ナタリー PowerPush - 東京スカパラダイスオーケストラ
予定調和一切なし! ニューアルバム「欲望」を徹底解剖
ハナレグミ×スカパラメンバー対談
アルバム「欲望」のラストを飾るアッパーチューン「太陽と心臓」には、ゲストボーカルとしてハナレグミが参加した。このページではハナレグミこと永積 崇と、谷中敦(B.Sax)、沖祐市(Key)、加藤隆志(G)、茂木欣一(Dr)による熱いトークをお届けする。
この曲がハナレグミを呼んだ
──スカパラと永積さんのコラボは「追憶のライラック」以来7年ぶりですね。今回また一緒にやろうと思ったきっかけは?
谷中 曲が呼んだんだよね。
茂木 まさしくそう!
加藤 この曲のリハーサルのとき、みんなで「これ絶対、永積くんに歌ってほしいね」って話になって「それだ! 絶対いい!」って。
──そのときに曲はほぼ出来上がってたんですか?
茂木 メロディは全部あったね。全体を貫くこのソウルフルな感じに「これ永積くんボーカルでやったら間違いないな」って。
谷中 もろ永積くんっぽい曲という訳ではないと思うんだけど、なんか化学変化も含めて出来上がりが見えたというか。「ぴったりじゃん!」って。だから今回タイミングが合って、一緒にできることになったのはうれしかったですね。
茂木 そういえば「断られるかも」とか考えてなかったね。
谷中 そう、絶対大丈夫って思ってたよね。
茂木 「永積くんに歌ってもらう」ってもう決めてた(笑)。
加藤 「今はこれしかない」って感じだったなあ。
自分の中でアクセルを踏み込んだ
──永積さんはこの曲の話をもらったときいかがでしたか?
永積 もう「ぜひ!」って。ちょうどその前に僕はメキシコに旅行に行ってて、そのときメキシコでスカパラがすごい熱いっていう話を聞いてたんです。スカパラの名前を使っていろんなところに行ってみたりして(笑)。
──どういうことですか?
永積 メキシコシティに若者たちがいっぱいいる竹下通りみたいなところがあって、そこにいたルードボーイらしき人たちに「スカパラ知ってる?」って訊いたら「知ってるぜ」みたいになって。そのコネを使ってメキシコのいろんなディープなところに連れてってもらったんですよ。
谷中 「俺スカパラの曲、歌ってるんだぜ」って言ったの?
永積 言ったんだけど最初全然信じてもらえなくて(笑)。でも自分のCD持ってってたから、それ渡したら「本当にミュージシャンなんだ?」みたいになって。それでブロックパーティに連れていかれたんです。その友達になった子がバンドのボーカルやってて「タカシ、カモン!」とか言われてステージに上がったりもして。
谷中 歌ったの?
永積 ステージで「指さしスペイン語会話」っていう本を見ながら「私の名前はタカシです。日本から来ました。メキシコ、楽しいです」つって、カタコトすぎて客に大爆笑されたっていう(笑)。
谷中 さすが(笑)。
永積 っていう話のあとだったんで。誘ってもらったのすごくうれしくて。
加藤 「これって絶対そういうタイミングだよな」って思った。僕らにとってはゲストというよりは同志というか。気持ちで通じ合えてるミュージシャンだからね。今また交わる時期が来てるっていうか。
永積 ただ、誘ってもらったのはもちろんうれしかったんですけど、うれしい半面すごいトライだなっていう気持ちもありましたね。ただなんとなく「歌いに来ました」ってだけじゃダメだなって思うし。やっぱりメンバーがたくさんいて長い歴史があるところにパッと入って1曲歌うって、すごいプレッシャーだったりするから。
──なるほど。
永積 だから歌詞とかも谷中さんに「これってどういう意味なんですか」って訊いて。どうすれば自分が曲の中に熱さを投げ込めるかっていうのはすごく考えました。
谷中 曲との距離を詰めて自分のものにしなきゃいけないわけだもんね。
永積 うん。でもそれが楽しいんです。すごく刺激的で。自分の中でアクセルをかなり踏み込む感覚っていうか。
男同士が肩を組んで歌うイメージ
──「太陽と心臓」の作曲は沖さんが担当していますが、どんなイメージで作ったんでしょうか?
沖 特にモチーフがあったわけじゃなく、ただピアノをガンガン弾いて、それをそのまま音符にしていくみたいな感じでした。雰囲気的には男同士が肩組んでみんなでこう、なんていうのかな……。
茂木 「雪山讃歌」みたいな?
沖 そうかも(笑)。体育会系のノリでみんなで拳を上げて歌えるような、そんなイメージはなんとなくありましたね。青春モノの映画とかでもよくあるじゃないですか。若い連中が集まってがんばってる姿とかすごくいいと思うし。男だらけで切磋琢磨して「なんでお前らそんなにうれしそうなの?」みたいな。
──それはまさにスカパラ自身の姿という気がしますけど。
沖 そうですよね(笑)。
ニューアルバム「欲望」2012年11月14日発売 / cutting edge
CD収録曲
- 黄昏を遊ぶ猫
[作詞:谷中敦 / 作曲:川上つよし / ボーカル:中納良恵] - 非常線突破
[作曲:NARGO] - Wild Cat
[作曲:沖祐市] - 大したヤツ
[作曲:GAMO] - Midnight Buddy
[作曲:茂木欣一 / アジテーター:デニス・ボヴェル] - Rushin'
[作曲:川上つよし] - (there's no) King Of The Ants
[作詞:谷中敦 / 作曲:NARGO / ボーカル:谷中敦、デニス・ボヴェル] - Old Grand Dad
[作曲:沖祐市] - 修行
[作曲:谷中敦] - The Other Side Of The Moon
[作曲:加藤隆志] - さすらいForever
[作曲:北原雅彦] - SKAN-CAN
[作曲:ジャック・オッフェンバック] - 太陽と心臓
[作詞:谷中敦 / 作曲:沖祐市 / ボーカル:ハナレグミ]
東京スカパラダイスオーケストラ
(とうきょうすかぱらだいすおーけすとら)
1980年代後半結成。NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor sax)、谷中敦(Baritone sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Per)、茂木欣一(Dr)からなる9人組バンド。1989年11月にインディーズで黄色いアナログ「TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA」をリリースし、その本格的なサウンドと独自のスタイルが話題を集める。1990年4月にシングル「MONSTER ROCK」、アルバム「スカパラ登場」でメジャーデビュー。以降、オリジナルメンバーの逝去や脱退といった幾多の困難を乗り越え、2008年7月より現在の編成となる。スカをルーツに多彩なジャンルを取り込んだ豊かな音楽性は国内外のオーディエンスから高い評価を獲得。国内はもとより、ヨーロッパを中心に世界各国でライブを行い、日本を代表するライブバンドとしてワールドワイドな活躍を続けている。
2012年11月13日更新