ナタリー PowerPush - 小室哲哉、20年目の再プロデュースtrfを語る

祝20周年!今明かされる革新的ユニットの歩み

TRFが1993年のデビューから20年を数える節目の日、初期に使用していた“trf”名義で小室哲哉プロデュースによる新作ミニアルバム「WATCH THE MUSIC」をリリースした。このリリース決定に際して、小室が事前に発表した公式コメントは次の通り。

「WATCH THE MUSIC。ミュージックビデオ、テレビ、YouTubeなどのインターネット。音楽を見て楽しんでもらえる、音楽を見て踊ってもらえる、そんな作品。今回あらためてtrfをプロデュースさせて頂くことが決まった時から出来ていた言葉。trfの20年間の『懐かしさ』と『新しさ』のその両方を感じてもらえる作品にしたい」

ナタリーでは、作品を作り終えた小室に単独インタビューを申し込んだ。エイベックス千葉氏、YU-KI&DJ KOO、ダンサー陣のインタビューに続くTRF20周年特集のラストコンテンツをお楽しみいただきたい。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 上山陽介 スタイリング / Sachi Miyauchi

※アーティスト表記は今作に限り小文字表記の「trf」になります。本文中はすべて「trf」で統一しています。

フルアルバムにしてもよかったくらい

小室哲哉

──新作の「WATCH THE MUSIC」は、まさに懐かしさと新しさを同時に味わえるカッコいい曲ばかりでした。20周年デビュー記念日にあわせて発売、満を持しての再プロデュースと期待が高まる中、それを凌ぐ作品の出来に感激するリスナーもきっと多いと思います。

よかったです。自分の中ではその後ソロアルバム(「DEBF3(Digitalian is eating breakfast 3)」)も完パケなきゃいけなかったので「1つ目が終わった」という感じでしたし、最近まで制作してたっていうイメージですけど。1月1日も、三が日の間もスタジオにいましたね(笑)。

──全体的にはあまり時間かからずに作れたんですか?

いや、かかりましたね。そもそも一昨年の年末くらいかな、SAMと1対1で20周年に向けて話をしたんです。それから去年の夏に5人と食事をしながら、僕がインタビュアーのようになってダンサーチーム、DJ、シンガーの考えを聞いて。

──小室さんのほうからメンバーにアプローチしたんですか。

ええ。5人からのアプローチっていうのは、一緒にやりたいという思いは持っててくれてたとしても具体的に言われたわけではないので。まさに最初と一緒。最初も結局、みんながもともと知り合いだったわけではなく、僕が勝手に選ばせてもらった人たちを口説くところから始まったプロジェクトで、似たような作業をもう一度しなければならなかったんです。来年僕がまた関わって作品を1つ作ることに関して、どう思うかっていう。

──そもそも、小室さんはなぜ再びtrfと関わりたいと思ったんでしょう。

一番大きいのは、一昨年あたりから改めて思っていた、本当にストイックに自分の職業を決め込んでやり続けてるっていう5人に対する感心と、彼らからもらうリスペクトの気持ちです。20年間1日たりとも僕に感謝してる気持ちを忘れたことがないって、しゃべってもしゃべらなくても伝わってくる5人なんですね。それに対して僕も感謝があるんです。最初にさかのぼると1992年くらい、自分のプロデューサー人生にとっても不可欠な5人だったんで。それで、自分がtrfに対して思い描くアイデアみたいなものも沸々と湧いていたので、どうしても今作っておきたいなという。

──trfのための音源を?

そうです。5人のためのみですね。これをやるのは5人以外あり得ないというものが、朝起きてもう完全にでき上がっているような状態だったんです。ああいう曲にこういう曲っていう、アルバムのだいたいまとまった感覚が。

──それはすごい。

特に歌詞はほぼできていましたね。そうやって言葉が出てくるほど、先ほど言った彼らへの感心と感謝が全部語ってくれていたんです。なので、今回僕の中ではあと3曲増やしてフルアルバムにしてもよかったくらい。増やすとしたら、シンガーをフィーチャーした曲、DJをフィーチャーした曲、ダンサーをフィーチャーした曲の3曲。そこまで決まってたんです。正直まだ余力はあります。

MEGA-MIXを口説くのが一番大変だった

──ナタリーでは昨年11月のベストアルバム発売時に、エイベックス副社長の千葉龍平さんYU-KIさんとDJ KOOさんSAMさんとCHIHARUさんとETSUさんという3つのインタビューを公開しました。そこで各々の口から小室さんにまつわるエピソードがたくさん出てきたのですが、小室さんはユニット結成当時を思い返して印象に残っていることはなんですか?

2ndシングル「EZ DO DANCE」

やっぱり一番はMEGA-MIX(※SAM、CHIHARU、ESTUを含む8人組ダンスチーム。デビュー2年目までは全員がtrfのメンバーだった)を口説くのが大変だったということですね。ジャズやハウスの方面でMEGA-MIXというダンスチームとして確立していたので、そこにテクノみたいなまったく違うものを急に投げて、BPMもちゃんとクラシックなダンスをやっている彼らにとってはあり得ないもので。たぶん5回くらいは会って直談判をしましたね。そして最後、「じゃあまずサポートのような感じでいいから」と僕が折れたくらいですから。

──(笑)。そのお話からもよくわかりますが、先の3つの取材で見事に全員揃っておっしゃっていたのが「小室さんはダンサーに関して相当こだわりがあった」ということです。それはどういう意図だったのか教えていただけますか?

基本的に自分はロックから入ってミュージシャンになったわけで、ユニットといえばドラム、ベース、ギター、ボーカル、僕はキーボードですけど、4人以上の編成が当たり前だったんですね。だから2人編成だとどうしてもハマらないというか、いるべき人がいない、座りが悪いような……おかしいんです僕の中で。あまりにもおかしくて。ちゃんと1つの楽曲として視覚的にも成立しなきゃいけないと思ったんです。

──それってまさに「WATCH THE MUSIC」ですよね。trfというユニットは、最初から目で観て楽しんでもらうことを意識していたと。

そう。それ(観られること)ありきです。音とステージングを同時に始めましたから。あと、前に立つのが歌手の人だけだと、イントロからエンディングまで歌い続けなきゃいけない。ギタリスト、ベーシスト、ドラマーが魅せる時間を作って歌手を休ませてあげないと、1時間のステージでもあまりにも厳しいですよね。少しは呼吸したり、水を補給したり、後ろを向いて何か直したりという、細かいことも含めて。そのときにダンサーの動きっていうのは非常にアクティブで大きいんですね。そうすると視野も広くなるし、奥行き感も出ますし。

──なるほど。

僕、ロンドン(在住)時代は週に一度は観に行ってたくらいミュージカル好きなんですけど、そのときもキャストのダンサーにすごく目が行っちゃうんですね。みんな得意な技や動きを持っていて、プロのテクニシャンなわけで。そこらへんの興味もすごくあって、ダンサーは絶対に必要だと思ってましたね。

trfミニアルバム「WATCH THE MUSIC」2013年2月25日発売 / avex trax
「WATCH THE MUSIC」CD+DVD盤 [CD+DVD] 2940円 / AVCD-38579/B
「WATCH THE MUSIC」CD盤 [CD] 2415円 / AVCD-38580
CD収録曲
  1. ShowTime(4 Executive Seats)
  2. PUSH YOUR BACK
  3. arigatow
  4. Because of U
  5. LOVE is like a candle light
  6. Watch the Music
  7. EVERYDAY
DVD収録内容
  • PUSH YOUR BACK Original Version(ビデオクリップ)
  • PUSH YOUR BACK Dancer's Edition(ビデオクリップ)
  • PUSH YOUR BACK Promercial Version(ビデオクリップ)
  • Because of U(ビデオクリップ)
V.A.「「TRF TRIBUTE ALBUM BEST」2013/03/13発売 avex trax / [CD2枚組] 3150円 / AVCD-38676~7
V.A.「VOCALOID3 meets TRF」2013年3月27日発売 / avex trax / [CD] 2625円 / AVCD-38678
小室哲哉ソロアルバム「DEBF3(Digitalian is eating breakfast 3)」
2013年3月6日発売 / avex trax / [CD2枚組] 3500円 AVCD-38667~8
TRF(てぃーあーるえふ)

YU-KI(Vo)、DJ KOO(DJ、サウンドクリエイター)、SAM(ダンサー)、CHIHARU(ダンサー)、ETSU(ダンサー)の5人からなる音楽ユニット。1993年に小室哲哉のプロデュースにより、trf名義でシングル「GOING 2 DANCE」、アルバム「trf ~THIS IS THE TRUTH~」にてデビューを果たす。90年代中盤には「survival dAnce ~no no cry more~」「BOY MEETS GIRL」「CRAZY GONNA CRAZY」「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」など、数々のミリオンヒットを生み出す。1996年からユニット名を現在のTRFに変更。また1998年より小室プロデュースを離れ、独自のスタンスで活動。各メンバーはソロ活動や、他アーティストの振り付けなども行っている。2012年11月にはベストアルバム「trf 20TH Anniversary COMPLETE SINGLE BEST」をリリース。これを皮切りに連続リリース企画をスタートさせ、2013年2月にデビュー20周年を迎えた。

小室哲哉(こむろてつや)

1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、84年に「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花。93年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイクした。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒット。2010年、作曲家としての活動を再開。AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供している。