音楽ナタリー Power Push - TWEEDEES
ポップスが描くべき夢のかたち
シンガー清浦夏実と作曲家・音楽プロデューサー沖井礼二によるバンド、TWEEDEESが2ndアルバム「The Second Time Around」を完成させた。それぞれ過去のキャリアを経て、手探りで始めたバンド活動。2ndアルバムは、2人がTWEEDEESの始動からおよそ1年の間に起きた変化が如実に反映された1枚となった。インタビューではバンド始動からアルバム制作に至るまでの流れと心境の変化についてじっくりと話を聞いた。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 西槇太一
我々もTWEEDEESに慣れてきた
──前回のインタビューは1stアルバム「The Sound Sounds.」完成直後で(参照:TWEEDEES「The Sound Sounds.」インタビュー)、ライブもまだ。どのように世間に受け入れられるか想像もできない状態で話してもらいました。
沖井礼二 ええ。
──2年以上の試行錯誤を重ね、途中でバンド名まで変えるほどに綿密な準備を経ての船出でした。実際に動き出してからの感触、実感はいかがでしたか?
沖井 ステージに立てば、お客さんからのリアクションが直接返ってくる。それに、昔はなかったTwitterでのリアクションもある。みんなも同じかもしれませんが、エゴサの鬼になるわけですよ(笑)。どう思われ、どう聴かれているのか。僕の予想に反して、いい反応をしてくれているのは、Cymbalsのファンよりも、僕のことをあまり知らなかったであろう新しいお客さんのほうが多かったんですね。それがうれしくて。高校生ぐらいの人がTwitter越しに僕に話しかけてくるわけですよ。新人バンドとして正しい受け入れられ方をしたなあと。
──確かにライブの客層を見ると、リアルタイムでCymbalsを通ってきたであろう世代よりも全体に若い印象がありますね。
沖井 あと僕としては、1年間でこれだけまとめてライブをやったのもひさしぶりで、この人(清浦)に至ってはソロ時代にはライブを数回しかやってなくて。この1年でそれまでのライブ本数をとっくに超えてると思いますけど。
清浦夏実 うん。超えてますね。
沖井 ライブというのは、自分たちが人にどう見えているのか、思われているのか、自分たちがどう見られたいのか、思われたいのか……そういう思いの坩堝みたいなところだから、そこで発見したものはやはりたくさんあって。1年前とは自分たちの在り方が、自分たちにとって変わったなという気がします。落ち着いたよね。
──落ち着いた?
沖井 お互いこれまでの活動があってのセカンドキャリア、というつもりで始めたので、やっぱりこれまで作ってきた土台の上に立っているから足下がグラグラしていたわけですよ。その土台がストンとなくなって、TWEEDEESとして立てたという落ち着き。去年の秋にやった北川(勝利 / ROUND TABLE)との対バン(参照:TWEEDEESと北川勝利、盟友ツーマンで清浦夏実「忘れさせてあげる」)あたりかな。そこでグラグラした感じがなくなった気がする。
清浦 わかる。ライブをやっていて、どんどん鈍感になっていく自分がいて。最初は周りの目とか、どんな評価をされるんだろうと気になっていたのが、ライブで試行錯誤をしていくうちに、少しずつ……我々もTWEEDEESに慣れてきたというか、モードが作れるようになってきましたね。
──TWEEDEESの看板が板に付いてきたと。
沖井 うん。日常生活の中心がもうTWEEDEESですからね。オフの日でも考えているのはTWEEDEESのことばかりだし。
「Cymbalsのこと忘れさせてあげる」
──では一番想定外だったのは?
沖井 いい質問ですね。なんだろうな……さっき言った北川との対バンで、Cymbalsの「怒れる小さな茶色い犬」という曲をTWEEDEESで演奏したんです。懐かしさで盛り上がってくれるお客さんはいたけれども、僕は意外と楽しくなかった。それは「ちくしょう、昔の曲で盛り上がりやがって」ということではなくて、演っていて今の自分にリアリティがなかったんですよ。曲に入り込めない。それに比べたらTWEEDEESの曲は自分にしっくりきて、演奏していて楽しいんですよね。「怒れる~」はCymbalsの曲の中でも好きなほうだったし、あの曲が入ったアルバム(2003年5月発売の4thアルバム「Love You」)をリリースしてすぐにCymbalsは解散してしまったから、なんとなく「もったいないな」という気持ちがあったんです。Cymbalsがなくなった今も演りたい曲の筆頭だったのに、演ってみたら思いのほか楽しくなかった。
──沖井さん自身が想定していた以上に、自分が更新されていた?
沖井 そうかもしれないし、単に曲の鮮度が落ちているのかもしれない。それよりは、今作っている曲のほうが楽しいんだよなあ。そこに気付いたときは、自分でもびっくりしましたね。いい曲はいつ演ってもいいもんだと思ってたから。
──あの日のライブで、「怒れる小さな茶色い犬」で盛り上がる観客に向けて清浦さんが放った「私がCymbalsのこと忘れさせてあげるから! Cymbalsよりもほかのバンドよりも、TWEEDEESをもっともっといいバンドにしていくから!」という発言は、TWEEDEESというバンドにとって大きな歴史の1ページだなと思います。
清浦 うーん。あの日のライブは私にとって、ちょっと悔しさの残るものなんです。本当にそう思ったから言ったんですけど、あれは言葉じゃなくってパフォーマンスで示せないとダメなんじゃないかなって。ちゃんと態度で示したかったし、そこまで至ってない自分があんなことを……と、思い出すだけで「ああああっ!」ってなっちゃう(笑)。
──あのひと言で、ただのセカンドキャリアではないTWEEDEESが動き出したとも言える、名場面だったと思いますよ。
清浦 いやあ、お恥ずかしい限りです……。
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- 2ndアルバム「The Second Time Around」2016年7月20日発売 /日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / COZP-1218~9
- 通常盤 [CD] 3024円 / COCP-39649
CD収録曲
- 速度と力
- STRIKERS
- PHILLIP(feat.ikkubaru)
- 私の悪い癖
- バタード・ラム
- melody
- Baby, Baby
- Winter's Day
- 友達の歌
- ムーンライト・フラッパー
初回限定盤DVD収録内容
- 「The Adventure of the TWEEDEES 2015-2016」(ドキュメンタリー&インタビュー映像)
- 「KLING! KLANG!!」(ミュージックビデオ)
- 「Winter's Day」(ミュージックビデオ)
- 「Baby, Baby」(ミュージックビデオ)
TWEEDEES インストアライブ&サイン会
- 2016年7月20日(水)
東京都 TOWERmini汐留店 イベントスペース - 2016年7月24日(日)
東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース - 2016年7月30日(土)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース - 2016年7月31日(日)
愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店(名古屋パルコ西館1階イベントスペース)
TWEEDEES 2ndアルバム"The Second Time Around" リリース記念ライブ「ショウほど素敵な商売はない vol.2」
2016年8月10日(水)
東京都 TSUTAYA O-WEST
OPEN 18:30 / START 19:30
料金:前売 3500円 / 学割 2500円 / 当日 4000円(ドリンク代別)
TWEEDEES(トゥイーディーズ)
シンガー清浦夏実と作曲家・音楽プロデューサー沖井礼二によるバンド。2015年1月にバンド結成を発表し、同時にオリジナル楽曲「KLING! KLANG!!」を配信限定シングルとしてリリースした。同年2月には東京・Future SEVENにて初ライブ「TWEEDEES Premium Show」を行い、3月に1stアルバム「The Sound Sounds.」を発表。その後は自主企画イベントや音楽フェスなどへの出演を重ねる。11月には初のシングル「Winter's Day e.p.」をアナログ7inchで発表。同時に1stアルバム「The Sound Sounds.」のアナログ盤も発売された。2016年7月に2ndアルバム「The Second Time Around」をリリース。