いい格闘家の条件
──レコーディングに話を戻すと、ボーカルはOKまで何テイクぐらい録ったんですか?
斎藤 全部で5テイク歌いました。
沖 これは斎藤くんが最初に宣言したんですよ。「5回ずつ歌います」と。そうしたら1テイク目から「うわ、来たー!」って感じで、3、4テイク目でさらに「すごい!」って言うテイクがあって、もう敵をなぎ倒すような勢いで5テイク目まで。みんなで「お見事!」って毎回拍手していました。
──スカパラの皆さんは楽しそうですけど、斎藤さんは何か居合斬りか組み稽古みたいな集中力とストイックさですね。
斎藤 僕は必死でしたよ(笑)。なるべくブースの外は見ないようにしていました。そのほうが自分の時間感覚で進めていけるし、自分のバンドの歌入れのときもスタジオのトークバックで話すのがあまり好きじゃなくて。誰かの声が聞こえた瞬間に集中が途切れちゃうから。しかも皆さん素晴らしい方々なので、声をかけてもらえるとそのひと言ひと言に自分が流されてしまいそうになるし(笑)。自分の歌には最初から最後まで自分で責任を持ちたかったから、「ここには今俺しかいない」みたいな集中力で歌っていましたね。本当は1回で歌えたらいいんですけど、1テイクごとの具合を自分で客観的に判断する時間が欲しかったのもあったので。特に今回は呼んでいただいた時点で舞い上がっているから(笑)、特に責任感と集中力は持続させたかった。
谷中 UNISON SQUARE GARDENでは、歌入れのときって誰も立ち会わないの?
斎藤 詞曲を書いているので田淵(智也 / B)だけはいます。彼に大枠の指示は受けますけど、細かい部分はすべて自分で組み立てていますね。
谷中 いい格闘家の条件って、自分の重心の中心点をちゃんと持っていることらしいよ? 実力のあるアスリートもみんなそうみたい。中心点がすごくしっかりとしているんだって。斎藤くんが自分のペースで自分の仕事を完遂しようとする姿勢はすごく正しいと思うし、それがレコーディングの結果にもしっかりと表れているよ。
斎藤 ありがとうございます。でも確かに僕も重心には気を配っています。特にライブでは、重心を上半身に置くと喉に限界が来ちゃうので。高い声のときとか声を張りたいときほど、重心をグッと下に落とすと楽に出ますね。だからライブのあとは足がすごく疲れている。
谷中 それは誰かに教わったの?
斎藤 自分で気付いたという感じですね。
谷中 素晴らしいね。
スカパラが信じるポップスのマジック
斎藤 でもまだ仕上がりにはなかなか客観的になれないですね。レコーディングの手法も、UNISON SQUARE GARDENではそれぞれの楽器をそれぞれで構築していくんですけど、スカパラさんは全員「せーの!」で音を合わせて、その雰囲気を丸ごとパッケージにしていくようなスタイルでした。緊張感もあるんだけど、すごく懐の深いレコーディングのスタイルと言うか。それが自分にはすごく新鮮だったので、歌にも反映されていたらうれしいですけど。
茂木 僕らはいつもそういうスタイルだね。「仮歌」という言い方も信じていないと言うか、そこでものすごい出来事が起きたら、もう仮でもなんでもないし(笑)。そういう一度きりのドキュメント性みたいなものを大事にしたいからね。
沖 毎回、出だしのフィル一発ですべてが決まるような感じだもんね。
茂木 そうそう。それでみんなのハマり具合とか暴れ具合がドンピシャだともう決まり。しかもそういうテイクはまず飽きないんですよ、何度聴いても。そういうポップスのマジックを僕はすごく信じていて。
──ベテランの皆さんからこのセリフが出るのが……。
斎藤 たまんないですよね、カッコいい。
沖 UNISON SQUARE GARDENの曲は、たぶん僕らと正反対のアプローチで緻密に構築されているんだけど、それがとても有機的な響きで聴こえてくるのがすごい。ちょっと引くくらいの怖さと言うか。
茂木 わかる。怖いよね。俺、「Dr.Izzy」を10秒くらい聴いただけで怖かったもん(笑)。演奏の完成度が高すぎて!
斎藤 そんな(笑)。
沖 でもそこが音楽の面白さだよね。やり方はまったく違うのに、なんらかの凄みのようなものをリスナーに届けたいという意味では、互いに同じ精神性なんだよね。
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オーダーメイドの歌詞
- 東京スカパラダイスオーケストラ「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」
- 2017年11月29日発売 / cutting edge
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通常盤 [CD+DVD]
2484円 / CTCR-40390/B -
通常盤 [CD]
1296円 / CTCR-40391
- CD収録曲
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- 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
- WORLD RUDO CONNECTION feat.Los Auténticos Decadentes
- Moon Bow
- 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN) Instrumental
- DVD収録内容
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- 「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」MUSIC VIDEO
- 「Latin America Tour 2017ドキュメンタリー前編」
- 東京スカパラダイスオーケストラ(トウキョウスカパラダイスオーケストラ)
- NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor Sax)、谷中敦(Baritone Sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Perc)、茂木欣一(Dr)からなる、日本国内のみならず諸外国にて多数の公演も行う、日本が世界に誇るスカバンド。1989年にインディーズデビューし、1990年にシングル「MONSTER ROCK」でメジャーデビューする。2013年12月からはデビュー25周年の一環として亀田誠治をプロデューサーに迎えた「バンドコラボ3部作」を展開し、10-FEET、MONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとのコラボシングルをリリースした。2015年3月にはベストアルバム「The Last」を発表し、東京・日本武道館公演を実施。7月にクリープハイプの尾崎世界観(Vo, G)との共作シングル「爆音ラヴソング / めくったオレンジ」を、12月に片平里菜とのコラボシングル「嘘をつく唇」を発売する。2016年6月に東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyama名義によるシングル「道なき道、反骨の。」、9月には同じくKen Yokoyamaとのタッグによる「さよならホテル」をリリースする。2017年3月には20枚目となるオリジナルアルバム「Paradise Has NO BORDER」を発売。そして11月にUNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介をゲストボーカルに迎えたシングル「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」を発表。
- UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)
- 斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2006年8月に1stミニアルバム「新世界ノート」をリリースし、ライブハウスおよび下北沢ハイラインレコーズのみの販売で1000枚を完売。2007年にはメンバー主催のイベントをスタートさせ、同年12月には初の単独ライブを成功させる。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。アニメ「TIGER & BUNNY」のオープニングテーマとして制作した2011年5月リリースのシングル「オリオンをなぞる」で広く注目を集める。全国各地の音楽フェスやライブイベントにも精力的に出演し、NHKホールなど大規模な単独公演にも注力。2015年5月にアニメ「血界戦線」のエンディングテーマ「シュガーソングとビターステップ」をシングルリリースし、同年7月にはバンド結成10周年を記念したアルバム「DUGOUT ACCIDENT」を発表した。2016年1月、バンド史上初の東京・日本武道館でのワンマンライブの模様を収めたライブDVD「UNISON SQUARE GARDEN LIVE SPECIAL "fun time 724" at Nippon Budokan 2015.7.24」をリリース。7月に約2年ぶりとなるフルアルバム「Dr.Izzy」を発表し、本作を携えて40カ所44本というバンド史上最多公演数となる全国ツアーを行う。2017年には11月8日に12thシングル「Invisible Sensation」を、翌週11月15日に13thシングル「fake town baby」をリリースした。