アイデアに袖を通してみる
──そしてスカパラと洋平さんのコラボ曲はすでに第2弾も完成しています。「劇場短編 仮面ライダーセイバー」の主題歌「多重露光 feat.川上洋平」の聴きどころは?
加藤 この曲は昭和歌謡っぽいメロディなんだけど、洋平くんが今のテイストで歌唱してくれて曲全体がアップデートされた気がします。こんなふうに歌ってる洋平くんはみんな聴いたことないと思う。“新しい川上洋平”を聴いてもらえるはずです。
洋平 引き出していただきました。
──シャッフルビートにパンチのあるホーンが乗った、これぞスカパラといった楽曲ですよね。
洋平 すごくスカパラっぽいサウンドなんですけど、でも歌ってみたらすんなり素直に歌えたんですよね。それはたぶん僕がスカパラを昔から聴いてたからだと思う。歌っててほんと気持ちよかったし楽しかったです。
──確かにスカパラと一緒にやってる洋平さんはすごく楽しそうですね。自由に解き放たれている印象があります。
洋平 はい、むちゃくちゃ楽しいです(笑)。最初のリハの日が僕の誕生日だったんですけど、バースデーソングの生演奏で迎えてもらったんですよ。こんな幸せなことあるのかっていう。
谷中 ケーキも用意しろよって話ですけどね(笑)。
洋平 あと楽しいだけじゃなく勉強にもなるんです。自分のバンドに戻ったとき「スカパラさんの現場こんな感じだったんだよ。俺らもちょっとやってみようよ」とか言ったりして。現場の盛り上げ方とかをめちゃめちゃ学びました。メンバーのアイデアを否定しないでまずはやってみるとか。
谷中 それぞれのアイデアにまず袖を通してみるってことだね。吊ってある洋服を見て「似合わないな」と思っても、着てみたらよかったみたいなことってあるじゃん。
洋平 今作っている[Alexandros]の新曲でも、僕があまり注文をつけないでメンバーから自然に出てきたフレーズを採用したりしてるんです。そのときは「もっとこうしたら?」って言いたくなるんですけど一度抑える。で、次の日に聴いてみたら「あ、やっぱり言わないでよかった」「これ好きだな」って思えたりして。
──これからの[Alexandros]の変化が楽しみですね。
洋平 もうすでに変わってますからね。
谷中 でもそれで言うと僕らもそうですよ。洋平くんに来てもらったおかげで気付けたことがいくつもある。
加藤 バンドを長く続けていくと逆に見えなくなってくるものもあるもんね。
谷中 コラボレーションって、カードゲームで言うとお互いに手札を見せ合っていい手を作る作業じゃないですか。手の内を隠さず全部見せ合わないと、いい曲はできない。その手札の見せ合いが楽しいんですよね。
洋平 僕たちがデビュー10周年のこのタイミングでご一緒できてよかったです。もし5年前だったら全然いいカード持ってなかったかも(笑)。今だから、僕もある種の自信を持って歌えたのかなって思います。
フィーチャリングボーカルを選ぶ基準
──それにしてもお互い昔から相思相愛だったところに、このタイミングで「仮面ライダー」の話が来たのは運命的なものを感じますね。
つよし そう、フィーチャリングボーカルに関してはやっぱりタイミングが大事なんですよ。お互い一緒にやりたいと思ってても、例えばこっちが今からアルバム出して新しい展開をやっていくぞっていうときにはできない。逆に、例えばバンドのボーカリストがソロ活動を始めるタイミングだと歌ってもらいやすかったりして。
谷中 エレファントカシマシの宮本(浩次)くんはそれだよね。
つよし 1年前だったらダメだったかもしれない。
加藤 (甲本)ヒロトさんもちょうどTHE HIGH-LOWSとザ・クロマニヨンズの間のタイミングだったし。
──素朴な疑問なんですが、スカパラがフィーチャリングボーカルを選ぶときの基準みたいなものはあるんですか?
洋平 あ、それちょっと知りたいですね。
──単に歌がうまいとか人気があるとか、そういうことじゃないわけですよね。
つよし ああ、それで言うと純粋なシンガーの人じゃなく、自分で作っている人を選ぶことが多いですね。自分で作詞作曲してる人をあえて選ぶ。で、詞も曲も全部こっちが提供する。
──なるほど。それは意識してやってるんですか?
つよし 自然とそうなってるよね。でもそういう人のほうがこっちの思惑通りにいかなくて面白く進化していくんです。
加藤 やっぱり僕らの側もプロデュースされたい気持ちがあるんじゃないですかね。その人のフィルターを通して、スカパラのサウンドを変化させてほしいと思ってる。例えば洋平くんをスカパラに迎えることによって、[Alexandros]が大事にしているもの、僕は“秘伝のタレ”って呼んでるんだけど、それが見えてくるんですよね。お互いに得るものがたくさんある。だからそういう意味では自分の作品を作ってる人、アーティスト性の強い人と演るほうが、いろんな化学反応が生まれて楽しくやれる気がする。
──でも相手のアーティスト性が強ければ強いほど、ぶつかったりしてうまくいかない可能性も増すんじゃないですか?
谷中 不思議と失敗の可能性をあんまり考えないよね(笑)。
つよし そうだね、みんなポジティブだ。
谷中 ミーティングのときはジャンル問わず本当にいろんな人の名前が挙がりますよ。でも相手が誰でもスカパラのメンバーは成功しか信じてない。
加藤 確かに(笑)。
谷中 だから俺だけ悩んでたりするんですよ。aikoちゃんの名前が出たときも「あのaikoちゃんにどんな歌詞書いたらいいんだろう」って顔面蒼白になってる中、みんな「絶対にうまくいくよ!」とか言ってる。もうそういうのも楽しくなってきましたけどね(笑)。
──お互いにとっていい経験になっているわけですね。
谷中 完全にそうですね。いい経験になったねってあとから思えるだろう人を選んでいるのかもしれない。
加藤 ずっと同じ場所にとどまっているバンドは廃れるだけだと思うので、絶えず新しいトライをしてスカをバージョンアップさせていくこともスカパラの大事な役割だと思うんです。アルバムではオーセンティックなスカもやってるけど、特にコラボシリーズやシングル曲では今の時代のスカを更新していきたい。それは裏テーマとしてありますね。
──スカパラらしい攻めの姿勢ですね。
加藤 あと毎回そうですけど、いいコラボ曲ができることによって、コラボじゃない曲のハードルもどんどん上がってくるんです。この秋に「Great Conjunction 2020」っていうインストの配信シングルをリリースしたんですけど、それも今まで以上に密度の濃い作品に仕上がったと思っていて。そういう意味でもコラボからは大きな力をもらっています。
谷中 うん、歌モノに負けてられないもんね(笑)。
ツアー情報
- 東京スカパラダイスオーケストラ TOUR 2021 「Together Again!」
-
- 2021年1月14日(木)埼玉県 川口総合文化センターリリア
- 2021年1月17日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2021年1月20日(水)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2021年1月21日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2021年1月23日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2021年2月7日(日) 千葉県 千葉県文化会館
- 2021年2月12日(金)広島県 上野学園ホール
- 2021年2月14日(日)大阪府 フェスティバルホール
- 2021年2月15日(月)大阪府 フェスティバルホール
- 2021年2月19日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2021年2月21日(日)新潟県 新潟テルサ
- 2021年2月25日(木)東京都 東京ガーデンシアター
- 2021年3月21日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2021年4月3日(土) 富山県 オーバード・ホール
- 2021年4月4日(日) 長野県 まつもと市民芸術館
- 2021年4月8日(木) 福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
- 2021年4月22日(木)岡山県 岡山市民会館
- 2021年4月24日(土)愛媛県 愛媛県県民文化会館
ライブ情報
- [Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館
"Where's My Yoyogi?" -
- 2021年1月19日(火) 東京都 国立代々木競技場第一体育館
- 2021年1月20日(水) 東京都 国立代々木競技場第一体育館