音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵

苦節8年、ついにつかんだメジャーデビュー

植田真梨恵が8月6日にメジャーデビューシングル「彼に守ってほしい10のこと」をリリースする。中学卒業を機に地元福岡を離れて大阪で音楽活動をスタートさせた植田は、8年以上もインディーズで地道に活動を続けてきた苦労人だ。ナタリーでは満を持してメジャーデビューする彼女に、インディーズ時代の音楽生活や今作に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 佐藤類

中学卒業を機に単身大阪へ

──植田さんが歌手を目指したのはいつ頃だったんですか?

植田真梨恵

夢として歌手になりたいと思ったのは5、6歳くらいのときでした。

──その頃って、普通だったら何になりたかったか覚えてないくらいの年齢ですよね。それをはっきりと覚えているということは、当時からかなり強い気持ちだったということなんでしょうか?

地元ののど自慢大会に出場したりオーディションを受けたり、なるべく人前で歌う機会を作るようにしていたので覚えているんだと思います。最初は遊び半分だったんですけど、そのうちにだんだん楽しくなっていって。小学生のときには本気でやりたいと思いながらいろいろなオーディションを受けていましたね。

──なるほど。

その後、中学生になってから福岡のタレント事務所の人に声をかけてもらって。私はタレントになりたいわけではなかったから、一応そこにお世話になりながら音楽をやりたいですってずっと言い続けていたら、今の大阪の会社(GIZA studio)のオーディションを紹介してもらったんです。それで中学を卒業したら大阪に来なよっていう話になりまして。

──それで福岡を離れて大阪に行くんですね。でも15歳で親元を離れて見ず知らずの土地に行くのって相当な覚悟が必要ですよね。不安はなかったですか?

もちろん不安もあったんですけど、小さいときから「歌手になる」って言い続けていて親も周囲のみんなも応援してくれていたので、「早くしなきゃ」という気持ちのほうが強かったですね。その頃若い女性シンガーとかも多かったので、焦っていたんだと思います。

──けっこう思い切りのいいほうですか?

うーん……思い切りいいほうがいいなとは思ってます(笑)。わりと飽き性なんですけど、歌だけはずっとやりたいって言い続けていたのでそこに関しては迷いはなかったですね。

何もない生活の中で始めた曲作り

──中学を卒業して大阪に出てきて、どういう生活を送っていたんでしょう?

音楽浸けの生活を送るつもりだったので、週に1回通学するだけで大丈夫な通信制の高校を選んだんです。

──すごく忙しくなるだろうと思って。

植田真梨恵

はい。とにかくたくさんの人と関わって怒濤の日々になるだろうから、波に飲まれないようにがんばらなきゃって思っていたんです。そしたら1、2カ月くらい何もなくて……。

──えっ!?

今思うと当たり前のことだなと思うんですけど、会社からスケジュールをもらえるわけでもないし、特に何をしなさいという指示があるわけでもなくて。学校は週に1回だし一人暮らしだし、アルバイトも「そんなことばかりしていたら、なんのために大阪に行ったのかわからない」という理由でお父さんから禁止されていて。人とまったく会わない時間が増えて、「私はいったいどうしたらいいんだろう」って思いながら過ごしていました。

──そのときって、「こんなはずじゃなかったのに」って思いませんでした?

思いましたし、困りました。でもやっぱり周りが何かをしてくれるわけではないんだなと思って。そしたら自分で考えなきゃいけないじゃないですか? それでまず生活のためにピザ屋でアルバイトを始めて。一応親から仕送りはもらっていたんですけど、今考えると「お父さんはいったい何を考えていたんだ!?」っていうくらい全然足りていなかったので(笑)。

──ははは(笑)。

それと同じ頃に曲作りを始めたんです。私はいったいどんな歌手になるんだろうと思ったときに全然想像がつかなかったので、だったら自分で書いてみようと思って。当時は歌詞をいっぱい書き溜めているノートがあったので、その歌詞に基づいてメロディを付けて、AとかEとかきわめて簡単なコードしか出てこないような曲を書きました。そしたらスタッフさんがちゃんと聴いてくださって、「じゃあアレンジを進めてみましょう」ってなって。

──自分から動き出したことで道が開けていったんですね。

そうですね。そしたら自分でも思いもよらないタイミングでiTunes Storeで6曲連続配信することになったり、それをまとめたアルバムを出したりとか。

──そうやって自分の歌が世間に広まっていくことに対して、気恥ずかしさみたいなものはなかったですか? もちろん、自分の伝えたい思いを歌にするのがシンガーソングライターだとは思うんですが。

私は何か特別な自分の感情があって書き始めたわけではなくて、日々時間がある中でとにかく書きつづることに集中していたので、そこまで気恥ずかしいという感じはなかったですね。

──テーマはどうやって見つけていました?

当時はとにかく心の中に渦巻いていることを書いていました。嘘は絶対に歌いたくなかったから、本当に思っていることをどんどんぶつけていったような感じで。特に初期の作品はモヤモヤした気持ちとか不安な気持ちを書いている傾向が強かったと思います。

──10代の焦燥感みたいな?

そうですね。たぶん、当時あまり人と会ってなかったからだと思います。

メジャーデビューシングル「彼に守ってほしい10のこと」/ 2014年8月6日発売 / GIZA studio
[CD] 1296円 / GZCA-4140
収録曲
  1. 彼に守ってほしい10のこと
  2. ダラダラ - demo -
  3. アリス
  4. 彼に守ってほしい10のこと - off vo. -
植田真梨恵LIVE TOUR 2014 UTAUTAU vol.1
  • 2014年9月7日(日)大阪府 Shangri-La
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2014年9月23日(火・祝)東京都 原宿アストロホール
    OPEN 17:00 / START 17:30
チケット一般発売日:8月16日
植田真梨恵(ウエダマリエ)
植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月6日にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。