ナタリー PowerPush - つづくバンド
都筑祥吾が「眠らぬ街」で見た景色
誰の影響も受けてない
──最初に、バンドをやり始めたのはなんとなくカッコいいと思ったからだと言ってましたけど、その気持ちは今でも変わらない?
いや、さすがに今はそうは思わないですね。だから特に理由はないんですよ。何も続けられない自分が続けられたものがバンドだったというだけで。ただそういう意味では、自分にとって代えのきかないものであって。
──バンドじゃなく、1人で歌おうと思ったことは?
まったくないですね。
──でも、都筑さんがやってるつづくバンドという、ワンマンバンドとしか思えないバンド名で。自分の名前がここまで前面に出ていても、あくまでもバンドにこだわり続けるその理由は?
なんだろう……やっぱり、最初に憧れてたものだったからなのかな。自分が前で歌ってて、そのバックに演奏者がいてっていう、そういうイメージはまったく湧かないですね。
──ものすごくストレートなギターバンドでありながら、特定のバンドからの影響をまったく感じさせないのも不思議なんですよね。好きなバンドとかいないんですか?
うーん……例えば、ここでレッチリが好きですとか言っても、何の意味もないと思うんですよね。好きなものとやりたいものは違うっていうか。俺がアンソニーみたいにタンクトップを着て肌を出してもね、っていうのもあるし。だから、影響受けたっていうのはないですね、ほんとに。
──今、「ここからは入るな」っていう見えない線を確かに感じましたよ(笑)。普通だと、別に好きなバンドについて話すとき、それが自分と関係あるかどうかなんてあまり考えないと思うんですよ。でも都筑さんの場合、「レッチリが好き」と言ったら、「お前、アンソニーと全然違うじゃん」って言われることまで想像してしまうという。きっと、そういう予防線を隅々まで張り巡らせることによって、気がついたら、あらゆるものを削ぎ落としたニュートラルなギターロックになっていたってことなんじゃないですか。
そうかもしれないですね。
“負けている自分”が曲作りの原動力
──「一人はぐれた俺は / 水の中でしか / 生きられないだろう」と歌う「水中」という曲に都筑さんの、他人と同じ空気を吸っていてもまったく別のものに包まれているという感覚がすごく表れていると思ったんですけど。バンドをやって、デビューして、人前で演奏して、こうして何万人もの人が目にするサイトで取材を受けている、この過程というのは都筑さんにとってはその水の中から出るプロセスなんでしょうか? それとも、これからもその水の中でずっと音楽を作り続けていくんでしょうか?
後者ですね。水の中から見上げている目線。その目線の先にあるものが、自分にとっての世界なので。自分はすべてに負けてると思っているので。
──でも地べたに這いつくばっているというよりも、勝手に水の中に入って、そこで沈んでる感じですよね。
それが自分にとって曲を書くときの原動力だから。それがなくなっちゃったら、もう歌うことがなくなる。このままでいたいっていうわけじゃないんですけど、きっと音楽を続けていく限りそこは変わらない気がするんです。
──ある意味、負けている自分をすごく肯定してますよね。
そうなんです。下から見上げていながらも、俺はお前らとは違うぞっていうのがどこかあるんです。
──そこは矛盾を孕んでいますよね。世の中に対して、怒りとか恨みみたいな感情もない?
ないですね。言ってみればすべてが現実ではないような気がするんですよ。全部は自分の中にある景色であって、そこに現実感がないんです。
──ときどき自分のことも他人事みたいに感じたりしません?
ああ、ありますね。
──自分にもちょっと身に覚えがありますけど、そういうのって、歳とともに変わっていくこともあると思いますよ。
それは……まずいですね。変わったら音楽が作れなくなる(笑)。
- 1stフルアルバム「眠らぬ街」/ 2013年5月15日発売 / 2625円 / DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT / UKDZ-0144
-
収録曲
- 眠らぬ街の眠れぬ夜
- LOOP
- 水中
- 唇
- サルの剥製
- ドリーミンドリーミン
- 虹のふもと
- 105号室
- 未来のバトン
- 僕らの夜明け
つづくバンド
都筑祥吾(Vo, G)、飯沢幸大(G)、尾日向優作(Dr)によるロックバンド。地元・長野の高校を中退し上京した都筑を中心に結成。2012年初頭から本格的な活動を開始し、同年8月にミニアルバム「始まりの群像」を発表した。2013年5月に初のフルアルバム「眠らぬ街」をリリース。現在はサポートベーシストにtatsu(LA-PPISCH)、キタダマキ(ex. Syrup16g)、三浦謙太郎(BAZRA)を加えライブ活動を行っている。