ナタリー PowerPush - 植村花菜
デビュー10周年を前に考える「大人の女性の生き方」
結婚して「私ってもう1人じゃないんや」
──歌詞は以前のインタビューで「自分と100%イコール」とおっしゃっていましたが、今作にもまさに今の気持ちが反映されているんでしょうか?
そうですね。まんまだと思います。
──約1年前に結婚されて、今とても大きな安心感を抱きながら生きているような、幸せな姿が浮かびました。
あはははは(笑)。私、いつもそうなんですけど、タイアップのお話があればもちろんそれに沿うよう努力しつつ、一方で沿い過ぎずに自分が今書きたいことも大事にしたいと思ってて。それで今回出てきたのが、この言葉たちだったんですけど……。実は結婚するまで、ずっと1人で闘ってきたような感覚があったんです。周りにはもちろんスタッフがいて、みんなで仕事はしてるんだけど、制作になると実際孤独な作業も多いから。相談してもわかってもらえないと思って、今まで人に仕事の相談をすることもあまりなかったんです。そうやって誰にも仕事の話は一切せず生きてきたんですけど……夫はジャズドラマーで同じミュージシャンということもあって、いろんな話をすごく理解して聞いてくれて。気付いたらなんでもいちいち相談してる自分がいたんです。
──その変化にも気付かないほど自然に。
はい。で、いろいろ聞いてもらってるうちに「私ってもう1人じゃないんや」って思ったことがあって。「1人じゃないって感じられること、人に相談できて、それに共感してもらえることってこんなに幸せなんや」ってビックリしたんですよね。この歌詞は、その思いをどうしても歌にしたいと思って書いてみました。でもこれ、人によっては夫じゃなくて恋人や友達、家族にも当てはまるかもしれない。心から気を許せて、素直な自分を見せられる人がいるのは幸せなことだし、まさに同じ気持ちの人は共感してもらえるんじゃないかな。そういう相手が今はいないって人も、この先見つかるかもしれないという希望を持ってもらえたらうれしいです。
昔の恋とはやっぱり違う(笑)
──ちなみに、それほどかけがえのない人とのご結婚は、今までの恋愛で味わった幸せとはまた違いましたか?
はい。こんなにも!?ってくらい全然違います(笑)。もちろん過去の恋愛があって今の自分がいて、ようやく彼に出会えたわけだから昔の恋も全部大事なんですけど。でもやっぱり、違いますねえ(笑)。
──ブログには、昨年末のオーストラリアでの挙式写真も掲載されています。とっても素敵な式場とウエディングドレスでした。
ありがとうございます。式場の小さな教会は、まさにシルバニアファミリーに出てきそうなカワイイところで。カタログを見た瞬間一目ぼれして、夫も賛成してくれたのでそこに決めたんです。
──旦那さんとは、これがいいねっていう価値観も近いんですか?
めっちゃ近いと思います。というか、お互いにわりと好きなものの範囲が広いというか。絶対これ!とかがなくて、どっちかが「これがよくない?」って言ったら「ええね」みたいな。だから、いろんなもののもともとの好みがけっこう似てるのかなって。音楽も彼が勧めてくれたもので嫌って思ったことは1回もないし、映画を観るにしろ、ごはんに行くにしろ、モメることはほとんどないです。
180度違う曲を並べるのが植村花菜の真骨頂
──カップリングの「気にThrough, 気にしNight」は、まずタイトルからして最高ですね(笑)。
あはははは! そうでしょ? 真面目な「輝く時間の中で」とチャラけたこの曲を並べるのが、植村花菜の真骨頂やと自分では思ってます(笑)。シングルでもアルバムでも、そういう180度違う面は常に表現したいと思っているので。
──とはいえ、大きく振り切りましたよね。「1、2、3!」というラフなカウントから始まり、ジャムセッションのような自由な音と歌が心地よかったです。
私、中間がないんですよ。もうどっちかに振り切る、それだけ!(笑) あと実はこの曲、「輝く時間の中で」とほぼ同時期に書いてて。当時、夏のイベントで盛り上がれるような新曲を作りたいってずっと思ってて、そういう思いからできた曲でもあります。
──底抜けに明るくて、聴くと小さな悩みなんてバカらしくなってきますね。
そう言ってもらえるとうれしいです。私自身、意外にいろんなことを気にしちゃうタイプで。例えば自分が人に言ったことを、あんな言い方で大丈夫だったかな? 傷付いてないかな? ちゃんと伝えられたかな?とか、帰ってお風呂で考え込んじゃったりするんです。もちろん、悩むことや気にすることもときには大事やと思いますよ。ただ延々と悩んだり考えたりするのは、結果あまりいい方向には進まなくて。そういうときに、「今日はもうええか。考えるのやめとこ!」って思える曲が欲しかったんですよね。
──それは自分にとっても?
そうですね。自分もそう言ってほしいし、同じ気持ちの人には「そんなとき、この曲いかがですか?」みたいな(笑)。
──レコーディングはどうでしたか?
これはみんなで「せーの」で一発録りでしたね。いつもの気心知れたツアーメンバーたちと「ノリが一番やで!」とか言いながら(笑)。楽しかったです。
──それにしても、1曲目と2曲目で同一人物と思えないほど違いますね(笑)。
ホンマですよねえ。下手したら「この人、二重人格?」って思われるんちゃうかな(笑)。でもこの両方が本当の私なので。両面を楽しんでもらえるといいですね。
収録曲
- 輝く時間(とき)の中で
- 気にThrough, 気にしNight
- Wonder Of Wonders
植村花菜(うえむらかな)
兵庫県川西市出身。1983年1月4日生まれのシンガーソングライター。8歳のとき、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」を観て歌手になることを決意し、その日から毎日歌の練習を始める。19歳で曲作りを始め、地元を中心とした関西各地のストリートやライブハウスで活動を行う。その後「ストリートミュージシャンオーディション」で1200組の中からグランプリに選ばれ、2005年にシングル「大切な人」でメジャーデビュー。2010年3月にリリースしたミニアルバム「わたしのかけらたち」に収録の「トイレの神様」は口コミで話題になりドラマ化、小説・絵本化も実現し、同年末の「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。その後コンスタントに作品を発表し続け、2013年3月にミニアルバム「Steps」を発売。翌2014年1月には2年ぶりのシングル「輝く時間の中で」をリリースする。