TrySail|3人一緒だからできること

違う表情を見せられる曲

──では、ニューシングシングルについて伺っていきます。表題曲の「WANTED GIRL」はひと言で言えばアップテンポなロックナンバーですが、同じロック系の楽曲でも例えばシリアスな「High Free Spirits」(4thシングル)や、ひたすらハイテンションな「adrenaline!!!」(6thシングル)などとはまた雰囲気が異なりますね。

雨宮 最初にデモを聴いたときは、わちゃわちゃ楽しい感じで、「adrenaline!!!」に近いノリかなと思ったんですよ。でもよくよく聴くとわちゃわちゃしてるだけじゃなくて、意外と大人っぽかったり、いたずらっぽい側面があると気付いて。おっしゃる通り今までのロックナンバーとは方向性が違いますね。

麻倉 最初に聴いたときは「どうしよう……」って戸惑いました。まずテンポが速いし、言葉がギュッて詰まってるし、リズムを取るのが大変で。「この曲、たぶんライブでやるよね?」って、レコーディングの前からライブのことを不安がるみたいな(笑)。

夏川 私も「うわ、難しい曲きちゃったなー」と思ったんですけど、同時にすごくライブ映えしそうな曲だなって思いました。だからこの曲を余裕で歌えるようになれば、ライブにもまた新しい勢いが加わるし、曲自体も遊び心にあふれているので発展性があると言うか。きっとライブで歌うたびに変わっていくし、違う表情を見せられそうな曲だなと思ったので、レコーディングが楽しみでした。

──実際、レコーディングは楽しかったですか?

夏川 やっぱりテンポが速くてリズムも細かいので、言葉1つひとつを音にはめていくイメージでしたね。でもあんまり型にはまりすぎると遊び心が失われてしまうので、そこも注意しながら。だから、けっこういっぱいいっぱいでした(笑)。

麻倉 1回リズムに乗り遅れると、もう置いて行かれちゃうんだよね。なので、私もすごく頭を使いましたね。「こうやって歌いたい」ってイメージしながら、リズムも意識して。

雨宮 わりと歌詞が台詞調だから、フレーズ単位、ワード単位でいろんなニュアンスが付けられるんだよね。例えばサビの「全部全部 手に入れたいの わがままかな」はちょっと挑発的に、とか。私は欲張りなのでそういうのは極力歌に落とし込みたくて。それをリズムに乗せながら表現していくのがなかなか大変でした。で、さっきナンちゃんも言ってたように、きっとライブのたびに付けたいニュアンスも変わってくるので、そういう変化も楽しめるんじゃないかと思います。

もう、好き勝手やっちゃう

──レコーディングは3人別々だと思われますが、普段録る順番は決まってます?

雨宮 毎回ランダムですね。

夏川 「WANTED GIRL」は私が一番手でした。最初に歌う場合は、あとの2人がどう歌うのかなっていうのを想像しつつ、わりと自由に歌えるというメリットが……メリットなのかな?

麻倉 好みだよね。2番目以降の人は、最初の人のテイクを聴いたうえでレコーディングに臨めるから、どっちもいいところがある。

──2番目以降に録る場合、ネタ被りと言うか、自分のやりたかった表現を先にやられてしまうみたいなことはありますか?

夏川 いや、「先にやられた!」って思ったことはないですね。

麻倉 声質も歌い方も違うから、被る感じにはならないよね。

雨宮 うん。アプローチが似てたとしても、結局出てくるものはそれぞれ違うから。

夏川 そうそうそう。

雨宮 ただ、私個人としては、たぶん自分は一番手じゃないほうがいいんだろうなって「adrenaline!!!」のレコーディングで思いました。

──それはなぜ?

雨宮 もう、好き勝手やっちゃうから。

一同 ははは(笑)。

雨宮 やりたいようにやりすぎて、スタッフさんを困らせちゃうんですよ。「その方向性もありと言えばありだけど、あとに歌う2人とのバランスを考えるともう少し抑えたほうがいいんじゃない?」というのを、「adrenaline!!!」だけで10回ぐらい言われて。なので、そこでちょっと反省しました。

夏川 でもさ、「ハイスピ」(「High Free Spirits」)のときは天が3番目だったけど……。

麻倉 そうだよ。「かわいく、カッコよく」がテーマだから、私たちはかわいさも意識して歌ったのに、天だけカッコいい方向に振り切ってて。

夏川 「わ、こいつ裏切りやがった」って思った(笑)。

雨宮 じゃあ、何番手でも変わらないってことですね(笑)。

私たちが引っ張っていきたい

──「WANTED GIRL」の歌詞はアニメ「タイムボカン 逆襲の三悪人」のオープニングテーマということで「怪盗」をモチーフにしていますが、同時にTrySail自身のことを歌っているようにも読めますね。

「WANTED GIRL」期間生産限定盤ジャケット

夏川 あ、それは考えたことなかったんですけど、言われてみれば……。

麻倉 「塗り替えたいんだHistory」とか「ルールなんていらないから」とか。

雨宮 この歌詞には「私たちがリードするから」みたいな雰囲気があって。

麻倉 引っ張っていく系だよね。

雨宮 そう。1stツアー(2016年11月~2017年2月)のあたりから、それは私たちの目標としてはあって。これまではお客さんに支えてもらってきたけど、ここからは私たちが引っ張っていきたいっていう。

夏川 自分たちで目標を決めてね。あいうえお作文を始めたのもそのツアーからだったし。

麻倉 そのあとに出した2ndアルバムの「TAILWIND」がね、「追い風」っていう意味だから。私たちがみんなの追い風になれるようにという気持ちが込められてる。

雨宮夏川 そうだそうだ。

──しかも「WANTED GIRL」を作詞されたのは、その2ndアルバム表題曲の「TAILWIND」と同じ、ハヤシケイさん。

夏川 そうだ! つながったね。

麻倉 うれしい。成長した私たちのことを書いてくださったんですね。

雨宮 今後はそういう気持ちで歌わせていただきます!

3人それぞれの声の魅力

──カップリング曲の「散歩道」も今までのTrySailにはないタイプの、センチメンタルなワルツ曲ですね。

雨宮 箱庭みたいな、こぢんまりとした世界観のかわいらしい曲ですよね。でも、歌うのはすごく難しかったです。この曲のレコーディングは私が3番目だったんですけど、歌う前に2人のテイクを聴かせてもらったら、それがもう素晴らしくて。ナンちゃんはもともとのきれいな声質が、もちは自然と切なさが乗っかってくるような歌声が、それぞれ曲の世界観にばっちりはまってるんですよ。だから正直、私は歌いたくなかったです。

麻倉 こら(笑)。

雨宮 いや、2人で歌ったバージョンでリリースすればいいのに……っていうくらい完成度が高かったの。でもやっぱりTrySailの一員として、歌わないわけにはいかないなと。

夏川 歌ってくださいよ(笑)。

雨宮 どう歌おうか迷った末に、普段よりも気持ち幼めなトーンで歌いましたね。

麻倉 こういう曲に天の歌声はすごく合うよ。ちょっと息が混じった、ウイスパーボイス的な声とか。

夏川 うん。私も、たとえばDメロの歌が目立つパートで天の声がすごい映えるなと思ってて。なんならアカペラで歌ってほしい。

雨宮 ホント? いやあ、救われますね。こういうメンバーと一緒だからやっていけてるんでしょうね(笑)。

──麻倉さんと夏川さんのレコーディングはいかがでした?

麻倉 まず「散歩道」の歌詞の意味が、私が思ってたのと違ってたんですよ。この曲は大事な人とさよならする歌なんですけど、私はそれを「さよならするけど、また会える」って解釈してたんです。

──あ、僕もそう思ってました。

麻倉 そうじゃなくて、この曲は「もう会えないとわかったうえで、笑顔でさよならする」っていう歌なんです。それを現場で知って、最終的に家で練習していた歌い方とはまったく違うものになったんですよ。切ないイメージに合わせて、こんなにもそっと優しく歌ったのは初めてだったので、いい経験になりました。

夏川 私はこの曲で初めて座ってレコーディングしたんですよ。と言うのも、私も歌詞をもちょ(麻倉)と同じように解釈してて、最初のテイクがちょっと元気すぎたようで。寂しい感じを加味すると言うか、元気さをなくすために(笑)。

──いったん落ち着こう、と。

夏川 はい。あえて座って歌いづらい状況にしました。でも、それが意外としっくりきて「あ、なるほど。この姿勢だとこういう声が出るんだ」という勉強にもなったし、座って歌うことでより世界観に没頭できて。結果的に納得のいくものが録れたので、私もいい経験をさせてもらいましたね。それもあって、いつかこの歌を3人で座って歌いたいなと思ってます。

雨宮 かわいいね。

麻倉 ゆらゆら揺れながらね。

TrySail「WANTED GIRL」
2018年3月14日発売 / SACRA MUSIC
TrySail「WANTED GIRL」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1836円 / VVCL-1188~9

Amazon.co.jp

TrySail「WANTED GIRL」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1190

Amazon.co.jp

TrySail「WANTED GIRL」期間生産限定盤

期間生産限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1191~2

Amazon.co.jp

初回限定盤、通常盤CD収録曲
  1. WANTED GIRL
    [作詞・作曲:ハヤシケイ / 編曲:毛蟹]
  2. 散歩道
    [作詞:谷口尚久 / 作曲・編曲:5u5h1]
  3. WANTED GIRL -Instrumental-
  4. 散歩道 -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「WANTED GIRL」ミュージックビデオ
期間生産限定盤CD収録曲
  1. WANTED GIRL
  2. 散歩道
  3. WANTED GIRL -TV Ver.-
  4. WANTED GIRL -Instrumental-
  5. 散歩道 -Instrumental-
期間生産限定盤DVD収録内容
  • 「タイムボカン 逆襲の三悪人」ノンクレジットオープニング映像

ツアー情報

TrySail「LAWSON presents TrySail Second Live Tour "The Travels of TrySail"」
(※終了分は割愛)
  • 2018年3月31日(土)千葉県 千葉県文化会館
  • 2018年4月1日(日)茨城県 茨城県立県民文化センター
  • 2018年4月8日(日)北海道 わくわくホリデーホール
  • 2018年4月28日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年4月29日(日・祝)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年5月6日(日)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2018年5月13日(日)新潟県 新潟テルサ
  • 2018年5月19日(土)千葉県 幕張イベントホール
  • 2018年5月20日(日)千葉県 幕張イベントホール
TrySail(トライセイル)
ミュージックレインに所属する声優の麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜からなる3人組ユニット。2014年12月にユニットの結成を発表し、2015年5月にデビューシングル「Youthful Dreamer」をリリースする。同月には初のワンマンライブを神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで開催した。その後も「Classroom☆Crisis」「暦物語」「ハイスクール・フリート」といったアニメのテーマソングを次々と担当。2016年に1stアルバム「Sail Canvas」を発表。同年11月より初のライブツアー「LAWSON presents TrySail First Live Tour “The Age of Discovery”」で全国8カ所を回った。2017年8月には2ndアルバム「TAILWIND」をリリース。2018年2月より2ndツアー「LAWSON presents TrySail Second Live Tour "The Travels of TrySail"」を開催し、3月にシングル「WANTED GIRL」を発表した。3人それぞれがソロアーティストとしても活躍し、表現の幅を広げている。