音楽ナタリー Power Push - TWEEDEES
ポップスが描くべき夢のかたち
「友達の歌」はTWEEDEES最大の成果
──「Winter's Day」は昨年冬のシングルですが、冬の歌というのは沖井さんがもともと得意としていたものですね。
沖井 はい。でも「Winter's Day」は僕がこれまで書いてきたどの冬の曲よりも、スケールが大きくて暖かいものになったなと自負しています。こういうことをやっちゃっていいんだなと僕が今思っていることがとても新鮮で。ひねりがまったくないじゃないですか、この作者。
──あはははは(笑)。はい。
沖井 家族で、もしくは1人で冬を迎える人のイメージがあって。そういう静かなクリスマスに意識が向いているのは、僕が歳を取ったせいなのか、TWEEDEESというものがそういうところに僕の目を向けさせているのか。
──おそらく今年も冬の歌を作るのでしょうし、タイミング的にはまさに作り始めている頃だとは思いますが……。
沖井 よくご存知で(笑)。
清浦 お見通し(笑)。
──そして今回のアルバムで一番の異色作と言える「友達の歌」と。曲調もタイトルも、2人が作る音楽として一番想像していなかったものですね。
沖井 この曲ができたことが、僕はTWEEDEES最大の成果だと思っています。「友達の歌」というタイトルを出してこられたとき、僕はこれしかない、こんな強いタイトルはないなと。なんのてらいもなく、このひと回り以上も違う女の子から「友達の歌」という言葉がストンと出てきたときにハッとしたんです。Cymbalsを始める前の僕には、こういう方向性の曲を書こうとしていた時期があって。でもスキルはないし、若さゆえのねじれもあったし、自分の温度湿度の管理がまだできていなかった。それがこのタイミングで……2ndアルバムでこのてらいのなさが出せるバンドってなかなかないと思うんですよ。
清浦 私も作れてよかったなと思いました。曲を聴いて「こういう景色が見たかった」と思ったんです。大きくて広いものもTWEEDEESには似合うんじゃないかと思っていて、この曲に、「友達の歌」という、シンプルだけど尊いものを閉じ込めておきたいって。
沖井 メロディを渡すときに1つだけ、「サビの出だしは『きみとぼくは』にしてほしい」とお願いしたんです。最初は難しそうにしてたけど、「わかった、風景が見えてきた」と言って上がってきたのがこの歌詞だったんですよ。「まさにこれが聴きたかった」という歌詞が上がってきて、私はとてもうれしかったです。
ポップスが描くべき夢
──そんな曲がアルバムのクライマックス、B面の4曲目というちょうどいいポジションに収まって、最後は「ムーンライト・フラッパー」で締めるという。ザ・アルバムな仕上がりになりましたね。
沖井 でしょ? 本音で終わって照れ隠しで締める、みたいな(笑)。これはこれで僕的にもびっくりナンバーで。まず僕はこの歌詞に度肝を抜かれました。絶対に僕の中からは出てこない歌詞。
清浦 チャラいですからね(笑)。
沖井 あなたは照れるからそう言うかもしれないけど、これこそがポップスだと思うんです。現実にこの歌詞で描かれているような経験をする人がどのぐらいいるか僕は知りませんが、これがたぶん“夢”だと思うんですよ。ポップスが描くべき夢。今の不景気な世の中で、こんな夢みたいな日常なんてないですよ。でも絶対に楽しいじゃん、この世界。僕にはそれを夢見る力はなくて、僕が夢見る世界はどちらかと言うと「速度と力」なんです。女の子だからこそ出てきた夢の世界かもしれませんが、僕は間違いなく清浦夏実が書いた歌詞の最高傑作だと思います。
清浦 ええー。
沖井 こういうきらめきのある、夢のあるポップスというのは……僕もいろんな楽曲を聴いてきたし書いてきたけれども、大好きなはずなのになんで出てこなかったんだろう、書けなかったんだろうと。キラキラした曲を書こうと思ったことは何度もあったけど、こうはならなかったし。これは最後、マスタリングの直前にできた曲なんですけど、これができるんだったら、もっといろんなことができるなと。TWEEDEESのいちファンとして、僕はこの曲を聴いて、このバンドに対してすごく期待が高まりました。
──TWEEDEESのワンマンライブでは開演前に必ず、きらびやかなサウンドのイージーリスニングや映画音楽をかけてますよね。あの風景と直結した曲をTWEEDEESで作ったのがこの曲なのかなと。
沖井 こういうアールヌーヴォー的な世界観は、TWEEDEESを始める前、チャットで会話を交わしている段階ですでに出てきていた共通のイメージだったんですけど、こんなにド真ん中で落とし込める日が来るとは思わなかったので、とてもびっくりしています。
──なるほど。こうやって1曲ずつ話を聞いていくと、バンドとして新しい発見がバンバン生まれた作品なんだなとわかりますし、それが10曲入りアルバムというコンパクトな作品としてまとまっているのがいいなと思います。
沖井 10曲42分という、完全にアナログ向きなサイズですね(笑)。
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- 2ndアルバム「The Second Time Around」2016年7月20日発売 /日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / COZP-1218~9
- 通常盤 [CD] 3024円 / COCP-39649
CD収録曲
- 速度と力
- STRIKERS
- PHILLIP(feat.ikkubaru)
- 私の悪い癖
- バタード・ラム
- melody
- Baby, Baby
- Winter's Day
- 友達の歌
- ムーンライト・フラッパー
初回限定盤DVD収録内容
- 「The Adventure of the TWEEDEES 2015-2016」(ドキュメンタリー&インタビュー映像)
- 「KLING! KLANG!!」(ミュージックビデオ)
- 「Winter's Day」(ミュージックビデオ)
- 「Baby, Baby」(ミュージックビデオ)
TWEEDEES インストアライブ&サイン会
- 2016年7月20日(水)
東京都 TOWERmini汐留店 イベントスペース - 2016年7月24日(日)
東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース - 2016年7月30日(土)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース - 2016年7月31日(日)
愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店(名古屋パルコ西館1階イベントスペース)
TWEEDEES 2ndアルバム"The Second Time Around" リリース記念ライブ「ショウほど素敵な商売はない vol.2」
2016年8月10日(水)
東京都 TSUTAYA O-WEST
OPEN 18:30 / START 19:30
料金:前売 3500円 / 学割 2500円 / 当日 4000円(ドリンク代別)
TWEEDEES(トゥイーディーズ)
シンガー清浦夏実と作曲家・音楽プロデューサー沖井礼二によるバンド。2015年1月にバンド結成を発表し、同時にオリジナル楽曲「KLING! KLANG!!」を配信限定シングルとしてリリースした。同年2月には東京・Future SEVENにて初ライブ「TWEEDEES Premium Show」を行い、3月に1stアルバム「The Sound Sounds.」を発表。その後は自主企画イベントや音楽フェスなどへの出演を重ねる。11月には初のシングル「Winter's Day e.p.」をアナログ7inchで発表。同時に1stアルバム「The Sound Sounds.」のアナログ盤も発売された。2016年7月に2ndアルバム「The Second Time Around」をリリース。