ナタリー PowerPush - TRIPLANE

5thアルバム「V」 “爽やかバンド”の本当の姿

サッポロビールのCMタイアップは逃したくなかった

──バンドは2010年から「北海道出身」ということを強く打ち出していますけど、それは自分たちらしさを取り戻す最初のステップだったんでしょうか?

江畑 というよりも、むしろその頃にはバンドとしての方向性は定まっていたんです。「やっぱこれだな」と。で、北海道を打ち出すというのは、活動のやり方を見直そうとする中で出てきた話ですね。

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──では、自分たちらしさを取り戻せたと思ったのはいつ頃のこと?

江畑 4枚目のアルバム「リバーシブル」からセルフプロデュースで制作するようになったんです。そのあたりから、自分たちらしさを取り戻していったと思います。

広田 セルフプロデュースすることで、活動の内容も、お金の話も、全部把握できるようになったんです。そこからはメンバーそれぞれがこういう作品にしたい、こういうライブにしたいと意見を言えるようになって、変わってきた気がしますね。以前は曲にほかの誰かのメスが入っていて、そういうのもストレスだったと思うから。

──北海道出身というアイデンティティを強く打ち出すことにしたきっかけは?

江畑 「雪のアスタリスク」という曲ができてからですね。会社もその方針に乗ってくれて、「お前らもそのほうがいいんじゃない?」って言ってくれた。そこからサッポロビールのタイアップが決まって「イチバンボシ」ができて、一気に拍車がかかったという。

──「イチバンボシ」はサッポロビールのCMタイアップの話があって書いた曲なんですよね。

江畑 これは逃したくなかったんですよ。サッポロビールは一番好きなビールだって前からずっと言ってきたし、このチャンスを獲得するためにできる限りのことをやろうという勢いがありました。

──タイアップの曲を作るにあたって、何かしら意識したことは?

江畑 制約のようなものは一切なかったです。例えばビールにまつわる言葉を入れてほしいというような要望もなかった。歌詞にそういう言葉があるのは、僕が勝手に入れただけです(笑)。バンドの熱意だけでやったつもりですね。とにかく逃したくない、ということで夢中になってました。

タイアップ曲ばかりのアルバムになるのはイヤだった

──そして昨年「イチバンボシ」というミニアルバムをリリースしましたよね。そこから、今回のアルバムの全体像はどういうふうにイメージしていったんでしょうか?

江畑 ライブをやってみると「イチバンボシ」という曲のパワーや影響力が、やっぱりすごく大きいんですよね。一瞬で人を巻き込む力がある曲だと思った。だから、最初はもう一度それが主役のアルバムでいいと思ってたんです。でも、話し合いをしていく中でそうじゃないほうがいいということになった。それからフラットに考えていきました。あと、最初は11曲入りにしようと思ってたんですよ。そうしたらタイアップの曲でほぼ埋まってしまい、タイアップのために書いた曲を集めたアルバムになるのかなって思ってたんですけど。

──今回のアルバムはそういう作品にはなっていないですよね。14曲で、ストーリーをちゃんと作っている。

江畑 最後の最後でそれができたんですよね。やっぱり、タイアップ曲ばかりのアルバムになってしまうのはイヤだったんですよ。ディレクターに14曲入れたいと伝えて、なんとかできる日程を組んでもらった。最初は、無理じゃないかってメンバーもスタッフも思ってたんじゃないかな。

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川村 ぶっちゃけ、お金の問題なんですよ。レコーディングの期間が取れるかと、予算的に曲数を増やせるかどうか。それが意外と大丈夫だった。

江畑 曲を増やしてもいいけど、日程は増やせないよって言われました(笑)。そこで運良く安いスタジオが見つかったのもあって、なんとかギリギリの日程で14曲が完成した。それから、アルバムの中でどの曲がどういう役割を持つのか、全ての立ち位置が見えてきたような気がします。

川村 だてに8年間やってないなって思いましたね(笑)。経験があったからこそできたと思います。前だったら11曲のものを作って、自分たちでも納得できないまま終わっていたかもしれないから。

爽やか一辺倒な印象を払拭したかった

──アルバムの6曲目「書き置き」から「ヨワキモノタチ」「優しい嘘」「つれづれのマイナーナイナー」までの流れは、オープニングの爽やかでポップな曲調とは対照的に、どん底に落ちるようなダークな雰囲気ですよね。そのコントラストがアルバムの大きな核になってるんじゃないかと思いました。

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江畑 まさにそうです。その暗い感じ、世界観が組み込めるのであれば、ほかが説明できると思いました。

──では「書き置き」から訊きたいんですけど、音質もカセットテープを再生したようなローファイなもので、歌詞も、まさに遺書のような内容になっていますね。

江畑 これは、僕の中で「ヨワキモノタチ」「優しい嘘」「つれづれのマイナーナイナー」の3曲と、その前の「麦色」の世界観をつなぐブリッジとして作った曲なんです。最初はインストにしようと思ってたんですけど、レコーディングの最終日に歌詞を書いて歌を入れました。

──「ヨワキモノタチ」という曲ができたのは?

江畑 この曲は、元々「友よ」というシングルのカップリングだったんです。でも、実はこれをA面にしようと思っていた。爽やか一辺倒な印象を払拭したかったんで。この曲調で、こんなメッセージを持つ曲がTRIPLANEのシングルのA面になるというのが、僕らとしてはテンションが上がる感じだったんですよね。

──歌詞の中に「コンドーム」という言葉を使っちゃうくらいの曲ですからね。

江畑 そういう曲がシングルのA面になっちゃうのがすごくいいなって思って会議に臨んだんですけど、許されなかった(笑)。で、そのときに僕はリベンジを誓ったんですよね。だから、アルバムでこいつを主役にしようと。そういう思いから収録した曲です。

──この曲がアルバムの1つのスタート地点だった、と。

江畑 僕の中では完全にそうです。

──だとしたら、この曲が浮いてしまうアルバムだとダメですよね。単なる変化球になってしまったら、意味がない。

江畑 そうですね。だったら入れなかったと思います。

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CD収録曲
  1. パノラマセカイ
  2. イチバンボシ
  3. Darling
  4. Greendays
  5. 麦色
  6. 書き置き
  7. ヨワキモノタチ
  8. 優しい嘘
  9. つれづれのマイナーナイナー
  10. 友よ
  11. -mori-
  12. 雪のアスタリスク
  13. Hello
  14. 六畳リビング
初回限定盤 DVD収録内容
  • パノラマセカイ(MUSIC CLIP)
  • イチバンボシ(MUSIC CLIP)
  • Greendays(MUSIC CLIP)
  • 雪のアスタリスク(MUSIC CLIP)
  • 友よ(MUSIC CLIP)
TRIPLANE(とらいぷれいん)

2002年4月に札幌で結成された、江畑兵衛(Vo,G)、武田和也(B)、川村健司(G)、広田周(Dr)からなる4人組バンド。2004年4月にオリジナル曲「スピードスター」がhitomiにカバーされたことで注目を浴び、同年10月にシングル「スピードスター」でメジャーデビューを果たす。2006年には「Dear friends」がアニメ「ONE PIECE」のエンディングテーマに起用され、リスナー層を拡大。以降もキャッチーなメロディと安定したバンドサウンドで活動を続ける中、2011年1月に「イチバンボシ」がサッポロビールの北海道エリア年間タイアップに決定。さらに北海道キロロリゾートCMソングや、2012年度サッポロビール北海道エリア企業CMソングを担当する。2012年2月に5thアルバム「V」をリリース後、23公演におよぶ全国ツアーを開催する。