ナタリー PowerPush - 植村花菜
いつもウソのない音楽を
私の人生を切り崩して曲を作ってる
──植村さんの曲の歌詞は、個人として思うこととは乖離している? 逆にまったく同じ? そのあたりのバランスはどうなっているんでしょうか。
私はもう100%イコールじゃないですかね。植村花菜っていうシンガーソングライターは、すべて私の人生を切り崩して曲を作ってるので。
──アーティストにもいろんなタイプがいますけど、植村花菜さんは完全にノンフィクションタイプだと。
私の場合は全部自分が経験したことじゃないと書けないし、書きたくないですね。
──それは曲作りを始めた頃から一貫して?
はい。19歳で「よし、曲を作るぞ」「どんな曲を作りたいか」って考えたときに、やっぱりわかりやすい言葉で、口ずさみやすいキャッチーなメロディで、私の歌を聴いてくれた人が前向きな気持ちになるような楽しくて明るい曲を作りたいって思ったんです。すごい壮大なことを歌うんではなくて、誰しも経験したことのある、身近で素朴なものを切り取って歌にしたいなって。それはホンマに昔から変わらないですね。あと、やっぱりそれを自分で弾きたいなっていうのがあって。
──あ、確かに植村さんの歴代アーティスト写真ってアコギと一緒に写ってるものが非常に多いですもんね。
ぜんぜん伝わり方が違うんですよね、下手でも自分で楽器を弾いて歌うのと、誰かが弾いてる上で歌うのは。これは音楽の面白いところなんですけど、うまけりゃいいってわけじゃないっていうね。だから楽器にしても歌にしても、自分から発せられるものが一番説得力があると思うんで、いつもそうし続けていたいですね。
──その「歌うテーマを身近なものに」という強い意志は、どこから由来したものなんでしょうか。
私が一番尊敬してるアーティストはCARPENTERSなんですけど、CARPENTERSの音楽ってすごいスタンダードですよね。私もぜんぜんリアルタイムじゃないのに世界中の人が知ってる上、何十年経っても色褪せない、ずっと聴いていられる音楽。シンガーソングライターとしてずっと曲を作り続けていく上で、どういう音楽を世に残したいかな、自分はどういう音楽が好きなのかなって考えると、やっぱり私もそういうものを作りたいんです。
──うんうん。
流行りの音楽は、例えば1カ月は毎日聴いたかもしれへんけど、それ以降一生聴かへんっていうケースもいっぱいありそうじゃないですか。私は、1年に1回でもいいし5年に1回でもいいから、あるとき「あ、あのアルバムちょっと聴きたいな」って思い返してもらえる作品を作りたいから。そうするとやっぱりスタンダードなものというか、シンプルなもの。かつ、誰もが経験する日常の些細なことをテーマに曲を作っていきたいなと思うようになりましたね。
期せずしてウエディングソングができてよかった
──ちなみに先日ご結婚を発表されましたよね(参照:植村花菜が入籍を発表「自分でもビックリしてます」)。改めておめでとうございます。
ありがとうございます!
──植村さんがノンフィクション作家タイプということを踏まえると、最後の収録曲「LOVE」は、聴いて結婚のことを想像する人も多いんじゃないかと思うんですけど。
うん、たぶんそうでしょうねえ(笑)。
──率直にお聞きするとそういうことなんですか?
それがね、違うんですよ! 違うっていうか、本当に自然と自分の中から生まれてきた曲というか。自分で先を予知してたんかな?というくらい(笑)。この曲、去年の暮れくらいに完成したんですけど、そのときは今の旦那さんと付き合っていて、まだ結婚の話もぜんぜんなかったしプロポーズもされてない状況だったんですね。ただ私の中で「この人と結婚する」っていうのは決まってたから、そういう自分の気持ちの表れだったんでしょうね。そしたら作ったあとに「あれ、プロポーズされた」みたいな(笑)。
──そうなんですね。植村さんのラブソングの決定版とも言える仕上がりなので、このタイミングで意気込んで作ったのかなと思っていました。
ぜんぜん。これまで「ウエディングソング書いてください」って言われることがよくあったんですけど、本当に書けなくて。っていうのも、今までは結婚したいって思ったことがなかったんでしょうね。だから自分の中からウエディングソングっていうのが生まれてこなくて。今回期せずしてウエディングソングができてよかったなあと思います。
──やっぱり自分の心と曲は切っても切り離せないものなんですね。
上っ面で書くの嫌なんですよ、なんとなくイメージして書くっていうのが。本当に自分が書きたいって思ったものを書きたいし、そうじゃないと聴いてくれる人に対して失礼やとも思うし。
──「LOVE」という究極のタイトルは一生に一度しか使えませんからね。
これはホンマにド直球ですねえ、タイトルも内容も。きっと結婚してからや、子供ができてお母さんになってから生まれてくる曲はまたぜんぜん変わってくると思うし、愛の形も変わっていくと思うんです。でも私はそのときにしか書けない曲を書き続けていきたいですね。30歳の植村花菜だから書ける曲、40歳の植村花菜だから書ける曲っていうのをすごい大事にしたくて。そのときどき感じることを包み隠さず正直に切り取って、音楽にしていけたらなあって思ってます。
- ミニアルバム「Steps」 / 2013年3月13日発売 / KING RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2700円 / KICS-91895
- 通常盤 [CD] / 2100円 / KICS-1895
CD収録曲
- 新しい世界
- でこぼこ
- 迷悩焦ワルツ
- めがね
- リグレット
- Oh! New Orleans
- LOVE
初回限定盤DVD収録内容
The Birthday Live 2013.1.4
- Tennessee Waltz
- (They Long To Be)Close To You
- ミルクティー
- トイレの神様
- 世界一ごはん
- メッセージ
- My Favorite Songs
LIVE TOUR 2013 "Steps"
- 2013年5月22日(水)
愛知県 名古屋DIAMOND HALL - 2013年5月24日(金)
大阪府 なんばHatch - 2013年5月29日(水)
東京都 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
「Steps」リリース記念インストアイベント
- 2013年3月16日(土)
千葉県 イクスピアリ2F セレブレーションプラザ - 2013年3月17日(日)
埼玉県 イオン越谷レイクタウン kaze 翼の広場 - 2013年3月23日(土)
大阪府 阪急うめだ本店13F屋上ステージ - 2013年4月20日(土)
東京都 タワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」
※名古屋、広島、仙台でも開催予定。詳細は近日発表。
植村花菜 (うえむらかな)
兵庫県川西市出身。1983年1月4日生まれのシンガーソングライター。8歳のとき、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」を観て歌手になることを決意し、その日から毎日歌の練習を始める。19歳で曲作りを始め、地元を中心とした関西各地のストリートやライブハウスで活動を行う。その後「ストリートミュージシャンオーディション」で1200組の中からグランプリに選ばれ、2005年にシングル「大切な人」でメジャーデビュー。2010年3月にリリースしたミニアルバム「わたしのかけらたち」に収録の「トイレの神様」は口コミで話題になりドラマ化、小説・絵本化も実現し、同年末の「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。その後コンスタントに作品を発表し続け、2013年3月にミニアルバム「Steps」をリリース。