ナタリー PowerPush - 打首獄門同好会会長 × KenKen × shyou(韻シスト)

通じ合う男たちの酒呑みトーク

グルーヴは最高の“ズレ”で生まれる

KenKen 最高のグルーヴって俺の人生のテーマでもあってさ、それを求めてアメリカとかイギリスに行ったんだけど、全然ピンと来なかったんだよ。でも韻シストを見たときに「これだよ! 大阪にいたじゃん!」って思った。このグルーヴはマジで真似できるもんじゃないよね。

会長 キックがドンって鳴ったあとにベースがこのタイミングで来ると気持ちいい、って感覚は音楽やってるとみんな気付くじゃん。でも毎回その演奏はできないし、ムラがあるし、気持ちいいところにヒットするのは3割くらいなんだよね。

KenKen

KenKen わかるわかる。でも韻シストは、9割9分ハマってる。

会長 キックが歌ってるみたいな感じ。

KenKen まずベースがすげえと思って、よく聴くとドラムとギターがすごいと気付いて……結局全部すげえってわかるんだよ。噛み合い方がハンパじゃないよ。

会長 俺らみたいな激しい音楽って勢いでカバーできちゃうんだけど、韻シストを聴いて、やっぱり本物のスキルって違うわと気付いた。これはありがたい出会いだったな。

KenKen グルーヴは最高の“ズレ”で生まれるんだよね。最近はみんなクリックを過信して合わせすぎちゃって、ビートが“点”になっちゃうからうねりが起こらない。

shyou

shyou ズレって本当にそうで、うまく説明できないんだけど……ちょっと後ろを狙うっていうのかな。後ろから追っかけて叩くようにしてて。ドラムのTAROW-ONEが俺を気にせずガンガン叩くから、結果として俺は気持ちいいところに“置ける”っていう感じ。

KenKen もうバンドの呼吸法みたいなことなんだよね。

会長 一般のリスナーはそんなことまでわかりっこないんだけど、潜在的には絶対感じてるはずなんだよ。

KenKen うん。「なんか踊れちゃう」っていうのはそれだと思う。「なぜか膝が動いちゃう」っていう感覚。この前はDragon Ashのサクちゃん(MAKOTO SAKURAI / Dr)と韻シストのライブに行ったんだけどさ、彼もいろんなバンドを見てきてるけど「これはすごいわ」って驚いてたよ。神懸ってるねって。サクちゃんがあんなにテンションあがってるの初めて見たもん。

打首と韻シストは、海外のバンドにも勝てる

会長 韻シストはCDを聴いてまず驚くんだけどさ、ライブでも変わらずすごいんだよね。

KenKen 俺が女だったらメンバー全員に抱かれるね(笑)。新しいアルバム(9月25日発売「HIPSTORY」)も最高じゃん? バックトゥザベーシックっていうか、めちゃくちゃかっこいいよ。

会長 このアルバムは、ライブで聴くとさらによさがわかる音源だよね。

shyou いやあ、超うれしいわ。ずっとライブばっかりやってるから、それが随まで沁みてるのはあるよね。トラックはもちろん好きやけど、常にライブも想像して作ってるし。

大澤敦史

KenKen ライブでは毎回アレンジとか曲のキメを変えてるでしょ? あのギミックがすごいよ。CDと同じようにやろうって思いがちだけど、何回か見たら飽きちゃったりするんだよね。そうじゃなくて、血湧き肉踊るようなドキドキがある。

会長 俺は生バンドが好きだから、今までヒップホップから縁遠かったのもあって。だからこういうグループがいるのは素直にうれしいなって思った。

KenKen 海外ではたまにいるんだけど、日本にはやれる人がいなかったんだろうね。少し間違えると超ダサくなったりしちゃうんだけど、そこを支えてるのがセンスだよね。

会長 初めて聴いたとき、泣きそうだったもん。

KenKen いい音楽ってハードコアでもグルーヴでも泣けるんだよ。

shyou 最高の褒め言葉だね。テレるわー。

KenKen 意思を持ってやれているバンドって意外と少なくて、みんな「ああなりたい」を追求して真似になりがちだけど、打首と韻シストは個性とか武器とかベクトルが定まってるし、海外のバンドにも勝てるチームだよ。

──ただ、バンドらしさを見つけるのってすごく難しいことですよね。どうしたらその個性を獲得できるんでしょう?

会長 俺らの場合は歌詞の方向性が定まってからは成り行きだもん。男女混声が気持ちいいって言われることも多いんだけど、それも俺が1人じゃ歌いきれなくて、たまたまほかのメンバーが女だったってだけで。

打首獄門同好会ニューアルバム「一生同好会します」 / 2013年10月15日発売 / 1890円 / LD&K Records / 246-LDKCD
打首獄門同好会ニューアルバム「一生同好会します」
収録曲
  1. 音楽依存症生活
  2. 88
  3. ヤキトリズム
  4. A.G.A.
  5. マイクロウェーブアタック
  6. ちょい獄おやじ
  7. How do you like the pie?
韻シストニューアルバム「HIPSTORY」 / 2013年9月25日発売 / 2625円 / LIL FARM / LFCD-1432
韻シストニューアルバム「HIPSTORY」
韻シスト 5TH Album「HIPSTORY」Release Party

2013年11月30日(土)東京都 代官山LOOP

2013年12月14日(土)大阪府 なんばHatch

打首獄門同好会(うちくびごくもんどうこうかい)

2004年9月に大澤敦史(Vo, G)、河本あす香(Dr)、高山明(B)の3人で結成。2006年3月の高山脱退を受け、同年11月にjunko(B)が加入し現在のメンバーが揃う。2009年5月には初の全国流通作品「庶民派爆弾さん」を発表。本格的なハードロック / メタルサウンドに生活感あふれる歌詞を乗せた“生活密着型ラウドロック”が注目を集め、幅広い支持を獲得した。同年7月に初の「FUJI ROCK FESTIVAL」出演を果たし、以降は数々の大型フェスやライブイベントで個性を発揮している。2013年9月には北海道・真駒内スタジアムにて開催された「水曜どうでしょう祭 UNITE 2013」に出演し一躍話題となった。同年10月にニューアルバム「一生同好会します」をリリース。

KenKen(けんけん)

1985年生まれ、東京都出身のベーシスト。ロックバンド「RIZE」、「Dragon Ash」、「WAGDUG FUTURISTIC UNITY」、「the day」、「獄門島一家」のベーシストとして活躍。そのカリスマ的な存在感と抜群のベースプレイは、音楽シーンの中で一目置かれている。ベース教則アプリ「KenKenが教えるベースギター #1」のリリースや、資生堂uno CM音楽を担当するなど、LIVE以外での音楽活動も多く、ゲーマーとして週刊 ファミ通で連載コラムページをもつなど、音楽業界のみならず多彩なセンスで幅広く活躍している。

韻シスト(いんしすと)

1998年5月に結成された、3MC+Bass+ Drum+Guitar+Saxのバンド編成によるヒップホップグループ。大阪を中心にライブ活動を展開し、2001年に1stミニアルバム「ONE DAY」を発表した。その後は「SUMMER SONIC」をはじめとするフェスやイベントに多数出演し、2006年10月に自主レーベルから発売したアルバム「FONKY & LOVE」はヒップホップの枠を超えて多くの音楽ファンに支持された。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はBASI(MC)、サッコン(MC)、TAKU(G)、syhou(B)、TAROW-ONE(Dr)の5人編成で活動中。結成15周年を迎えた2013年の9月には通算5枚目のフルアルバム「HIPSTORY」を発表した。