──今回のシングル「じじい」にちなんで、あさこさんの理想の「じじい」を教えてください。

理解不能な行動を起こすんだけど、どっかかわいいところがあるじじいがいいです。人に対して恨みとか感じてなさそうな感じ。楽しいことも嫌なこともなんにも考えずに1日が終わる、「無」みたいな状態がかわいいなあ。

──新曲はそんなおじいさんをイメージして書いたものなんですか？

この「じじい」の曲は、見た目のモデルになってるのは「ロボジー」っていう映画の俳優さん（ミッキー・カーチス）なんです。そして、にいや（ひでひろ。宇宙人のベーシスト）くんから聞いたおじいちゃんの話や、自分の中の「じじい」像を取り入れて、がんばって曲を書きました。

──そもそもどうして「じじい」をテーマにしたんですか？

去年「じじい」が口癖だったのをキングレコードの人が覚えていて、「おじいちゃんをテーマに曲を作ってみないか？」って言ってくれたんです。それで、普段考えない「家族愛」とか、「生きる」「死ぬ」みたいなことを、この機会にじっくり深ーく考えてみようかなって思って作りました。今までにないようなすごくストレートな曲ができたので、自分で作ったのに「自分の作品じゃないみたい」っていう感覚がいまだにあります。

──そうですよね。これまでずっとシュールな作風だったのに、今回はシリアスなテーマの大作だったので驚きました。

マスタリングが終わった完成品をチェックしたときに、今までの曲はいかにも自分で作った感がすごかったんですけど、「じじい」は完成度が高くて誰かの曲を聴いている感じでした。

──じゃあ、自分の中でも「こんなことが自分にできるんだ」という気付きがあったわけですね。

あー、そういう感じはありました。今回は「死に向かっていくじじいを、ただそばで見守る孫のつらさ」「じじいの死を受け入れて、死と向き合う、ちょっと前向きな孫の気持ち」「天国で再会したじじいが楽しく暮らしているのを見て、死は恐ろしくないんだって感じること」を曲にしたくて。1曲でそれを全部やるとごちゃごちゃになってまとまらなかったので3曲にしました。

──あー、なるほど。あさこさんは以前のインタビューで「締め切りが決まっていれば、たとえ明日でも必ずそれまでに曲が作れる」と言っていましたが、今回もすぐに曲が完成したんですか？

あ、「じじい」は締め切りを守れなかった曲です。曲はすぐできたのに、歌詞は締め切りを2カ月ぐらい遅れました。緊急事態でした。

──やっぱり難しかったんですね。

すごく難しかったです。だから歌詞を考えろって、12月27日にキングレコードの一室に監禁されてました。その日は会社の忘年会で、社長とかがうろうろしてて、ビルの全部の階でみんながワイワイしてました。私だけずっと歌詞を書かされてました（笑）。

シングル「じじい」の発売にちなんで、しのさきあさこが「じじい」たちの夢を叶えるべく街のおじいさんたちに話を聞く企画を実施。慣れないロケに戸惑いながらも、彼女は道端でタイトルコールをし、おじいさんたちに一生懸命話しかけていた。この様子は4月18日に配信されるニコニコ生放送で詳しく紹介される予定だが、ナタリーではニコ生に先駆けてその一部を紹介する。