ナタリー PowerPush - 宇宙人
ついに接触に成功!初めて明かされる謎の数々
宇宙人というバンドが面白い。高知出身の4人組で、メンバーはしのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと(Dr)。シュールなポップ感を軸に、アバンギャルドな変拍子やジャジーなアレンジも取り入れたサウンドを聴かせ、その上で舞う無邪気さいっぱいのリリックも含め、つかみどころのなさが逆に魅力となっている。
神聖かまってちゃんを世に送り出したパーフェクトミュージックからの先行シングル「アメーバダンス / あこがれのネクタイ」に続き、ミドリやあふりらんぽを輩出した関西の老舗インディーズレーベル、GYUUNE CASSETTEより初のアルバム「お部屋でミステリーサークル」が8月31日にリリースされる。もしかしたら現時点では宇宙人という名称のキワモノ感が先行してしまっているかもしれない。だが、実際に音を聴いてもらえればわかるはず。彼らはそのバンド名に決して遅れを取らない、本当に不思議な存在なのだ。そして、断じてイロモノではない。
今回、高知からインタビューのために上京してくれたボーカルのしのさきに話を聞くことができたのだが、彼女の発言もどこまでも不思議で、でっかいクエスチョンマークが飛び交いつつ、笑いが絶えない取材となった。少しでもこのバンドの実態が伝わればと思う。
取材・文 / 田山雄士
どうやって結成されたのかよくわかりません
──宇宙人は何しろ謎の多いバンドで、資料からは高知出身ということくらいしかわからないので、これまでのバンドの歩みなども含めてお聞きしていきたいのですが、バンドはどうやって結成されたんですか?
出会いがよく……わかりません。大学のときに知り合いだったとかでもなくて、年齢もバラバラで、なんかややこしい人間関係でした(笑)。メンバーの家もけっこう遠いんですよ。バンドを組もうみたいなことも誰も言ってないと思います。最近、結成した感じです。
──でも、プロフィール上では2008年に結成となっていますよ。
知り合ったのがたぶんそのくらいです。バンドのオフィシャルサイトもないし、わからないですよね。Myspaceはあるけど、何にも載ってないですし。システムが変わって、更新のやり方がわからなくて(笑)。パソコンは私しか持ってなくて、メンバーは買うお金がないらしいです。
──更新がないのはそういうことだったんですね。メンバーはボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人ですけど、アルバムではキーボードの音も聞こえてきますね。
あ、私が弾きました。楽器はギターもちょっと弾けます。でも、荷物になるからあまり持っていくのは嫌です(笑)。
──すごい理由ですね(笑)。作詞・作曲はあさこさんが担当しているんですか?
はい、今回のアルバムは全曲そうです。これからもきっとそうかな。
──メンバー間で音楽の趣味はけっこう違うんですか?
きっとバラバラですね。一緒にカラオケとかは行きますよ。2008年くらいに知り合って、練習もせずに高知でごはんの食べ歩きばかりしてました(笑)。
──元々音楽が好きで集まった4人ではないんですか?
そうではないですね。宇宙人をやる前に全員がそれぞれにバンドをやってたみたいですけど、謎です。
知名度が上がるのは恥ずかしいです
──そんな流れがありつつ、2010年の大阪・難波BEARSでのライブをGYUUNE CASSETTEの須原敬三さんが偶然観たということですけど。
はい。たまたまライブを観に来てたみたいで、須原さんがなぜか携帯電話を自分のおでこに貼り付けて笑ってたんですよ(笑)。
──須原さんが楽屋に遊びに来たということですか?
違います。ライブが終わったあとにフロアで見かけたんですけど、須原さんはフラフラしながら携帯をおでこにくっ付けて歩いてました。あとから聞いたら、私たちのライブを勝手にビデオ撮影してたみたいです。そのときは何も言われませんでした。メンバーも誰も話してないです。「あの人誰かな? 怪しいね」みたいなことを言ってて(笑)。そのあとでBEARSの人に聞いて、須原さんだと知りました。
──今回の1stアルバム「お部屋でミステリーサークル」はGYUUNEからのリリースになるわけですけど、そこからどのようにして須原さんと知り合ったんですか?
大阪のあとに須原さんのライブをメンバーといっしょに観に行ったんです。多分高知やったと思います。そこで須原さんと会ったときに「出そうぜ」って言われて。そのときは須原さんは何で出てたんやったかな。あ、ノイズわかめだ!
──ちなみに、ノイズわかめはお好きなんですか?
ノイズわかめは……どっちでもいい(笑)。
──あはははは! イベントで出ていたうちの1組だったと。じゃあ、須原さんが宇宙人のライブを初めて観たときに実は気に入っていたっていうことなんでしょうね。
何も言ってくれませんでしたけどね。私たちメンバーの名前を初めて知ったのもレコーディングのときですし。GYUUNEからのリリースが決まったのは2010年の3月とかかな。
──元々CDデビューしたいと考えていたんですか?
全く考えてなかったです。ライブも全然やってなかったですし、デモCD-Rなんかも売ってませんでした。須原さんが観たBEARSが多分2回目のライブとか。最初は梅田シャングリラ。
──高知県内では全然ライブをやっていないそうですね。
やってないです。高知はちょっと恥ずかしい(笑)。地元の人は私がバンドをやってることは知らないと思います。知られたくないから、壁を作ります。
──で、その年にフジロックのROOKIE A GO-GOに出演されているんですけど、それもすぐに決まったんですか?
決まりました。フジロックまでの間に東京でもライブはやりましたけど、2010年にやったライブは3本くらいです。
──フジロックはどうでしたか?
遠かったです。あまりに遠くて、新潟がないかと思いました(笑)。ライブのことはそんなに覚えてないんですけど、お客さんは多分けっこういました。ライブが終わったあとでオーストラリアから来たドラマーとか言っとった人に英語でずっと話しかけられて、意味がわかりませんでした(笑)。でも、すごくテンション高くて喜んでた感じでしたよ。
──ほかに覚えていることは何かありますか?
もう1人、フランス人とも話しました(笑)。18歳で自称マンガ家で、近くにいた誰かが通訳してくれたんですよ。日本人は……壁がありますね。
──確かに海外の人も楽しんでもらえるようなサウンドだと思います。日本人にもこれから人気出るでしょうし。
やったー! でも、知名度が上がったらライブをするのが恥ずかしくなりますね。
CD収録曲
- アメーバダンス
- 点
- キンバリー先生と朝食
- ある日のできごと
- あこがれのネクタイ
- ヤノコーイチ
- ふりかえる、フレネミー
- 自分勝手にタイムコントロール
- 生活ガイド
- サイとんで、サイレン、ナイ
- ワ--
- フリーマン先生と夕食
- おばけ
宇宙人(うちゅうじん)
しのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと(Dr)の高知県在住メンバーによるポップバンド。2008年頃に結成され、地元での活動やデモ音源の配布、販売などを全く行わないまま、2010年に「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演した。2011年7月に初の音源となるシングル「アメーバダンス / あこがれのネクタイ」をパーフェクトミュージックから、同年8月に1stアルバム「お部屋でミステリーサークル」をGYUNNE CASETTEからそれぞれリリース。不思議な世界観と中毒性の高いポップセンスで、じわじわと人気を拡大している。