでしたね。僕にとっては、人生はウルフルズそのものだったりしたんですけど、ケーヤンはちょっと違ったんでしょうね。1回ウルフルズが活動休止したときに、自分でギター担いでソロ活動を始めたじゃないですか。その手応えがだいぶ大きかったんでしょう。それこそ、それが自分の人生になったと思ったんやろな、あの段階で。そのあとウルフルズが復活してまたやり始めたけど、やっぱり自分の中でどうしようもなく大きかったんだと思うんですよ。ソロでやることへの思いが。
──じゃあ、「大人の男の決めたことだから、わかった」と?
トータス いや、何回も話し合いをしたんですけどね。
──引き止めようとは?
トータス だいぶしたけどね。話し合いの中でもそうしたし、サンコンはサシで飲みに行ったりもしたけど、やっぱり意志は固かったですね。
サンコン みんなで集まると言いづらいこともあるやろなって気がしたし、僕も気持ちを知りたかったからね。それでサシで飲んだんですけど、やっぱり意志が固いので。それを無理に引き止めて一緒にやるのもちょっと違うなと僕も思ったしね。じゃあ、今は別々の道を行ったほうがいいかなと。
──3人でウルフルズを続けていくというのは、当たり前の選択だったんですか?
トータス そうですね。もう1回バラけるという発想にはならなかった。僕の中ではやっぱりウルフルズが第一で、ソロで弾き語りしたり、イベントに出させてもらったりするのも、ウルフルズがあってのことなんですよ。だからウルフルズでできることを精一杯やりたいし、それが一番楽しいってことに気付いて復活に至ったわけだから。
──そこはバンド休止から復活までの過程で、一度意思確認をしてるわけですからね。
トータス そう。だから、「じゃあ俺ががんばってギター弾いてみようかな」と思いましたよね。サポートメンバーを入れてやるとかじゃなくて、まずはスリーピースでやってみようと。