2月27日に最新アルバム「TryAgain」をリリースしたTrySailは今、新曲を多数携えてのライブツアー「LAWSON presents TrySail Live Tour 2019 "The TrySail Odyssey"」を行っている。「TryAgain」と銘打ったアルバムで、ロック、R&B、ジャズ、チャイナ風エレクトロポップとさまざまなサウンドアプローチに挑んでいる彼女たち。これらの新曲はツアーを経て、どのように進化していくのか? 音楽ナタリーではツアー序盤の千葉・幕張イベントホール公演2DAYSを終えたTrySailにインタビューを行い、ライブで新曲を披露した手応えやツアーに懸ける思いを語ってもらった。
取材・文 / 須藤輝
私たち、すごくライブを楽しめてる
──ニューアルバム「TryAgain」の発売に先駆けて2月23日に全国ツアーが始まりましたが、初日と2日目の千葉・幕張イベントホール公演を終えての感想、あるいは手応えは?(※本インタビューを実施したのはアルバム発売日の2月27日)
夏川椎菜 手応えは、すごくあります。今回はアルバムの新曲をライブで初披露するということもあって、私たちもお客さんも手探りな部分が大きかったと思うんですよ。でも初日から、その初披露する曲でもみんなが「あ、この曲はこういうふうにノればいいんだ」というのを見つけて実践しているのが伝わってきたので、「このまま続けていったらきっといいツアーになる」という実感がありました。
──僕はスタンドから初日のライブを拝見していたのですが、おっしゃる通りお客さんたちの順応ぶりに驚かされました。
夏川 うんうん。どんどん曲が浸透していったというか、2コーラス目からは「前からこの曲知ってましたけど?」くらいの勢いで盛り上がってくれて。
麻倉もも ナンちゃん(夏川)が言ったように、今回のツアーはみんながまだあまり知らない曲を何曲も歌うし、今までの私たちのライブでは定番だった盛り上がり曲をメドレー形式で、つまりフルじゃない形でお届けしたり、そういう“挑戦”が詰まったツアーでもあるんです。だから初日を迎えるまではホントに不安だったんですけど、お客さんの「なんでも受け入れて楽しもう」みたいな気迫と熱意に感動して、私もどんどん楽しくなっちゃって。初日も2日目も、振り返るとすごく満足感のあるライブだったなと思います。
雨宮天 特に初披露の曲は緊張感があるし、歌っている瞬間はとにかく曲に集中していたんですけど、終わってみると「私たち、すごくライブを楽しめるようになってきたな」って。前回のツアーの初日と比べても、よりライブらしさのあるライブができたんじゃないかなと思います。そこに大きく関係してるのがお客さんの熱量だと思うんですけど、幕張のお客さんのテンションが「どうしちゃったんだい?」というくらいめちゃくちゃ高かったんです。
──初日から仕上がってましたね。
雨宮 しかもトロッコに乗ってお客さんの間近で歌うことで、その熱量をダイレクトに感じることができて。それもあって、私たちのボルテージも上がる一方でしたね。
ツアーの基盤は全部3人で作った
──先ほど麻倉さんが「“挑戦”の詰まったツアー」とおっしゃいましたが、今回のツアー作りにTrySailとしてどのように関わっているんですか? 例えば前回のツアーでは「3人でセットリストを組んだ」というお話をされていましたけど。
雨宮 そういう意味では、ツアーの基盤を全部作ったと言っても過言ではないくらい深く関わってますね。
夏川 最初から私たちが「こんなのどうでしょう?」という案をひと通り出したんだよね。メドレーをやりたいというのも、TrySailのライブでは恒例の“ハモり曲”を「コバルト」にしたいというのも私たちからお願いしたことだし。
麻倉 ステージのセットや衣装も「こういうコンセプトがいいです」って。
雨宮 けっこう早い段階から3人の間で「自分たちの力で作っていくツアーにしたいよね」という話は出ていて。確か、あるときラジオで「そろそろ3人で話し合ったほうがいいかもね」みたいな話になったんだよね?
麻倉 そうそう。で、その勢いのまま。
雨宮 ラジオの収録終わりに3人でごはんを食べに行って、4時間ぐらい話した?
夏川 うん、そのぐらいかかったよ。
雨宮 みっちり話し込んで「ああでもない、こうでもない」ってセトリのパズルを組み立てて、「これだ!」というのができたときにはもう閉店間際になっていて。それと同時並行して、衣装やハモり曲をどうするかというのも詰めていきました。
──音楽ナタリーでの過去2回のインタビューで、TrySailの活動に対して「3人の積極性がどんどん増している」というお話をされていましたが……。
雨宮 引き続き増す一方ですね。
麻倉・夏川 そうだねえ。
今、ハモり曲にして一番カッコいいのは「コバルト」
──ちなみにハモり曲に「コバルト」を選んだ理由は?
夏川 TrySailのライブでは、今までは「あかね色」や「ひかるカケラ」をハモりアレンジで歌ってきたんですけど、やっぱり3人の声のハーモニーを届けることに重きを置いていたので、しっとり聴かせる感じだったんです。でも、「そろそろ次のステップへ進むべきなんじゃないか」「ハモり曲でお客さんを驚かせたいよね」という話になって。そう考えたときに「今、ハモり曲にして一番カッコいいのはアップテンポでロック寄りな『コバルト』かもしれないね」と。
麻倉・雨宮 うん。
夏川 ただ、私たちはハモり曲がどういうふうに作られているのかよく知らないし、実際にできるのかどうかもわからなかったんですよ。だから「『コバルト』のハモり、聴いてみたいよね?」「とりあえずダメ元でお願いしてみようよ」みたいな感じではあったんですけど。
──実際に現場でお聴きして、びっくりしました。
夏川 やった! 狙い通り(笑)。
雨宮 今回のアルバム「TryAgain」は、今までのアルバムと比べるとだいぶ大人っぽかったりカッコいい要素が濃い目というか、新しい表情を見せている曲が多いんですよ。しかもタイトルに“Try”が入っている。そんなアルバムを引っさげてのツアーになるので、ツアーでもその「新しい表情を見せて、“Try”していく」というコンセプトを大事にしたい気持ちが私たちの中に強くあって。ハモりバージョンの「コバルト」はそれを体現した曲でもありますね。
──ハモりのアレンジにしても、例えば「ひかるカケラ」は夏川さんもおっしゃった通りバラード調でしたが、「コバルト」は……。
麻倉 3人でハーモニーは保ちつつ、戦うような感じで。
夏川 そうそう。もともと「コバルト」は「Classroom☆Crisis」というSFアニメの主題歌だったんですけど、ライブではまさにSFアニメのバトルシーンみたいになっているので、ぜひ観ていただきたいなと思います。
──重心の低い打ち込みのトラックもインパクトがありました。「これ、正式な音源でほしいな」と思ったくらい。
雨宮 ですよね! 私たちも、ナンちゃんがさっき言っていたように、まずできるのかどうかわからないから、アレンジに関してもかなりざっくりしたイメージをお伝えしたんですよ。「カッコいい系で」とか「攻めの姿勢で」とか。
夏川 「リズムは残したままで」とかね。
雨宮 そんな、言ってしまえば素人の勝手な注文をあの形に落とし込んでくださって。もうね、初めて聴いた瞬間に……。
麻倉 「カッコいい!」ってなったよね。
夏川 「こんなふうにできるんだ!?」「これはみんなびっくりするぞ!」って。
雨宮 3人ですっごい盛り上がりました。
麻倉 そのあとも細かい部分についてディスカッションさせていただく機会をスタッフさんが設けてくださって。そこでピアノの音を増やしてもらったり。
雨宮 あとはテンポをちょっと落としてもらったり、キーも原曲より1つ下げてもらったり。要は重くしたかったんです。そうやって私たち3人の意見をたくさん取り入れてもらった、こだわりのハモり曲だよね。
麻倉・夏川 うんうん。
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「ハイスピ」「adrenaline!!!」に頼り続けていいのか?