音楽ナタリー Power Push - 上坂すみれ

“革ブロ”リブート前夜に放つ キラキラ&キワキワのディスコチューン

上坂すみれのニューシングル「Inner Urge」がリリースされた。

上坂は2013年のアーティストデビュー時、自身と“同志”ことファンの一群の組織「革命的ブロードウェイ主義者同盟」(革ブロ)を結成。ファンクラブのような公式の組織ではないものの以降の自身の音楽活動を革ブロの活動と位置付け、ハイペースに音源をリリースし、“決起集会”と銘打たれたライブイベントを展開してきた。ところが今作「Inner Urge」は、2015年2月に東京・中野サンプラザホールで開催された「第二回革ブロ総決起集会 -ファイナル-」から5カ月、2014年12月の前作「閻魔大王に訊いてごらん」から7カ月、上坂と革ブロとしては少々“お久しぶり”に発表される音源となる。

シングル表題曲は現在放送中のテレビアニメ「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」のエンディングテーマ。橋本由香利アレンジによるド派手なビートに乗せて、アニメにも登場する際どい単語を連発するダンスナンバーに仕上がっている。この刺激的な楽曲を携えて上坂と同志はどこに向かうのか? 楽曲の聴きどころとともに、今後の音楽活動の展望を聞いた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 上山陽介
スタイリング / 佐野夏水 ヘアメイク / 小菅美穂子(Sweets)
衣装協力 / RoseMarie seoir

すみぺと同志はモラトリアム

──2013年のデビューから今年2月の総決起集会(参照:上坂すみれ、今年は“聖地”で早合点に泣きかけてネットニュースに警戒する)まで上坂さんは“革ブロ”の名のもとにけっこうなペースで音楽活動を展開してきていたんですけど、その総決起集会から今回の「Inner Urge」リリースまでにはちょっと間が空きましたよね。

はい。

──今後、上坂さんと同志諸君はどうなるんでしょう?

上坂すみれ

どうなるんでしょう? 私、今、横山三国志(横山光輝のマンガ版「三国志」)を読んでいて、どうしても三国志ネタを使いたいんですけど……。

──では三国志を例にお答えください(笑)。

今は私と同志諸君の物語的にはちょうど黄巾賊が滅んだくらいの時期ですね。

──黄巾賊討伐って序盤も序盤ですよね。まだ三国時代は到来していない?

今は革ブロという名の黄巾賊の勢力が一旦落ち着いたばかり。「さあ、次は何が出てくるのかな?」「さあ、これからどうしよう?」っていうところです。言ってしまえばモラトリアムです(笑)。

──そう考えると今回の「Inner Urge」ってパンチが効いてますよね。攻めっ気の強いキラッキラのダンスミュージックを叩き込むあたり、あまりモラトリアムっぽくはないというか。

確かに(笑)。でも、このメロディとアレンジはすごく好きです。ちょっと懐かしくもあるし、踊れるしって感じが「スペースコブラ」の主題歌(前野曜子「コブラ」)とか、ハロプロの最初の頃の曲とか、あと黒人ボーカルのディスコもの……例えばドナ・サマーとか、ああいう曲を思い出させてくれるので。

愉快に楽しく歌ってみよう

──ドラム、ベース、ギターっていうバンドサウンドを基調にしつつ派手なシンセやブラスが重なる、1970~80年代ディスコのオマージュ的な楽曲ですよね。

幼い頃、父がクルマの中で流していたドナ・サマーのベストをずっと聴いていたこともあって「Inner Urge」のような音には馴染みがありましたし。おかげでデモをいただいたときに「こんな曲聴いたことない!」って身構えることはなかったです。

──実際すごくスムーズというか、朗々と、しかもコミカルで楽しげに歌っています。

上坂すみれ

「閻魔大王に訊いてごらん」のときはいかにカッコよく歌うかっていうことで、いろいろ考えるところもあったんですけど(参照:上坂すみれ「閻魔大王に訊いてごらん」&「80年代アイドル歌謡決定盤」インタビュー)、今回は「アニソンを歌えばいいんだ」っていう気がしたので。「閻魔大王」もアニソンなんですけど「Inner Urge」はもっと“テレビマンガ”的な感じがします。カッコいい曲調に乗せて、みんなで力強く作品に関するキーワードを連呼する系の1970年代のアニソンっぽいな、と思いながら歌いました。

──その「みんなで歌うこと」って意識しました? 「S・O・X」を連呼したり、「わぉ!!」「あは~ん!!!」と合いの手が入ったりすることだし、ライブでシンガロングやコール&レスポンスをすることを想定して、シンプルに伝わりやすく歌ってみよう、とか。

よく「歌うときに心がけたことは?」って聞かれるんですが、いつも上手に答えられなくて……。今回に限らず、あまり意図とか狙いはないんです。例えばこの曲であれば私が考えたことは「にぎやかだしセリフっぽいフレーズもあるから、愉快に楽しく歌ってみよう」っていうことくらいで。そうすればあとはスタッフの皆さんがいい感じに仕上げてくれるんじゃないかなって(笑)。

ニューシングル「Inner Urge」 / 2015年7月22日発売 / STARCHILD
初回限定盤 [CD+DVD] / 1836円 / KICM-91617
「Inner Urge」初回限定盤
通常盤 [CD] / 1296円 / KICM-1617
アニメ盤 [CD] / 1620円 / KICM-91618
初回限定盤、通常盤CD収録曲
  1. Inner Urge
    [作詞・作曲:松浦勇気 / 編曲:橋本由香利]
  2. ツワモノドモガ ユメノアト
    [作詞:椎名可憐 / 作曲・編曲:牧元芳朗(strip)]
  3. Inner Urge off vocal ver.
  4. ツワモノドモガ ユメノアト off vocal ver.
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Inner Urge」PV
アニメ盤収録曲
  1. Inner Urge
  2. ツワモノドモガ ユメノアト
  3. Inner Urge off vocal ver.
  4. Inner Urge TV size mix
上坂すみれ(ウエサカスミレ)

上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、注目作に出演する一方でメディアやイベントなどを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。その後も桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースし、2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表する。また同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」を、12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」と自薦の80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」を発売。そして2015年7月、約7カ月ぶりとなるシングル「Inner Urge」をリリースした。