音楽ナタリー Power Push - ウルフルズ
絶好調の4人に聞く、活動休止から現在まで
ウルフルズがニューアルバム「ボンツビワイワイ」を完成させた。2014年2月に活動を再開して以降2枚目のアルバムとなる本作は、計10曲トータル34分の痛快作。ウルフルズらしい勢いにあふれた、ユーモラスで熱い1枚となった。
音楽ナタリーでは、このアルバムの発売を記念してメンバー4人にインタビューを実施。新作の成り立ちから、活動休止~現在に至る心境の変化まで、詳しく話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也
歌詞も曲もいいかげんで何も言ってない
──「ボンツビワイワイ」聴かせていただきました。まるで若手バンドの1stアルバムのような勢いのある作品ですね。
トータス松本(Vo) せやね(笑)。去年復活のツアーがあって古い曲もたくさん演奏してたんですけど、昔の曲っちゅうのは「20年ずっと歌い続けられる曲を書くぞ」とか、そんなこと考えて作ってないわけ。ライブハウスでその場が盛り上がればええわと思って書いてるだけやから、歌詞も曲もいいかげんで何も言ってない。だけどやっぱりライブでやると、そういう曲がすごい盛り上がるんです。これなんなんやろなって考えてて、結局音楽っちゅうのはそういうもんなんやな、って思ったんですよね。
──特に初期のウルフルズはシンプルな曲が多かったですよね。
トータス うん、何も言ってなくてもあんだけ喜んでもらえて、こっちも楽しい。次のアルバムはそういう感じでいいんじゃないかと思ったんですよ。(表題曲の)「ボンツビワイワイ」はそのツアーの後半にできた曲で、まさにツアー中の気持ちを反映してるというか。20年くらい前に自分が気楽に書いてたような曲がまた書けたらええなと思って作ったアルバムですね。
──じゃあ、ある意味原点回帰というか。
トータス でも昔よりは絶対バージョンアップしてるし、似たようなことやっててもちょっとずつ違うから。49歳になって、もういろいろ考えててもしゃあないっていうのがどっかでわかってきたんやろうね。
──トータスさんのこのモードを、ほかの皆さんはどういうふうに受け止めたんですか?
ウルフルケイスケ(G) 最初はまだアルバムのことは考えてなかったんやけど、「ボンツビワイワイ」ができたあたりで、なんかこう松本くんのモードとバンドのモードが同じになってきてたんですよ。みんなが同じツアーを過ごしてるし、そのへんは無理なくスッと入ってくる感じで。
サンコンJr.(Dr) 「ボンツビワイワイ」のデモテープを聴いて「次のウルフルズはこんな感じかな」って違和感なく思えたというか。たぶん復活してからずっとやって1年経って、その気持ちのまんまツアーやって、そこで松本くんからそういう曲が出てきてっていう。それが自然な流れやったんやろね、今思うと。
ジョンB(B) 自然にやっただけだけど、ちゃんとウルフルズなりのもんになってるから面白いですよね。
ギックリ腰になったらなったでいいじゃないか
──2曲目の「ロッキン50肩ブギウギックリ腰」は渋いテーマが軽快に歌われています。ケイスケさんはちょうど50歳ですが、この曲はわりとリアルな感じなんですか?
ケイスケ これは相当リアルやね(笑)。
──トータスさんはどういうきっかけで、五十肩とギックリ腰の曲を書こうと思ったんでしょう?
トータス これね、俺が五十肩に悩んでるっていうのと、ニューオーリンズの昔のピアノ弾きの曲で「ロッキン肺炎ブギウギインフルエンザ」って曲があって。「Rockin' Pneumonia and Boogie Woogie Flu」って曲なんやけど、Pneumoniaが肺炎、Fluがインフルエンザのことで。
──その曲に着想を得たと。
トータス 正月にハワイに行ったときにレンタカー借りて運転してたら、なぜかその曲がめっちゃよくかかってたんよ。それが風景と合っててすごく気持ちいいんやけど、そのときのハワイで、家族がギックリ腰になってもうて。
──えっ、大丈夫だったんですか?
トータス もう地獄のハワイ旅行になったんやけど(笑)。そこで災い転じてアイデアが生まれて、これは曲になるなと思ったんですよね。ギックリ腰とか高血圧とかみんな気を付けてるけど、気を付けたって何したってなるときはなる。なったらなったで、それはそれでいいじゃないか!っていう歌を作ろうと思って。
──ウルフルズにしかやれない曲だと思います(笑)。
トータス なんちゅうのかな、それこそ昔ライブハウスでやってた頃とかって無駄な動きが多くて、歌ってる最中に横っ腹がすげえ痛くなったりとかして。でも痛いけど「ちょっと待った! 横っ腹が!」って言うわけにはいかんからね。気付かれないように歌ってやり過ごしてたの。でも今なら、もし万が一どっか痛くなったとしても「いてててて! 今すっげえ足痛い!」ってもうマイク通して言えるくらいには図々しくなってる。
ケイスケ うん、人生半分くらい終わってだいぶシンプルになってるよね(笑)。この曲もメッセージはなくてすごくシンプル。やっぱり気持ちいいのはこういうことなんやろなっていうのは思いますね。
──今の話を聞いて思ったんですけど、若い頃のウルフルズってカッコつけてましたよね。
トータス うんうん、すごくカッコつけてた。カッコよく見えへんのにね。
一同 あははは(笑)。
トータス カッコよく見せたくてツッパってたしね。今見ると顔つきがもう全然違う。ものすごくとがった顔してるんですよ。
──今はカッコつけたいという気持ちはなくなりました?
トータス なくなったかもねえ。いや、まだどっかにはちょっとあるかな。完全になくなったら最高やなっていつも思うけどね。
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- ニューアルバム「ボンツビワイワイ」 / 2015年9月9日発売 / 2916円 / Warner Music Japan / WPCL-12233
- 「ボンツビワイワイ」
- Amazon.co.jp限定盤 [CD+ステッカー]
- 通常盤 [CD]
収録曲
- ボンツビワイワイ
- ロッキン50肩ブギウギックリ腰
- チャリダー
- クラッター
- チークタイム
- スポーティパーティ
- テクテク
- ステキだね
- 愛すれば
- ウルフルシャッフル
ウルフルズ
トータス松本(Vo)、ウルフルケイスケ(G)、ジョンB(B)、サンコンJr.(Dr)からなる4人組ロックバンド。1988年に大阪で結成。1992年5月にシングル「やぶれかぶれ」でメジャーデビュー。1995年発売のシングル「ガッツだぜ!!」が注目を集め、翌1996年にリリースした3rdアルバム「バンザイ」が100万枚を超える大ヒットを記録する。その後も「明日があるさ」「ええねん」など数多くのヒット曲を発表するが、2009年8月のライブを最後に活動休止。2014年2月に約4年半の沈黙を破り再始動を果たす。2015年9月に13thアルバム「ボンツビワイワイ」をリリース。