音楽ナタリー Power Push - 上杉周大
北海道の人気者、ソロでポップスに挑戦
THE TON-UP MOTORSのボーカリスト・上杉周大がソロアルバム「You Are The MAN!!」を11月11日にリリースした。
結成15周年を迎えても精力的にバンド活動を続ける傍ら、STVほかでオンエア中のバラエティ番組「ブギウギ専務」出演や、エステー株式会社「脱臭炭」全国放送CMの出演が決定するなど、タレントとしても活躍する上杉。彼が初のソロアルバムを完成させた。ソロアルバムを作った理由や「ポップス」をテーマにしたという今作について、上杉本人に話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 佐藤類
お茶の間に届くポップスを
──まず今回ソロアルバムを出すことになった経緯を教えてください。
スタッフから「上杉周大個人としての可能性を改めて見てみたい」っていう話をもらったのがきっかけです。でも僕はずっとバンドをやってきたし、自分はバンドマンだという気持ちが強くて葛藤はすごくあったんですけど、スタッフの期待にも応えたいという思いもあって。それでメンバー1人ひとりに会って相談をしたんですよ。もし1人でも「嫌だ」と言ったら辞めようと思ってたんですけど、みんな「がんばれ」って言ってくれたんで決心がつきました。バンドも今年で15周年という節目でもあるので、原点に立ち返って音楽に向き合うのもいいかなと。
──原点に立ち返って音楽と向き合うとは?
今までは、ソウルロックとかTHE TON-UP MOTORSのサウンドのイメージとかを考えて曲を作ってきたんですけど、そういうのを一切排除して、純粋に好きなこととか、今思い付いて今やってみたいことをやろうと。ソロである以上バンドでできないことをやっていかないとメンバーにも失礼になるだろうし。
──今やってみたいこととはどういう音楽なのでしょうか?
北海道でタレント業をしているので、ありがたいことにお子さんから年配の方まで自分たちの音楽をキャッチしてくれる層の幅がすごく広い気がしていて。ただバンドではゴリゴリのロックをやっているので、テレビを観て「あ、この人バンドやってるんだ。面白そうだから観に行こう」って思って実際に来てくれた方の中には、「いいのはわかるけど、ちょっと入りにくいなあ」って感じた方もいらっしゃったんじゃないかなと思うんですよ。なのでソロではそういう人にも気に入ってもらえる音楽をやりたいなと思ったんです。じゃあ幅広い層の方に気に入ってもらえる音楽ってなんだろうと思ったら、それがいわゆる「ポップス」なんじゃないかなと。そこで今回はポップスとは何か?を突き詰めながら作っていきました。入りやすく、マニアックにならないように。湯浅(篤)さんにプロデュースを担当してもらったんですけど、「これマニアックな方向に行きすぎてないですか?」って確認しながら進めてました。
──湯浅さんはいきものがかりやYUKIなどを手がけてきたJ-POPのプロデューサーですね。
「ファイターズ讃歌」のときに一緒にお仕事させていただいたのがきっかけだったんですけど、ポップスをテーマに作っていくって決めたときに、湯浅さんと一緒にやらせてもらうのがいいんじゃないかなと。僕、譜面ってほぼ書けないので、ホーンとかストリングスのフレーズを口で伝えて。そうすると湯浅さんはそれを真摯にキャッチして譜面に起こしてくださったりして。あとはポップスって歌がどういうふうに生きるかっていうのが重要なポイントだと思うんですけど、今まで自分では気付かなかった音の重なり……歌のおいしいところに別の音が当たってるとか、そういうことを指摘してくださって。すごく勉強になりました。
──歌詞については、バンドの曲と違いはありました?
バンドではわりとメッセージ性の強い曲を歌ってるんですけど、今回は聴きやすいものに、というのを意識していたので、メッセージが強くなりすぎないようにというのは意識しましたね。とはいえ、できあがったものを聴いたらけっこうメッセージが前面に出てるなとは思ったんですけど。自分が好きだった音楽がそういうものだったのかもしれないですね。
──好きだった音楽とは?
子供のときにThe Beatlesの2枚組の赤盤・青盤っていうのが出て、兄貴の影響でそれを聴き始めて。そこから洋楽を聴くようになり、ブルースにたどり着きました。ブルースって日々の生活の中の陰鬱とした部分を歌にして、それをみんなで分かち合うことで前向きになっていくんですよね。だからそういうメッセージ性の強いものがずっと好きです。
制約のある中でのびのびと生きる姿を肯定したい
──ではここから収録曲について伺っていきたいと思います。まず1曲目「イエス!ソウルミュージック」。この曲は上杉さんらしい、明るくて力強いナンバーです。
そうですね。僕が好きだったり、いろんなタイミングで助けられてきたものがソウルミュージックだという気がして、僕も目の前にいる“あなた”のためにソウルミュージックを歌って、笑顔にさせたり心をあったかくさせられたらと思っています。ただ“あなた”というのは僕にとっては目の前のあなたですけど、聴いてる人の大切な人だったり、いろんな人に当てはめてもらえれば。この曲では、日々の日常や何気ない平穏な暮らしといった幸せに感じられるものがずっと続いてくことを歌おうと思いました。
──タイトルもわかりやすくていいですよね。
本当は「イエス」と「ソウルミュージック」っていう好きなワードを入れただけなんです。今ってTPOだのコンプライアンスだの、とにかく制約の多い世の中になってる気がするんですよ。そういう中でもみんながのびのびと生きていけたらいいなあと思っていて。アルバムには「もっとシンプルに! それでいいんだ!」というニュアンスの前向きなタイトルを付けたくて。だからそういう「お前最高だぜ!」という意味のスラング「You Are The MAN!!」をアルバムタイトルにしたんですよ。「イエス!ソウルミュージック」も同じように、肯定して背中を押す意味を込めました。
──2曲目「ハートビート」はシティポップっぽさのあるさわやかなナンバーですね。
この曲は、何か1つの言葉をテーマに曲を書いてみようと思って、「心」をテーマに歌詞を作り始めました。
──テーマを持って書いてみようと思ったのはなぜですか?
このアルバムでは1曲ずつテーマを持たせられたらなと思っていて。じゃあこの曲では何か1つの言葉や漢字をテーマにしてみようと。最初は「茶」とか「緑」とか色で作ってみようと思ったんですけど、結局「心」が一番書きやすかった。
──サウンドも「心」をイメージしたんですか?
いや、なんとなく曲が先にできていて。さわやかで透明感のある感じだったんですけど、歌詞でも「透明で」と歌っているので、不思議とマッチしました。あと曲の頭のほうで「ドンドン」「ドドッドドッ」ってドラムのキックの音が入るんですけど、ハートビート……鼓動の音をイメージして入れました。この曲は朝に聴いたら気持ちいいんじゃないかな。
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- ソロアルバム「You Are The MAN!!」2015年11月11日発売 / VAP
- 初回限定盤[CD+DVD]2700円 / VPCC-80676
- 通常盤[CD]2160円 / VPCC-81853
CD収録曲
- イエス!ソウルミュージック
- ハートビート
- サマーデイズ
- 銀のピストル
- ライク・ザ・リヴァ―
- ファイターズ讃歌
- 虹と雪のバラード
- 優しさも捨てているんだぜ
DVD収録内容
- 「イエス!ソウルミュージック」MV
- 「ファイターズ讃歌」MV
- 特典映像
THE TON-UP MOTORS 15th ANNIVERSARY ワンマンショウ 俺とあんたのソウル物語
- 2015年11月22日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 16:00 / START 17:00 - 2015年12月6日(日)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
OPEN 16:00 / START 17:00
上杉周大(ウエスギシュウタ)
1982年2月11日生まれ、北海道出身。2000年に北海道札幌市で結成されたソウルロックバンド・THE TON-UP MOTORSのボーカル。バラエティ番組「ブギウギ専務」(STV)で主役を務めて人気を博し、ラジオのパーソナリティやテレビCM出演など、幅広く活躍している。バンドとしても全国各地のライブハウスでの公演のほか、野外音楽イベントや学園祭などに多数出演。2013年12月発売のニューアルバム「THE TON-UP MOTORS」でバップよりメジャーデビューを果たした。さらに2014年には北海道日本ハムファイターズの応援歌「ファイターズ讃歌」の3代目ボーカリストに起用される。そして 2015年11月に初のソロアルバム「You Are The MAN!!」をリリースした。