音楽ナタリー Power Push - 上坂すみれ

“三曲三様”の歌声で魅せる すみぺワールド

テルミンのソロを弾いてみたい

──そして3曲目が、街角マチオさんが作詞作曲、元アーバンアンギャルドの谷地村啓さんがアレンジした「文豪でGO!」です。これ、言ってしまえばザ・プーチンズですよね。

上坂すみれ

確かにそうですね。

──でもしっかりと上坂さんの楽曲として成立している。それは何かって考えたときに、やっぱり上坂さんの声だと思うんですよね。

へえー。

──すごい他人事みたい(笑)。

いや、そこまで考えられてなかったので(笑)。

──自ずとフィルターを通ってしまったという感じ?

マチオさんが歌ってたデモがまさしくプーチンズだったので、あのダウナーな感じの歌い方を真似したら、「もうちょっと弾けてください」とディレクションをしていただきまして。

──それを楽曲のあのテンションまで上げる作業ってどうでした? 上坂さん、言ってしまえばそこまでのキャラの人ではないじゃないですか。

でも「レッツゴー!」って言ってるけど内容があまりレッツゴーしてないというか、空元気なので。それだったらいけるかなって。

──なるほど。歌詞についてはいかがですか? 高瀬舟だの山椒大夫だの一見すると難しげな単語並べてますけど、実はただの作品名っていう(笑)。

そうなんですよ、ただ言ってるだけっていうところがミソなんですよね。それこそWikipediaの1段落目くらいの知識だけでまかなえるレベルで。これがすごい作り込まれた歌詞だったら歌いにくいと思いますし、文豪の“豪”と“GO”をかけるようなこの単純明解さとユルめの演奏がいい雰囲気なんだと思います。

──確かにアガる四つ打ちのダンスミュージックのはずなんですけど、どこかユルいですよね。デモが届いたときってどうでした?

上坂すみれ

あんまり自分が歌ったことのないジャンルだったから、どうしたらいい感じになるんだろうと思いました。

──あと街角マチコさんのテルミンが入ってますよね。

間奏部分のテルミン、すごくカッコいいんですよ! あそこだけ哀愁漂う感じで、曲中で唯一正気を保っているというか。あそこの音源だけほしいくらい(笑)。私もテルミンのソロ弾いてみたいですね。

──あ、それいいじゃないですか。それこそ12月23日には両国国技館ライブもあることですし。

途中でステージにテルミンが出てきて「文豪でGO!」が始まるっていいですね。

──テルミンが出てきた瞬間に会場が沸きますよ。実際に購入を検討してるとか?

ネットでいろいろ見てたんですがなかなか購入に踏み切れなくて。実際に店舗に行かなくちゃって思ってます。

目標はないけどやる気はある

──今作って3曲入りで趣味に寄せた作家さんを集めたっていう意味では、「Inner Urge」よりも前、「閻魔大王に訊いてごらん」や「来たれ!暁の同志」、「パララックス・ビュー」みたいに、けっこうスタンダードなスタイルの上坂すみれのシングルになりましたね。つまり、アニソンという枠組みを使いつつ、面白おかしいことをカッコよくやってしまうという。

そうですね。いろんな種類の声優仕事やそれ以外のお仕事もやらせていただいてる中で、こういう自分のホームっぽい、趣味が表れているものが出るっていうのは安心感がありますね。2013年にデビューして、新人というよりは若手みたいな、ちょっと進んだところにあたるこの時期に今まで通りの曲を出すということは何かの意味があるような気がします。このシングルの発売を記念して期間限定でInstagramを始めたんですけど、そこで私を知った方もいっぱいいらっしゃると思うので、そういう初めましての人に名刺みたいな1枚になるといいのかなと思います。

──Instagramや「Number」みたいな雑誌で上坂さんを知った人が興味を持ってアクセスするのがこのシングルっていうのは、上坂さんの自己紹介としてはわかりやすいですね。

上坂すみれ

はい。

──それにしても「Number」みたいな専門誌から声が掛かるってすごいことですよね。

なんか自信がつきますねそれは。がんばろー!

──あははは!(笑) 締めの言葉はそれでいいですか? 今年も下半期に入っていてあと5カ月。残りの目標は「がんばろー」。

ちょっと! 今の言い方、その言い方がよくないです! 私、そんなやる気がないわけじゃありませんよ。やる気はちゃんとありますし、新しいアンテナを張って趣味を模索したり……。

──いやいや、やる気がないとは思ってないですよ。“前へ前へ”ってガツガツいくタイプじゃないけど、来たものに対しては100%の力で打ち返してるんだろうなって思います。それに、ヘヴィメタルという趣味がメタル雑誌「ヘドバン」での鈴木研一さん(人間椅子)との対談、プロレスという趣味が「Number」でのインタビューへとつながってるわけですから。

そうです。だから、目標はないけど……やる気は、あります。

──年末にかけてやりたいことはないけど、やる気はある。

目標があると、やる気を1点に集中してしまうから、そのやる気をちょっとずつ分けているんです。8月の「Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-」にプラズマジカとして参加し、その後10月に「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」に出演して、12月の国技館をまっとうします。

──さいたまスーパーアリーナで2公演に両国国技館と、これから大規模な会場でのライブ続きますね。

そうなんです。健康だけでいいです、目標は。3つもライブがあるなんてヤバいですよ。しかもアリーナ、アリーナ、国技館なんて……超アーティストみたい。

──超アーティストなんですよ、だから(笑)。

超アーティスト、ですね。ちゃんと声帯を大事にして、健やかに暮らしていきたいと思います。

上坂すみれ
ニューシングル「恋する図形(cubic futurismo)」2016年8月3日発売 / KING RECORDS
期間限定盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91705
通常盤 [CD] 1404円 / KICM-1705
CD収録曲
  1. 恋する図形(cubic futurismo)
  2. ♡をつければかわいかろう
  3. 文豪でGO!
  4. 恋する図形(cubic futurismo)-off vocal-
  5. ♡をつければかわいかろう-off vocal-
  6. 文豪でGO!-off vocal-
期間限定盤DVD収録内容
  • 恋する図形(cubic futurismo)MUSIC VIDEO
ライブ情報
Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-
  • 2016年8月26日(金)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年8月27日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年8月28日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • ※上坂すみれは8月27日にプラズマジカとして出演
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story
  • 2016年9月3日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2016年9月4日(日)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2016年10月15日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年10月16日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • ※上坂すみれは10月16日に出演
上坂すみれのひとり相撲2016 ~サイケデリック巡業~
  • 2016年12月23日(金・祝)東京都 両国国技館
上坂すみれ(ウエサカスミレ)
上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、注目作に出演する一方でメディアやイベントなどを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。その後も桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースし、2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表する。同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」を、12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」と自薦の80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」を発売した。2016年1月には丸2年ぶりとなる2ndフルアルバム「20世紀の逆襲」を、同年8月に7thシングル「恋する図形(cubic futurismo)」をリリース。12月には東京・両国国技館でワンマンライブを実施する。