今は売れなくても、10年後に聴いてダサくなんない音楽
──これまでのアルバムの自己評価は?
いや、わりと全部いいと思いますよ。まあ、めちゃめちゃやりきったという感じでもないですけど、このCDが存在する意味はあるなっていう。それくらいの自負はありますね……もう1杯飲んでいいですか?
──問題ないです! 今回、曲も歌詞もハイクオリティな、すごくいいアルバムだと思いますよ。
ああ、ありがとうございます。
──自分たちのグループで自信あるところってあります?
うーん……鳥居くんのギターが個性的でほかにいないよなっていうところと、僕のキャラクターと、あまりない感じの歌詞。と……王道ではないけど、ここに存在する意味はあるような音楽と言うか(笑)。
──さっきから言ってる「ここに存在する意味がある」ってなんですか(笑)。
いやなんか、意味ない音楽ってないですか?
──まあありますけどね。なくてもいいものは。
けっこうあると思うんですけど。
──俺たちのは、あってもいい音楽だと。
まあ、そうっすね。音楽性としては普遍性が高い自信があります(笑)。 時代と関係ないバンドだと思います。別に、今ばーっと売れないけど、10年後に聴いてもダサくはなんないと。
──日持ちのする音楽。
いつ聴いても一緒ってことだと思うんですよね。別に「今これが流行る」っていう感じでもやってないんで。まあそれは弱点でもあるかもしれないけど、いいことだと思います。
月50万くらいほしいっすね
──「この歌詞すごいな」って思ったバンドなり歌手なりっているんですか?
安部コウセイさんの、SPARTA LOCALSの最初の頃の歌詞が暗くて好きなんです。研ぎ澄まされてるなって。それと坂本慎太郎さんの歌詞はやっぱりすごいなって思います。あの抜けた感じっていうか、見方によっては笑えるけどちょっと怖い、みたいな。あとはmooolsの酒井泰明さんとか。
──音楽以外の影響のほうが大きいような気がしてました。
ああー。そうかもしれないですね。いましろたかしとか。
──マンガとかお笑いの要素が強いんだろうなって。
大学のときにけっこうお笑いのDVDを観てたんですけど、お笑いで「うおー」ってなる高揚感は、すごい完成度が高い曲を聴いたときに近い感じはある気がしました。でも、お笑いの影響ってあんまり言いたくないっすね。「お笑いが一番偉い」みたいな風潮があるじゃないですか。僕もわりとお笑いの人を尊敬してるほうだと思うんですけど、最近いろんな業界の人が「お笑いのほうがすごい」とか言ってるのを聞くから、それはつまんないしダメだと思うんですよね。
──それこそタモリさんに「お笑いやれば?」って言われたわけじゃないですか。
うーん。普通にうれしかったですけど、自分が向いてるとは別に思わないし。音楽ですごいところに行けば、すごい感覚を得られるんだろうなって思うから、音楽の道を登んないとなっていう感じですね。
──上下関係が厳しいお笑いの世界だとつぶされてた人だと思うんですよね。絶対こっちでよかったと思いますよ。
そうですね(笑)。バンドマンってめちゃくちゃ関係性ユルいっすよね。もしお笑いだったら「共感百景」とか絶対に出れてないですもん。ひな壇で生き残れないですよね。
──絶対に無理です(笑)。
あはは(笑)。なんか、結果的に最良の選択をしてきたなって……別にバラエティに出ることを目的に活動してないですけど(笑)。
──いい立ち位置だと思いますけどね。音楽がちゃんとしてるから言い訳がきくっていうか。最後に、円谷プロの「トリプルファイター」(1972年にTBSで放送された特撮ヒーロー番組)への思い入れはあるんですか?
ああー。それが全然知らなくて。自分たちのバンド名で検索したら「トリプルファイターではありませんか?」って表示されて、それで調べて初めて知りました。「そんなんあるんだ、邪魔だな」っていう。
──邪魔だなって、向こうが先ですよ!
あはは(笑)。それぐらいの感じです。結局観たことも1回もないし。なんか名作らしいっすよね、知らないっすけど。
──画期的な特撮番組でしたからね、月金の帯でやってて、3種類のヒーローが金曜日にようやく合体してトリプルファイターになるんですよ。
へえ。トリプルファイターって名前、なんか弱そうですね。
──トリプルファイヤーが言うかって感じですけどね(笑)。
まあ、そうっすね(笑)。僕らはその「なんか弱そう」感を踏まえてやってるんですけど。
──てっきり特撮好きな人たちかと思ってました。この先、役者業が始まったりとか(参照:ジャニーズWEST藤井&濱田が大学生役でドラマW主演、同級生はトリプルファイヤー吉田)、舞台に出たりとか(参照:左右とトリプルファイヤー吉田、明日のアーのコント舞台に出演 / 11月3日から5日まで開催され現在は公演終了)もするわけですよね。そういう仕事は好きなんですか?
うーん。役者は、自分でセリフを考えずに、人が考えたセリフで活躍できるっていうのが、まあいい仕事だよなって。すごい失礼ですけど(笑)。
──ダハハハ!(笑) それ、役者さんに怒られますよ!
役者に興味を持ったことがあんまないんですよね。あんまり詳しくないです。映画も俳優で観たりしないし。なんか、アイドルとかがよく主役やったりするじゃないですか。ただ美少女コンテストで1位になっただけの人が役者をやって“演技派”みたいな扱いを受けてると、「それでいいんだ」ってちょっと思っちゃいますね。
──ちゃんと舞台で経験を積んだ人もいるけども、そうじゃない人たちが多いように見える。
うん。もともと適正があって選ばれたってことであってほしいけど、たぶんあの美少女コンテストに出る人に役者の才能ある人は……いるかもしれないけど少ない。まあ顔も才能ですけど、その世界を信用しきれない感じはありますね。
──たぶん、お笑いとかバンドのほうがピラミッドがきちんとできてる気はしますね。
そうですね。だから、あまり憧れはないです。
──それこそ、ずっと「残念な星野源」みたいな言われ方をしてきたわけじゃないですか。顔がなんとなく似ていて、本業が音楽で、さらに役者業まで始めたら。
ああ、近付いてきた……って(笑)。まあ、音楽だけは残念感を出したくないと思ってます。
──実際、音楽がちゃんとしてればあとは全部チャラになると思いますよ。
そうっすね。ホント何やるにしても、音楽があることによって立ち位置が確保されてきたと思うんで。まあ、何やるかは別に決まってないっす。とりあえずバイトは辞めて……月50万くらいほしいっすね。
──夢が小さいですよ(笑)。年収600万ですよ。
いや、最近なかなかいないっすよね、年収600万の人。それくらいいけたら、もうめちゃくちゃぜいたくしても大丈夫ですね。
- トリプルファイヤー「FIRE」
- 2017年11月2日発売 / アクティブの会
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[CD]
2160円/ WAVE-04
- 収録曲
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- 中一からやり直したい
- 人生を変える言葉
- はずれのヘルス嬢
- 野球選手になるために
- 有名な病気
- 漁師の手
- コインとキノコ
- 銀行に行った日
- じじいの同窓会
- 人生を変えた言葉
- 普通は走り出す
- Mac DeMarco Japan Tour 2018
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2018年1月22日(月)東京都 LIQUIDROOM
2018年1月23日(火)大阪府 梅田CLUB QUATTRO<出演者>
マック・デマルコ / トリプルファイヤー(サポートアクト)
- 「CAMPFIRE vol.1」
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2018年2月9日(金)東京都 TSUTAYA O-nest
<出演者>
トリプルファイヤー / 柴田聡子inFIRE
- トリプルファイヤー
- 吉田靖直(Vo)、鳥居真道(G)、山本慶幸(B)、大垣翔(Dr)からなるロックバンド。2006年に早稲田大学の音楽サークルで結成され、2010年に鳥居が加入して現在の編成になる。2012年5月初のアルバム「エキサイティングフラッシュ」をリリース。ソリッドな演奏とシュールな歌詞を組み合わせた今までにない作風で注目を集め、2014年2月発売の「スキルアップ」、2015年9月発売の「エピタフ」が話題作となる。2014年公開の今泉力哉監督映画「サッドティー」では劇伴を担当し、2016年には紗倉まな&小島みなみによるユニット・おとといフライデーにシングル表題曲「私ほとんどスカイフィッシュ」を提供。2017年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」への出演を果たした。吉田はテレビ番組へもたびたび出演しており、2017年10月にはテレビ朝日系「タモリ倶楽部」にて全編にわたって吉田を特集。2018年1月より日本テレビでスタートするジャニーズWESTの藤井流星&濱田崇裕主演ドラマ「卒業バカメンタリー」へのレギュラー出演も決定している。最新作は2017年11月発売のアルバム「FIRE」。