音楽ナタリー PowerPush - 上坂すみれ
ヘヴィメタルと80'sアイドル すみぺが魅せる2つの顔
今もっとも熱いアイドルはレモンエンジェル!
──そのあとには先輩声優である櫻井智さんも在籍していたレモンエンジェルの「東京ローズ'88」が続きます。
レモンエンジェルは、今、私の中でもっとも熱いアイドルなので!
──タイトルの通り、1988年の曲ですよ(笑)。そして2014年ももう終わろうとしてますよ。
「声優グランプリ」のライターさんがすごくオススメしていたのでベスト盤を買って聴いてみたんですけど「これはヤバいぞ!」ってなっちゃって(笑)。その中でも語りの入っているこの曲を選んでみました。「ハートにちゃんとダビングしてね」って言われても、ダビングなんてもう誰もしてないしなあ、って。
──今ならリッピングかダウンロードでしょうね(笑)。
でもすごくダンサブルなテクノ歌謡に乗せて「ダビング」って言っちゃう感じがステキなんですよね。この曲から岩井小百合さんの「パラレルガール」あたりまではテクノ歌謡ゾーンですね。
──このゾーンの曲についても特に付帯情報による重み付けはしていない? というのもキララとウララのアルバムには細野晴臣さんが参加していたりするし、「夢・不思議いかが」はEPOさんが作詞・作曲している。で「パラレルガール」の作詞はマンガ家のとり・みきさんですよね。
以前、ゲームミュージックのお話をしたときにも言ったことなんですけど、曲を聴くときクレジットってほとんど調べないんですよ(参照:上坂すみれ「げんし、女子は、たいようだった。」インタビュー)。今回作り手で選んだのは高見知佳さんの「怒涛の恋愛」と……。
──戸川純さん作詞、矢野顕子さん作曲、戸田誠司さん編曲ですもんね。
山瀬まみさんの「I WANT YOU」だけですね。ピアノをエディさん(三柴理)が弾いていて、ギターと編曲が横関敦さんなので。
──じゃあテクノ歌謡ゾーンも純粋に曲の好き嫌いで選んだ?
はい。正統派テクノ歌謡の「夢・不思議いかが」から、かなり不思議な「へんネ!」「パラレルガール」につないで盛り上がりを作ってみた感じですね。
やりすぎた感のあるコンピを締めくくるもの
──実はその次の倉田まり子「ストーミー・ウェザー」ってこのコンピのキモになる曲だと思っていて。ストレンジなテクノ歌謡のあとにスタイリッシュな和モノディスコが飛び込んでくるから本当にビックリしました。
徹夜した甲斐がありました(笑)。ここで一旦休憩というか、場面転換したかったので。生バンドっぽい曲なので、さっきお話した選曲の基準からはちょっと外れるんですけど、だからこそいいブレイクになるかなって。「姫様ズーム・イン」からはちょっとシリアスで大人っぽい展開になりますから。
──そうですね。ここからは一転。アイドルというよりボーカリストというスタンスで活動していた森川美穂さんや彩恵津子さんの楽曲や、林哲司さんのメロディとアレンジで魅せる「Starlight Movement」が続きますし。しかもそのあとには「もっと接近しましょ」「50/50」という……。
やっぱり大人っぽいディスコゾーンがあって、松谷祐子さんがカッコよく歌う「愛はブーメラン」につながっていって。この曲はアイドルソングというよりはアニソンではあるんですけど、やっぱり好きなので。
──確かにこの曲は映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」のテーマソングだし、上坂さんが好きなのもわかるんですけど、松谷さんはもっと有名な「ラムのラブソング」も歌ってますよね。
デジタルリマスター音源が欲しかったのはこっちの曲だったので(笑)。
──了解です(笑)。そして終盤「夢心中 ~MY DESIRE~」からは……。
大変なことになってます(笑)。
──なかにし礼作詞、宇崎竜童作曲の「夢心中」から「I WANT YOU」「怒濤の恋愛」と大ネタを連発しましたよね(笑)。「I WANT YOU」や「怒濤の恋愛」って山瀬さんや高見さんのディスコグラフィを掘っていたら、筋肉少女帯関連楽曲、戸川純関連楽曲に行き着いた感じなんですか? それとも逆?
「怒濤の恋愛」は、高見さんのベスト盤の中でもずば抜けて好きなのがこの曲だったからクレジットを調べてみたら、戸川さんが詞を書いていたって感じなんですけど、「I WANT YOU」は作家さんきっかけですね。山瀬さんがニュース番組でワイドショーの解説をなさっていたり、「新婚さんいらっしゃい!」に出ていらっしゃるのはもちろん知っているんですけど、実はこの曲を聴くまで音楽活動をしていたことを知らなくて……。筋少について調べていたとき、エディさんと横関さんが山瀬さんのアルバム(1989年の「親指姫」)に参加なさっていることを知って、聴いてみたら歌はお上手だし、曲はカッコいいし、とにかく素晴らしかったので入れてみました。
──そしてカバーを除けば、ラストナンバーは森口博子「水の星へ愛を込めて」。ニール・セダカ作曲の“普通にいい曲”をもってきましたね。
本当は「機動戦士Ζガンダム」のオープニングテーマなんですけど、なんかエンディングっぽいかなと思って。ここまで若干やりすぎた感があるので、最後はちゃんとしてみたかったんです(笑)。ここまで聴いてくれた皆さんに最後に安らかな気持ちになってもらいたかったので、この曲にしてみました。
“めろ坂みみみ”、最初で最後のレコーディングに臨む
──確かにクラブのアフターアワーズ的というか、聴いていてものすごく優しい気持ちになれますよね。で、上坂さんはさっきからなぜか「最後」「最後」って連呼してますけど……。
(遮って)いや、ホントにいいCDだと思いますっ!
──それはもちろん認めますけど、話は続けますよ(笑)。アルバムの本当の最後を飾るのは上坂さんによる工藤静香「MUGO・ん…色っぽい」のカバーです。
このカバーバージョンはあくまでオマケトラックなんです。大好きな曲ですし、9月の決起集会(参照:すみぺ、TVの今憂い同志に水撒く“ゲバドル”に)でも歌わせていただいたことだしっていうことで、スタチャの方から「形に残しておきません?」って言われたから「せっかくなので」と歌ってみたというか……。
──でもインタビュー序盤の歌い方の話じゃないですけど、工藤さんのシリアスなボーカルとはまた違う、上坂さんならではの1曲になりましたよね。
それは今っぽくもあり、でもちゃんと80年代っぽいアレンジと、あと、あの決起集会のときに現れた“めろ坂みみみ”(上坂扮する80年代アイドルオマージュキャラ)のおかげなんだと思います。この曲はめろ坂さんの最初で最後の録音物のつもりで作ったので、私の中にかろうじて存在していた、80年代アイドル的かわいらしさを振り絞ってみたんですけど……。
──あはははは(笑)。その甲斐あってか、かわいらしい「MUGO・ん…色っぽい」が完成しましたね。
ありがとうございます(笑)。……あっ! そういえば今回歌うことになって初めて知ったんですけど、この曲の正式タイトルって「MUGO・ん」なんですよね。
──僕もこのコンピのクレジットを見て「誤植かな?」と思ってJASRACの著作権者データベースを検索してみたんですけど、正題は「MUGO・ん」で「…色っぽい」は副題扱い。三原順子「夢心中 ~MY DESIRE~」の「~」以降と同じ扱いになってました。
なので、この曲を聴いた皆さんが今さらながらに「へえ」って思ってくれたらいいですよね(笑)。
- ニューシングル「閻魔大王に訊いてごらん」 / 2014年12月10日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1836円 / KICM-91556
- アニメ盤 [CD] 1620円 / KICM-91557
- 通常盤 [CD] 1296円 / KICM-1558
初回限定盤CD収録曲
- 閻魔大王に訊いてごらん
[作詞:RUCCA / 作曲・編曲:岩橋星実(Elements Garden)] - 冥界通信~慕情編~
[作詞・作曲・編曲:和嶋慎治(人間椅子)] - 閻魔大王に訊いてごらん off vocal ver.
- 冥界通信~慕情編~ off vocal ver.
初回限定盤DVD収録内容
- 「閻魔大王に訊いてごらん」PV
アニメ盤CD収録曲
- 閻魔大王に訊いてごらん
- 冥界通信~慕情編~
- 閻魔大王に訊いてごらん off vocal ver.
- 閻魔大王に訊いてごらん TV size mix
通常盤CD収録曲
- 閻魔大王に訊いてごらん
- 冥界通信~慕情編~
- 罪と罰 -Sweet Inferno-
[作詞:RUCCA / 作曲・編曲:岩橋星実(Elements Garden)] - 閻魔大王に訊いてごらん off vocal ver.
- 冥界通信~慕情編~ off vocal ver.
- 罪と罰 -Sweet Inferno- off vocal ver.
- V.A.「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」2014年12月10日発売 / 2700円 / スターチャイルド / KICS-3136
- 「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」
収録曲 / アーティスト
- 恋気DEナマイ気 / セイントフォー
- 青山Killer物語 / ラ・ムー
- なぜ?の嵐 / 吉沢秋絵 with おニャン子クラブ
- リトル☆デイト / ribbon
- 東京ローズ'88 / レモンエンジェル
- 夢・不思議いかが / キララとウララ
- へんネ! / 伊藤つかさ
- パラレルガール / 岩井小百合
- ストーミーウェザー / 倉田まり子
- 姫様ズーム・イン / 森川美穂
- Starlight Movement / 菊池桃子
- ピグマリオン / 彩恵津子
- もっと接近しましょ / 石川秀美
- 50/50 / 中山美穂
- 愛はブーメラン / 松谷祐子
- 夢心中 ~MY DESIRE~ / 三原順子
- I WANT YOU / 山瀬まみ
- 怒涛の恋愛 / 高見知佳
- 水の星へ愛をこめて / 森口博子
- MUGO・ん / 工藤静香(上坂すみれカバー)
上坂すみれ(ウエサカスミレ)
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に出演する一方で、ラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。以来、桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースする。2014年1月、1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表。同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」をリリースし、また12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」を発表。さらに自らがセレクトした80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」もリリースした。