ナタリー PowerPush - TRUSTRICK
神田沙也加×Billy 運命の出会いが生んだ「Eternity」
神田沙也加が手に入れた“バカみたいに明るい青春”
──そして終盤、11曲目の「as one」には「If -君が行くセカイ-」にも通じる、アイリッシュトラッドの香りが漂う透明感のあるアコースティックサウンドで。
神田 このあたりは私の大好物ですね。やりたかった音楽の具現化が一番わかりやすく表れている曲だと思います。
──ビジュアルイメージも含め、TRUSTRICKが目指している世界観は「as one」や「If -君が行くセカイ-」が持つムードなのかなと感じたのですが。
神田 実はそうだと思います。いろんなタイプの曲を作った中で、なぜこの曲をラスト前というおいしい位置に置くことになったのかって、そういうことだと思うんですよ。おっしゃる通り、わかりやすくTRUSTRICKを象徴していて、私自身も一番好きな曲かもしれない。
──ですがこれがラストではなく、ロックで明るい「beautiful dreamer」で締めるというのがすごくバンド的、ユニット的な発想だなと。ライブの一部始終を観るような1つの物語を感じるし、映画で言うとエンドロールのような位置付けで。この曲もまたシングルとして出てもおかしくない、陰と陽を持つTRUSTRICKの陽の部分を表現した1曲なのかなと思いました。
TRUSTRICK / beautiful dreamer 【Music Video(short ver.)】
神田 思い切って陽に振り切ったというか、言葉を選ばずに言えばバカみたいに明るい曲(笑)。
Billy そこは「底抜けに明るい」でいいんじゃないかな(笑)。
神田 バカみたいに明るい青春、みたいなものって神田にもなかった成分で。神田ってすぐ陰に陰に行きたがるから(笑)。それはBillyくんが関わったことで足された新要素ですね。明るく救う、というのは。「beautiful dreamer」というタイトルも、自分の中ではギリギリアウトなんですよ。でもそのぐらい何も考えずに「やったあ!」みたいな形で終わりたかった。スポーツみたいな曲ですね(笑)。
──陰で終わる方法もあったと思うんですけど、神田さん的には新しい扉を開けて終わるというのは、非常にいい終わり方ですよね。
神田 そうでしょうね。歌詞の中に「気付いてしまった」というフレーズがあるんですけど、これは自己発見ですね。
イメージを作り上げて壊す、ギャップ芸
──リスナーはこれからTRUSTRICKの扉を開くわけですけど、お2人としてはもう次の扉も見えていますよね? 先ほどBillyさんも「次は逆に焦点を絞るのもアリ」とおっしゃってましたけど。
神田 具体的に言うと、次はもっと正統派に絞ろうと思っていて、そのあと思いっきり遊んでやろうと思ってます。次の作品が出た時点で、その次の作品のタイトルが予測できる感じになる……とだけ予言しておきます(笑)。
Billy そうだね、うん(笑)。
──あ、けっこう具体的に作戦を立ててるんですね。ちなみにオフィシャルサイトにアップされたコメントムービーでは「TRUSTRICKの野望はこのあと話し合います」っておっしゃってましたけど、実際に話し合いました?
神田 ちょっと話し合ったんですけど、「コツコツやりたいね」みたいな話になって(笑)。2人ともドリーマーじゃないんですよ、全然。着実に1つひとつやりとげた先に、願わくば「ああ、なんかいい感じになってた」ぐらいの感じがいいよねって。
Billy まずは自分たちで納得できるものを着実に作り上げて……。
神田 ……って言うとすごくまとまっているように聞こえるけど、そこまでも考えてない気がする(笑)。もうちょっとライトなんですよ。
──そのライトにやれていること自体が、お2人にとっていい状態なんですね、きっと。以前から神田さんのTwitterやブログは拝見してましたけど、TRUSTRICKが始まってから、今まで以上に楽しそうなんですよ。よほど気持ちが充実してるんだろうなと。
神田 たぶんそうなんだと思います。ソロだったらこんなにTwitterで「聴いてほしい!」ってアピールをしないと思うんですよ。実際してこなかったですし。今まではこんなに「聴いてほしい!」と思ったことがなかったので、今回はそれだけちゃんと自分のやりたいことができたのかなって。
──あとコメントムービーではもう1つ、「会えるTRUSTRICK」とおっしゃってましたよね。リリースイベントやライブでリスナーに直接音楽を届けることについてはどう考えていますか?
神田 昨今、アーティスト本人が作品について語ったり、本人が出ていってアプローチしていくというやり方に変わってきていると思うんです。カッコいいものを作って歌えば届く、という時代ではなくなっていると私は思っているので、TRUSTRICKでは「責任持って届けに行く」ということを自分に課そうと思って。ちゃんと責任持って渡しに行くぞという気持ちにシフトチェンジしたんですよね。そういう場をどんどん作っていきたいと思っています。
──どういう場所でやってみたいとか、どのアーティストと対バンをしたら面白そうだなとか、具体的なアイデアはありますか? 例えばフェスに出ても面白いし、新宿LOFTみたいなライブハウスにだって出てもおかしくないと思うんですよ。“あの神田沙也加”が(笑)。
神田 「え、これ出るんだ?」みたいなのはどんどんやっていきたいです(笑)。音楽ジャンルが飛び交っている、異種格闘みたいなところで“浮きたい”ですね。
Billy 自分たちの世界観をしっかり固めておいて、「この人たちこんなところに出るの?」みたいな。イメージを作り上げておいて自分たちで壊す、というのがやりたいんですよ。
神田 まさにTRUSTRICKだよね。ギャップも含めて楽しめる……ギャップ芸。
Billy ギャップ芸?(笑)
神田 いや、ギャップ芸大事だと思うよ、ホントに。「何をやったらちょっと笑えちゃうかな」というぐらいのギャップ芸を嫌味なくやるためには、TRUSTRICKという形が私には必要だったんでしょうね。
【楽曲試聴】TRUSTRICK『Eternity』楽曲ダイジェスト
- 1stアルバム「Eternity」 / 2014年6月25日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円 / COZP-859~60
- 通常盤 [CD] 2700円 / COCP-38610
CD収録曲
- Ever Blue
- If -君が行くセカイ-
- ATLAS
- wonder
- TRICK or HOLIC
- 恋人
- 君が居る未来のために
- kissing
- Calico
- Jealousy Jelly
- as one
- beautiful dreamer
初回限定盤DVD収録内容
- If -君が行くセカイ-(Music Video)
- ATLAS(Music Video)
- beautiful dreamer(Music Video)
- If -君が行くセカイ-(Making Clip)
- ATLAS(Making Clip)
TRUSTRICK(トラストリック)
舞台女優としての活動を中心に、声優、モデル、ソロシンガーと幅広く活躍する神田沙也加(Vo)と、2006~13年に上杉昇(ex.WANDS、al.ni.co)率いるバンド・猫騙のメンバーとして活動していたBilly(G)からなるユニット。2014年4月にユニット結成を発表し、6月発売の1stアルバム「Eternity」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たした。ユニット名は「TRUST=信頼、信用」「TRICK=いたずら、策略」の2語を合わせた造語で、少しの毒とファンタジーが共存する独自の世界を構築している。