東京スカパラダイスオーケストラが川上洋平([Alexandros])をフィーチャリングボーカルに迎えたニューシングル「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」を12月23日にリリースした。
表題曲は、テレビ朝日系で放送中の「仮面ライダーセイバー」の主題歌として書き下ろされたナンバー。華やかで力強いブラスサウンドに彩られたこの曲で、川上洋平は人間の意識に秘められた“ALMIGHTY(=全能、無限の力)”を高らかに歌い上げている。
シングルリリースを記念し、音楽ナタリーでは表題曲の作曲を担当した川上つよし(B)、CDにカップリング収録された「仮面ライダーセイバー」のエンディングテーマ「仮面ライダーセイバー」を作曲した加藤隆志(G)、2曲の作詞を手がけた谷中敦(B.Sax)、そして川上洋平の4人にインタビュー。スカパラ流の「仮面ライダー」テーマソングはどのようにして完成したのか、話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / NORBERTO RUBEN
ボーカリストとして名誉なこと
──「ALMIGHTY~仮面の約束」はスカパラと洋平さんそれぞれの魅力が存分に詰まった仕上がりになりました。コラボのきっかけはなんだったんでしょう?
谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ / B.Sax) 洋平くんとは何年も前から一緒にやりたくて機会を探ってたんですけど、今回「仮面ライダー」のお話をいただいて「ここだ!」と。日本で一番スタイリッシュな男に「仮面ライダー」の曲を歌ってもらおうと思ったんです。
──楽曲は依頼を受けてから書き下ろしたんですか?
加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ / G) 曲のモチーフ自体は川上(つよし)さんが以前作っていたデモがあって、オファーをいただいてからそれをもとに完成させました。でも最初のデモテープの段階から「この曲は洋平くんに歌ってほしいね」って話はみんなでしてたんですよ。
川上つよし(東京スカパラダイスオーケストラ / B) 実はこれ、もともと男っぽい冒険活劇のテーマ曲をイメージして作ってた曲なんです。そこにちょうど主題歌の話をもらったんで「これでいこう!」と。
──洋平さんはスカパラからのオファーを受けてどう思いました?
川上洋平([Alexandros] / Vo, G) とにかくうれしかったですね! スタジオにいたときだったのかな? マネージャーからLINEで知らされて興奮しました。その場でメンバーに「みんな、聞いてくれ!」と。
一同 あはは!(笑)
洋平 メンバーも以前から「いつか洋平がスカパラと歌える日が来るといいね」と言ってくれてたんです。バンドのボーカリストとして名誉なことだからって。だから快く「行ってこい!」と送り出してくれました。
加藤 うれしいね。
つよし いいバンドだなあ。
みんなで一緒に作っていった
──完成した楽曲は、スカパラらしさと[Alexandros]らしさが見事に調和していますね。
加藤 洋平くんのボーカルをスカとどう融合させていくかについてはずっと考えてたんですけど、僕らが南米でツアーするようになってからラテンビートとスカの親和性に気が付いて。[Alexandros]の「ワタリドリ」もラテンビートを感じる曲だったので、そこはいい接点になるなという発想はありました。
──そこを手がかりに制作を進めていった。
加藤 うん、川上さんの作るメロディにラテンビートがすごく合うんです。
──それにしてもボーカルは相当キーが高いですよね。
洋平 高いですね(笑)。
加藤 すいません、「洋平くんのボーカル、半音上げたキーで聴いてみたいな」って言ったのは俺です(笑)。
──それで実際半音上がったんですか?
つよし 最初Amで作ってたんですけど、結局Bmまで上がりましたね。
加藤 こだわってたのはサビの「♪ALMIGHTY~」の「オー」の音だったりするんですよ。みんなが聴きたい洋平くんの声はこの音だろうなって。
谷中 サビのことを考えるとあのキーになるよね、やっぱり。
つよし あとイントロと間奏は最初ホーンでメロディを吹く予定だったのに、あそこに歌を乗せようってことになったからずっと歌いっぱなしになってしまって(笑)。
──「♪The saber in your hand~」と「♪人はいつも~」の部分ですね。洋平さん自身は実際に歌ってみてどうでした?
洋平 確かにキーは高いんですけど、そんなに無理はしてないです。一緒にリハをしながら変えていった部分がけっこうあるので。歌いやすく、僕仕様に仕立てていただいたというか。
──全部用意してあって「このとおり歌ってください」じゃないんですね。
洋平 そうなんです。リハで実際に歌いながら「今の感じよかったから採用しよう」とか「歌いにくそうだからここ変えよう」とか。バンドに参加して一緒に作っていけたのはありがたかったです。
つよし 最後の「♪未来」もリハで変えた部分ですね。僕はオクターブ下のメロディを書いてたんで、上に行くとは思わなかった(笑)。
谷中 譜割りを変えたところもあったよね。Aメロの「♪密やかな~」のところ、俺は「ひそーやかな」だと思ってたんだけど、洋平くんが「ひそやーかな」にしてくれて、そっちのほうが全然いいやと思って。さすが! 採用!って(笑)。
洋平 おかげで歌いやすい譜割りになってるんですよ。なんの不安もなく本番のレコーディングに臨めました。
谷中 洋平くんがスカパラを信頼して、リラックスして参加してくれたことがすごく力になってます。
加藤 特に今年はコロナ禍だったんで、そんな中で洋平くんというゲストを迎えて、会って一緒に作れるっていうだけでもこっちは相当うれしかったし、テンション上がりましたね。スカパラの音楽は顔を合わせて音を出し合ってこそなんだよなってことを再確認しました。
スカパラという約束
──この曲は歌詞にも驚かされました。谷中さんらしい言葉の中に、物語のテーマがしっかり織り込まれていますね。
谷中 今回の「仮面ライダー」は主人公が作家という設定なので番組サイドから「本と約束」というテーマをいただいて歌詞を書かせてもらいました。物語の世界観に沿う歌詞で、同時にやっぱり谷中の魂も入っている。そういうことが普通にできているのは自分が大人になったからかもしれないです。
──特に気持ちを込めたフレーズはありますか?
谷中 「♪孤独の黒い字で 描かれた叡智が 時を超え語るとき 約束の価値を知る」っていう、この2行に全部表れている気がします。本というのは過去を生きる作家が、夜中とかに孤独の中で書き上げたもので、だから本を読むときに人は過去の孤独と対峙することになるわけで。
──「約束の価値を知る」という部分は?
谷中 スカパラってもの自体が約束ですからね。自分たちはスカパラのメンバーだから会えないときも一緒にいられる。もしスカパラという約束がなかったらバラバラな気持ちのままだったと思うし、自分はそこにすごく助けられてるんです。そうした約束が時間も距離も超えていく。その人間の意識の力こそが「ALMIGHTY(=全能、無限の力)」なんだという気持ちを歌詞にしてみました。
──洋平さんは歌詞を読んでどう感じましたか?
洋平 初めて読んだとき、コロナ禍真っ只中にここまで抗おうとする、闘う姿勢を感じる曲は珍しいし、ぜひ歌いたいなと感じました。どちらかと言うと慰めや癒やしの曲がその時期には多くて、それはそれで素敵だったんですけど、やっぱり抗う姿勢をどこかで欲していた部分があった。こういう状況に対して「仕方ないね」じゃなくて「勝ちに行こうぜ」って言いたかったから。
サビの歌詞は「仮面ライダーセイバー」
──今回は番組のエンディングテーマもスカパラが担当していますが、こちらはかなりの異色作になりました。タイトルがずばり「仮面ライダーセイバー」。サビで「♪仮面ライダーセイバー」と高らかに歌い上げています。
つよし こっちがオープニングっぽいという声もありますね(笑)。
加藤 戦闘シーンをイメージして書き下ろしました。これを欣ちゃん(茂木欣一)が歌うのも面白いなと思って。
──茂木さんの歌い方も曲調も昭和特撮ヒーローの主題歌のようです。
加藤 昭和感満載ですよね。
谷中 ホーンセクションも昭和感あるんだよね。
──曲の途中では「変身!」などのセリフも入ります。
加藤 セリフは全部川上さんです。
つよし ラップ?って言われるんですけどラップじゃなくてナレーションのつもりで。
──「炎は熱い信念と情熱、悪を燃やす力~」というセリフ部分ですね。あれは番組からのリクエストで入れたんですか?
つよし いや、まったくそういうのはなくて(笑)。
──え、じゃあ自分たちの判断で?
つよし あとサビの歌詞で「♪仮面ライダーセイバー」って歌い込んでるのも、何も言われてないです(笑)。
──番組タイトルを入れてくれと言われたわけではない?
加藤 言われてないんですよ(笑)。メロディに合わせて谷中さんが「仮面ライダーセイバー」って歌詞を書いてきた。
谷中 ピッタリだったんだよね。
つよし タイトルを歌い込んでるテーマ曲、最近あんまりないけどね(笑)。
谷中 自分が幼少期に「仮面ライダー」からエネルギーをもらったから、その恩返しをしたかったんです。「変身!」という言葉1つで「強くなれるんだ、カッコよくなれるんだ」と思った。子供の頃すごく勇気をもらっていたんで。
加藤 オープニングに気合いを込めたから、その分エンディングはリラックスしてちょっと遊べたのかもしれないですね。スカパラはもともと「ルパン三世」のカバーをやったりもしてるし、スカバンドはそういうのあるんですよ。The Skatalitesが映画「007」のテーマを演ってたりとか。
つよし 屈託なく、なんでもやるんです(笑)。
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