ナタリー PowerPush - 宇宙人
脱・不思議バンド? あさこはただいま急成長中
今年5月にミニアルバム「慟哭」でメジャー進出を果たした宇宙人が、2枚目のミニアルバム「珊瑚」をリリースする。今作には加山雄三が出演するテレビ朝日系「若大将のゆうゆう散歩」のエンディングテーマ「楽日」など8曲を収録。よりキャッチーになったバンドサウンドや、言葉遊びのみに終わらない深みが加わった歌詞など、前作からわずか半年でリリースされる作品とは思えない、成長を感じさせる1枚となっている。
バンドの中心人物であるしのさきあさこ(Vo)は、ナタリーPower Pushにこれまで2度にわたって登場。しかし彼女は自らについて、特に自分が作る音楽について語りたがらない人物で、前回のインタビューでは楽曲に関する質問のほとんどに「何もないです」と返事をしていた。そんな彼女の本音に果たしてどこまで迫ることができるのか、期待と不安が入り混じりながら、ナタリーは今回3度目の取材を敢行した。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 笹森健一
今までと同じようにやってるのは良くないです
──メジャーデビューから半年経ちましたが、バンドの環境に何か変化はありましたか?
変わりました。今回は宮本ボーイと一緒に作品を作りました。
──宮本ボーイ?
キングレコードのディレクターの人です。そう呼んでます。曲作りのためにキングレコードに毎日通って、宮本ボーイと仲良くなりました。ふふふ(笑)。
──それは良かったですね。その結果どうなりましたか?
歌詞の書き方を一緒に考えました。ちょっと意味を匂わせる言い回しとかを考えました。
──ああ、やっぱり。歌詞の雰囲気が変わったことはすごく感じました。
人型みたいな感じで。
──人型? 今までの曲は人間の姿をしていなかったという意味ですか?
人型になりましたよね(笑)。
──とにかく、シュールな言葉遊びだけではない、一歩抜け出た大人っぽい歌詞になったと思いました。
成長したってことですか? やったあ。良かったです。変わりたかったので。ふふふ(笑)。
──あ、変わりたかったんですか。意外です。
インディーズからの流れで、ふわふわっとやってきて、いつのまにかバーンと出てきてしまいましたが、今までと同じようにやってるのは良くないと思いました。それに、自分でも「謎」みたいなことにちょっと飽きてきたので、違うことをやろうと思いました。うふふ(笑)。
──なんだか、ちゃんとこういうお話ができて安心しました。前回のインタビューは何を訊いても「ないです」としか答えてくれなかったので。
あれはインタビューを書く係の人が大変だったらしいです。
──それが僕なんですけど(笑)。
成長したんです。ふふふ(笑)。
割とたくさんの人に聴いてほしいです
──あさこさんは曲を作るのが速くて、作れと言われれば何曲でも作れると言っていましたが、今回のミニアルバムも簡単に曲が揃ったんですか?
今回は時間をかけて1曲ずつすごく考えました。曲ができたら宮本ボーイに添削してもらいました。
──おお、外部の意見を取り込んだんですか。それによって、自分の中からは出てこないアイデアは出てきました?
それはなかったです。
──あ、ないんですか。
聴かせると「やべえ、やべえ、やべえ」って言います。面白かったです。
──あー、褒めてもらってうれしかったんですね。以前まで「音楽で人から評価されることに興味はない」と言っていたので、これも大きな変化ですね。
褒められて伸びるタイプです。ふふふ(笑)。
──今回のミニアルバムはみんなが褒めると思います。どんどん伸びてください。
はい。本当にいい歌ができたので、割とたくさんの人に聴いてほしいです。
──おお、やっぱりこの半年で随分変わりましたね。ちなみに僕はさっき「大人っぽくなった」って表現しましたけど、あさこさんは何て言われるとうれしいですか?
「ノイズ系」じゃなかったらなんて言われても大丈夫。
──ノイズ系って言われるのは嫌なんですか?
嫌です! ノイズじゃないので。
──「聴きやすくてポップだね」って言われるほうがうれしい?
うれしいです。今回の作品は。
収録曲
- ものすごい関係
- 孔雀草
- はーとトリップ
- 楽日
- ヤノコージ
- 脳内ふりかけ
- アウトレイジ
- エイのうらみたいないきもの
宇宙人 (うちゅうじん)
しのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと(Dr)の4人のメンバーによるポップバンド。2008年頃に結成され、地元でのライブ活動やデモ音源の配布、販売などを全く行わないまま、2010年に「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演した。2011年7月に初の音源となるシングル「アメーバダンス / あこがれのネクタイ」をパーフェクトミュージックから、同年8月に1stアルバム「お部屋でミステリーサークル」をGYUNNE CASETTEからそれぞれリリース。「お部屋でミステリーサークル」は「第4回CDショップ大賞」で中国四国ブロック賞を受賞した。2012年にはスターチャイルドからメジャーデビューを果たし、短期間に「慟哭」「珊瑚」という2枚のミニアルバムを発表する。不思議な世界観と中毒性の高いポップセンスで、じわじわと人気を拡大している。