ナタリー PowerPush - つづくバンド
都筑祥吾が「眠らぬ街」で見た景色
つづくバンドが初のフルアルバム「眠らぬ街」をリリースした。新人離れした独特な存在感を持つ彼らが描くのは、輝く街にひそむ“影”の物語。作品に込めたその感情について、フロントマンの都筑祥吾(つづくしょうご)に話を聞いた。
取材・文 / 宇野維正 撮影 / 宮腰まみこ
バンドをやってる人が楽しそうに見えた
──インタビューの前にスタッフの方から「声が小さいので気をつけてください」と言われたんですけど、声が小さいだけで、別に人見知りではない?
ああ、えっと。
──人見知りでもあると。
はい。
──「だれかがこんなことを言っていたのを聞いた / バンドなんて今は時代遅れだよと」(「未来のバトン」)と歌ってるじゃないですか。でも、都筑さんはバンドをやろうと思った。そのきっかけはなんだったんですか?
いや、僕が中学生の頃は、まだバンドをやってるのはカッコよく見えたんです。いい面だけしか見てなかったんだろうけど、単純にカッコいいから自分もやってみたいなとか、たぶんそんな感じで。だから最初はほんとに遊びの延長のような感じで始めましたね。
──音楽をやりたいというより、バンドをやりたかった。
そうですね。
──今、21歳ですよね。都筑さんが中学生くらいのとき、周りの人たちがよく聴いてたバンドっていうと、具体的にはどのあたりのバンドのことを指すんだろう?
アジカンが出てきて、ギターロックのバンドが流行って。あとはELLEGARDENとかストレイテナーとかですかね。
──じゃあ、自分もそういうバンドに触発されて?
いや、そういうのを聴いてた人たちが周りでバンドをやっていて、ギターを担いでリハスタに入ってみたいな、そういう姿がすごく魅力的に見えて。だから、その時点では音楽がやりたいとかじゃなくて、バンドやってる人が楽しそうだったから、自分もやってみたくなったっていう。
──昔はモテるためにバンドをやるっていう行動原理がわりと当たり前にあったんですけど、その時点ではまだそれは有効だったんだ。
そうですね。それもありました(笑)。
ただ高校に行きたくなくて
──地元は長野の松本で、高校に入学して、すぐに高1で中退したとプロフィールにあるんですけど、これは音楽の世界を志すために高校を辞めたということ?
いや、違います。ただ高校に行きたくなくて。中学のときから、高校に行って、大学に進んで、それで就職してっていうのは、ちょっと自分には考えられなくて。
──とはいえ、中退するのもエネルギーがいるじゃないですか。しかも高1でっていうのは。
ずっと親に高校は行きたくないって言ってて、でもとりあえず行くだけ行けって言われて行って。で、行ってみてやっぱり必要なかったから辞めるって。
──不登校の期間があって、そのあとに辞めたという感じ?
いや、スパッと辞めました。不登校は中学のときにちょっとあって。でも普通の人がイメージするような暗い不登校じゃなかったですね。学年で副会長とかもやってて、学校生活もけっこう楽しかったんですけど、ふと1カ月急に行かなくなったりして。親も心配してましたけど、特に理由は何もないんですよ。
──じゃあ、学校の中ではわりと人気者だった?
まあ、友達はわりと多かったですね。
──じゃあ、高校でも友達がいなかったというわけでもなかった?
そうですね。みんなが授業終わった時間に、ちょっと学校に顔を出してとか。なんだったんだろうな。単に継続ができないだけなのかな。
──いわゆる不良だったわけでもなかったんですよね?
全然。
──その後、しばらく地元にいて、仲間とバンドをやって、そこから東京に出るまでは?
ほかのメンバーは普通に高校行ってたんで、卒業するまでは地元でバンドをやってて。その時点では、別に将来のことは考えてなかった。
──で、みんなが高校を卒業して1人になって、必然的に東京に出てきたと。
1人になったというか、もともとそれは遊びでスタートしたバンドだったから。で、俺は東京で新しいバンドをやることにして。
- 1stフルアルバム「眠らぬ街」/ 2013年5月15日発売 / 2625円 / DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT / UKDZ-0144
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収録曲
- 眠らぬ街の眠れぬ夜
- LOOP
- 水中
- 唇
- サルの剥製
- ドリーミンドリーミン
- 虹のふもと
- 105号室
- 未来のバトン
- 僕らの夜明け
つづくバンド
都筑祥吾(Vo, G)、飯沢幸大(G)、尾日向優作(Dr)によるロックバンド。地元・長野の高校を中退し上京した都筑を中心に結成。2012年初頭から本格的な活動を開始し、同年8月にミニアルバム「始まりの群像」を発表した。2013年5月に初のフルアルバム「眠らぬ街」をリリース。現在はサポートベーシストにtatsu(LA-PPISCH)、キタダマキ(ex. Syrup16g)、三浦謙太郎(BAZRA)を加えライブ活動を行っている。