東京スカパラダイスオーケストラ|「まだまだ面白いことがあるかもしれない」未知数なスカパラの30年と向かう先

「こんないいもの撮れねえよ」海外での初の手応え

──ベルリンのカウントダウンライブもそうですが、スカパラの歴史を語るとき、海外ライブのエピソードは欠かせないですよね。

谷中敦(Baritone Sax)

谷中 うん、まず2003年に出たフランスの「Les Eurockeennes(ユーロキーン)」というフェスは、スカパラの海外活動では大きいポイントでしたね。

NARGO それまでは海外でライブをやっても「どうかな、これ身になってるのかな?」って思うこともあったんですけど、その日はものすごかった。

──スカパラは国内フェスだと常勝のイメージしかないですが、海外ではうまくいかないときもあったんですか?

NARGO ありますあります(笑)。もう地を這うような、試行錯誤ばっかりです。でもあの日はグワーっと人が増えていって。

茂木 スカパラの存在を全然知らない人たちの前で演奏して、だから本当に音と動きだけの真剣勝負。最初お客さん100人くらいだったのが曲が進むにつれて増えていって、最終的には数万人いたんじゃないかな。もう本当に奥の奥まで人がいっぱいになってた。

谷中 デビュー当時からずっと写真を撮ってくれてるカメラマンの仁礼博さんが、そのライブの一番いい瞬間に泣きながら「こんないいもの撮れねえよ」って(笑)。

茂木 撮ってよ!(笑)

──それが2003年ということはもう16年前ですね。そのほかに思い出に残っている海外ライブは?

谷中 2011年の「Vive Latino(ビベラティーノ)」かな、メキシコの。

茂木 それはもう絶対外せないね。

谷中 そこから中南米な日々が始まるんだよね。

──でもそうやって海外でのライブを重ねながら、スカパラは国内の活動もおろそかにしないですよね。

谷中 もちろんもちろん!

NARGO 本当はね、海外で成功するには全員で移住するくらいの勢いでやらないといけないんです。逆に日本で成功するには海外なんか行ってらんない。でも僕らはどっちかに偏りたくなくて、だから2倍のエネルギーで両方をやり続けてきたんです。

──その言葉通り、国内のフェスも毎年精力的に出演しています。

谷中 やっぱりスカという音楽がフェス向きなのかな。予習要らずで盛り上がれるし。まあ予習して来いよとは思うんですけど(笑)。

──今はどのフェスに出ても大歓迎ムードですよね。

茂木 ブレずにやってきたのが大きいんじゃないかな。「スカパラがいる=何か面白そうなことが体験できるだろう」みたいなね。

体力は落ちる / テンポは上がる

──この30年間スカパラはまとまった活動休止期間もなく、ずっと走り続けていますね。

NARGO 年々体力は落ちてるのに、活動は忙しくなってる。

茂木 曲調もどんどん激しくなってくし。

谷中 体力は落ちる。テンポは上がる(笑)。

──20年前にNARGOさんが言った「止めちゃダメだ」という言葉が今もずっと息づいている?

NARGO 止めちゃいけないというのは今も思ってますけど、ここまで休まないのもアレですよね(笑)。

谷中 そうか、NARGOのせいでこんなに忙しいのか(笑)。

茂木 でももし自分がメンバーじゃなかったとして、スカパラが元気なかったら寂しいだろうなっていうのは思いますよね。

NARGO ちょっと休んだだけでみんな忘れちゃいますからね。今は特に世の中の流れが早いから。そうなったら悔しいんでやり続ける。

茂木 熱を絶やしたくないってのはあるよね。

──例えば大きなライブのあとで「しばらく休みたい」と思うことは?

NARGO 25周年の武道館のときだっけ? あのときに一度燃え尽きたんですけど、5日後くらいにまた復活して(笑)、すぐ次のコラボレーションとか年間計画とかの話をしてたもんね。

左から谷中敦(Baritone Sax)、NARGO(Tp)、茂木欣一(Dr)。

世界中の人が肩を組んでシンガロングできる曲

──最後に、これからのスカパラの目標について教えてください。

NARGO 海外で、本当の意味で成功したいっていうのはありますね。

茂木 もう国内とか海外とか言わなくていいくらいにしたいよね。

谷中 今、メキシコやアルゼンチンのアーティストからも「コラボしたい」と言ってもらえたりして、国内のボーカリストももちろんそうだし、そういう人たちが僕らと一緒にやることで国を超えてつながって、ジャンルを超えてつながって、スカパラが架け橋みたいな存在になれたらいいなとは思いますね。僕らを通じて知り合って、それでまた新しいことが始まりましたみたいな。国内のアーティストがスカパラをきっかけにしてアルゼンチンやメキシコでライブできるようになりましたとか。そうなったらすごく幸せですね。

NARGO そのためには僕らがいい曲を作らなきゃならないんですよ。全部を超えて突き抜けるような曲、世界中の人が肩を組んでシンガロングできる曲が1曲でもできたとき、僕はやっと「OK!」って思えるのかもしれないです。

──スカパラならできると思います。これからも40周年、50周年に向けて活躍楽しみにしてます。

NARGO いろんなドラマがこれからも待ってるでしょう。恐れずに進みます!


2019年8月14日更新