音楽ナタリー Power Push - 上坂すみれ

“三曲三様”の歌声で魅せる すみぺワールド

上坂すみれがニューシングル「恋する図形(cubic futurismo)」をリリースした。

表題曲はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが作詞作曲および編曲したテクノポップで、上坂自身も出演しているテレビアニメ「この美術部には問題がある!」のエンディングテーマ。カップリングにはMOSAIC.WAV提供の電波ソング「♡をつければかわいかろう」と、街角マチオ(ザ・プーチンズ)が作詞作曲を手がけた「文豪でGO!」が収録される。

2013年の歌手デビューから3年が過ぎた今も、趣味性のあふれる個性的な作品を発表している上坂。本人曰く“新人ではなく若手”になった彼女に、今作の聴きどころや今後の目標を聞いた。

取材 / 成松哲 文 / 丸澤嘉明 撮影 / 塚原孝顕
スタイリング / 佐野夏水 ヘアメイク / 加藤ゆい(fringe)

いつかTECHNOBOYSさんにお願いできたらと思っていたら……

──前回「20世紀の逆襲」のリリースタイミングで上坂さんにインタビューさせていただいたときに、リック・アストリーを聴いてるって言っていたので、もしかしたら1980年代回帰をするのではと思っていて(参照:上坂すみれ「20世紀の逆襲」特集 ロングインタビュー)。

上坂すみれ

言ってましたね。でも今はあんまり聴いてなくて、Kajagoogooを聴いてます。

──あ、移ったんですね。しかもちょっと遡りましたね。で、Kajagoogooでもなければリック・アストリーでもないんですけど、今回の「恋する図形(cubic futurismo)」はけっこうド直球に80年代テクノポップで来ましたね。

はい。でもこれは楽曲を書いてくださったTECHNOBOYS(PULCRAFT GREEN-FUND)さんの持ち味といいますか。

──上坂さんは普段から楽曲制作に携わるわけではないけれど、今回も「こういうサウンドでこういうことを歌いたいです」とリクエストすることもなく?

ちょうどこの曲を作るときにTECHNOBOYSさんがアニメに提供した曲をよく聴いてたんです。「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」の挿入歌を聴いていいなと思っていて、いつかTECHNOBOYSさんにお願いできたらいいなと言っていました。また、これはあとで知ったんですけど「トリニティセブン」のエンディングテーマ「BEAUTIFUL≒SENTENCE」もよく聴いていて。それで、いつかお願いできたらと言っていたら、そのいつかがもう来た、みたいな感じです。

──別にいつかと言わず「次はTECHNOBOYSさんとやりたいです」って言ってもいいじゃないですか(笑)。

いや、この曲は「この美術部には問題がある!」のエンディングテーマですからアニメに合うかどうか、ということもあるかと思いますし。なので、アルバムをいつかまた作るとしたらそのときでもいいし、いつか叶ったらいいなと思っていました。

──上がってきたトラックを聴いていかがでした? TECHNOBOYSさんらしいと言えばらしいですけど、「コンクリート・レボルティオ」のときとも違うし「トリニティセブン」の一連のエンディングテーマとも違いますよね。

なんて言うか、アニソンとはまた違う感じがしましたね。でも、私に曲を提供いただくときは自由研究みたいなものだと思っていただいてよいので、とてもよい曲だなと思いました。

上坂すみれ

──確かにいわゆるアニソンっぽくもないし、ダンスミュージックではあるんだけど、いい意味でひねくれてますよね。リズムも4拍子なんだけど取りにくいし、いかにも80年代テクノポップ、ニューウェーブ的なひねくれ方というか。

そうですね。ちっちゃいライブハウスでうつむいて歌う感じの雰囲気があります。

意味がある感じでは歌っていない

──今、自由研究とおっしゃいましたけど、そういうサウンドの実験場というか、“上坂すみれへの提供曲は好きなことをやってよい”と思わせる感じってありますよね。それを上坂さんも認識されているということだと思うんですけど、そういう状況になってるのってご自身的にはどうですか?

それはとてもいいと思います。……目立ちますし(笑)。いや、目立たなくてもいいんですけど、普段あんなにアニソンを作ってる方も、たまにはこういう曲も作りたいよねって。それで楽しく作っていただけたならいいと思いますし、私もこういう感じのほうが馴染みがあります。

──テンポ感もアニソン界隈で見ると珍しいですよね。BPM150超えのアッパーな曲かバラードが目立つ中で、意外とミディアムテンポの曲って。

あー言われてみると少ないですね。じゃあ目立っていいのかな(笑)。

──歌詞はいかがでした?

アバンギャルドな世界観なのでわかるといえばわかるし、わからないといえばわからないという感じなんですけど、好きですね。聴いてる人は歌詞の意味ではなく全体の雰囲気を聴く感じになると思うんですが。でもテクノポップってそういうものだと思うのでいいと思います。私もあんまり意味があるようには歌っていないので、音を楽しんでもらえたらと思いますね。

──その意味があるようには歌ってないって話なんですが、日本語の場合、単語単語に意味があるから、口に出して読めばある程度意味は伝わるじゃないですか。それなのに今回の上坂さんは意味を持たせないことに成功している。けっこう無機質に歌ってらっしゃいますけど、これ実はかなり難しい作業ですよね。そのボーカルスタイルって、どうやって身に付けました?

上坂すみれ

えっ? なんでしょう……。ジューシィ・フルーツとか、おしゃれテレビとか、そんな雰囲気だとは思いました。あの2組は、意味がある歌詞もいっぱいありますけど、歌い方はそんなに情念がこもってる感じでもない。軽い感じというか、“どこ吹く風っぽさ”があるといいますか。そういう歌い方のほうがこの曲に合うかなと思いました。

──上坂さんは以前、ピッチとリズムは外さないっていうところまで自分で仕上げていって、あとはレコーディングスタジオに入って、スタッフの方と打ち合わせをして歌うと言ってましたよね(参照:上坂すみれ「Inner Urge」インタビュー)。今回は「ジューシィ・フルーツやおしゃれテレビみたいに歌う」って、けっこう具体的なイメージを持ってレコーディングに臨んだんですか?

はい。得意というか、好きな分野だから何か考えたかったんだと思います。オジー(・オズボーン)っぽく歌うとかはできませんけど、ジューシィ・フルーツもおしゃれテレビも女性ボーカルだから性別は同じだし、この曲は技術より雰囲気重視みたいなところがあるので、がんばれば近づけるんじゃないかなと思ってレコーディングに臨みました。

ニューシングル「恋する図形(cubic futurismo)」2016年8月3日発売 / KING RECORDS
期間限定盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91705
通常盤 [CD] 1404円 / KICM-1705
CD収録曲
  1. 恋する図形(cubic futurismo)
  2. ♡をつければかわいかろう
  3. 文豪でGO!
  4. 恋する図形(cubic futurismo)-off vocal-
  5. ♡をつければかわいかろう-off vocal-
  6. 文豪でGO!-off vocal-
期間限定盤DVD収録内容
  • 恋する図形(cubic futurismo)MUSIC VIDEO
ライブ情報
Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-
  • 2016年8月26日(金)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年8月27日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年8月28日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • ※上坂すみれは8月27日にプラズマジカとして出演
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story
  • 2016年9月3日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2016年9月4日(日)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2016年10月15日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年10月16日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • ※上坂すみれは10月16日に出演
上坂すみれのひとり相撲2016 ~サイケデリック巡業~
  • 2016年12月23日(金・祝)東京都 両国国技館
上坂すみれ(ウエサカスミレ)
上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、注目作に出演する一方でメディアやイベントなどを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。その後も桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースし、2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表する。同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」を、12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」と自薦の80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」を発売した。2016年1月には丸2年ぶりとなる2ndフルアルバム「20世紀の逆襲」を、同年8月に7thシングル「恋する図形(cubic futurismo)」をリリース。12月には東京・両国国技館でワンマンライブを実施する。