ナタリー PowerPush - T-Pistonz+KMC
合い言葉は「がんばリーヨ!」雑食パフォーマンス集団の魅力に迫る
2008年のデビュー以来、ゲームとアニメで展開されているキラーコンテンツ「イナズマイレブン」とのコラボレーションを一貫して務めているT-Pistonz+KMC。ラテン、ソウル、ファンク、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルを飲み込んだハッピーなサウンドスタイルと、ド直球で綴られた熱いメッセージは、子供たちを中心に幅広い世代へと響いている。
そんな彼らが満を持してリリースした1stアルバム「がんばリーヨ!」。そこには、「イナズマイレブンの……」といった説明を必要としない、いちアーティストとして勝負した純度の高いポジティブチューンが満載。今回の取材では、すべての人を笑顔で踊らせる唯一無二のパフォーマンスユニットの成り立ちと、その魅力についてリードボーカルのトン・ニーノと、ラッパーKMCの2人に語ってもらった。
取材・文/もりひでゆき
いつか世界に行けたらいいなと思って名前を英語に
──T-Pistonzは、パンクロックバンドの豚骨ピストンズから派生したユニットだそうですね。
トン・ニーノ もともと僕と、今も一緒にやってるヒロシ・ドット(Side Vo)とブラザー・エイ・キング(G)と、あともうひとりの4人でやってたのが豚骨ピストンズなんです。で、豚骨の1stシングル「よかろうもん」を、レベルファイブ(「イナズマイレブン」や「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」などを手掛けるゲーム開発会社)の日野社長がたまたま聴いてくれたらしく、「イナズマイレブン」というサッカーゲームのオープニングテーマを作ってほしいっていうお話をいただいて。それで結成されたのがT-Pistonzなんですよ。
──豚骨ピストンズのままではなく、名前の表記を替えて、メンバーも増やしたのはどうしてだったんですか?
トン・ニーノ ゲームとかアニメとかって海外でも発売されるじゃないですか。だから、僕らもいつか世界に行けたらいいなと思って名前を英語に(笑)。あと、サッカーと言えばブラジル、ブラジルと言えばリオのカーニバル。なので、サッカーゲームのオープニングテーマを歌うなら、そういうリオのカーニバル的なユニットがいいんじゃないかなと思って、女性ダンサーとイン・チキータさんに加わってもらって。観ても、聴いても楽しめるパフォーマンスユニットが完成しました。
本当は一発だけの予定が気づけば一緒にアルバムまで
──で、2009年にはラッパーのKMCさんが加入されて、T-Pistonz+KMCになるわけですが、その経緯は?
KMC 福岡の「トンコツTV」っていうテレビ番組を通じて出会ったのが2008年の年末ぐらいかな? 僕、すごい人見知りなんで、まさかパンクロックやってるお兄ちゃんと仲良くなるとは思ってなかったんですけど、話をしたら普通に気が合って。何かやれたらいいねって言ってたら、その2カ月後に一緒に曲やることになって、4月からアニメのオープニングテーマとして流れ出したっていう。とんとん拍子で話が進みましたね。
トン・ニーノ 2人とも福岡出身だったし、音楽で伝えようとしてること、根っこの部分がけっこう似てたんですよ。
KMC そうだね。ロックを歌ってればその人はロッカーなのか、ラップやってればみんながラッパーなのかみたいな、そういう考え方に共鳴したというか。
──音楽的なスタイルではなく、魂みたいな部分を大事にしたいということですか?
KMC ですね。福岡っていう土地は、「おまえらポップなことやってんじゃねぇよ」みたいなことを言いたがるアンダーグラウンドの先輩たちがかなり多くて。そういうのにちょっと嫌気を感じていたというか。ジャンルなんて関係ないんじゃないかなっていう、そういう部分の感覚が共通してたのが一緒にやる一番のきっかけでしたね。ただ、T-Pistonzの「リーヨ」って曲のビデオクリップを観たら、中学のジャージみたいなの着て踊ってたから、「大丈夫かな!?」とは思いましたけど(笑)。
トン・ニーノ あははは。僕としては、T-Pistonzはほんとにジャンル問わずやりたかったので、そこにラップとかヒップホップとかが入ってきたらどうなるんだろうっていうのがあったんですよね。世界観も広がるだろうしっていう。
KMC 本当は一発だけの予定だったんですけどね。気づけば一緒にアルバムまで辿りつきました(笑)。
俺はたぶんジャズでもロックでもラップはできる
──T-Pistonz+KMCの音楽性は本当に、笑っちゃうくらいに幅広いですよね。
トン・ニーノ ファンクもソウルもラテンも、自分が楽しいと思った音を全部取り入れようとしてますね。欲張りすぎてわけわからんサウンドになることもあるんですけど(笑)。それはそれで前代未聞というか、どこにもない面白い音楽ができてるんじゃないかなとは思います。
──めちゃくちゃ楽しいです。ただ、ラップをのせるのが大変な曲もあるんじゃないかなぁと思うんですけど、そのへんで苦労することはありますか?
KMC 僕自身の音楽性の振り幅も、もともとすごく大きいんですよ。姉ちゃんは日本の曲とかディスコ系の曲とか聴いてたし、兄貴はロック、お母ちゃんはクラシック、俺はヒップホップっていう家庭の中で育ったから、全然何がきてても平気っていうか。
トン・ニーノ へぇ、そういう環境があったんだね。今に続いているような。
KMC そう。だから俺はたぶんジャズでもロックでもラップはできるんですよね。
人に対して届くか届かないかだけを考えてる
──頼もしいですねぇ。あと僕が感じたのは、「イナズマイレブン」というきっかけはあったにせよ、子供だけに照準を合わせて音楽を作っているわけじゃないんだろうなってことで。
トン・ニーノ あ、それはありますね。子供だけじゃなく、大人もちゃんと楽しめるようなサウンドには最初からしたかったんですよ。
KMC 子供に向けてとか、大人に向けてとか、そういうことはあんまり考えてないのかもしれないですね。人に対して届くか届かないかだけを考えてると思うんです。子供の中にも社会はあるし、根本的には大人とあんまり変わらないですからね。
──そういうスタンスは歌詞においても同様ですか?
トン・ニーノ 歌詞に関しては、何かに例えたりとか、難しいことを言ったりとかは排除してますね。それは自分の中で守ってるというか。なぜ自分たちが歌ってるかといえば、やっぱり伝えたいことがあるからなわけで。だったらストレートでわかりやすい歌詞で届けたいんです。そうすれば大人も子供もわかってもらえるだろうなって。
──うんうん。ストレートに歌詞を書くことが、リスナーの年齢層を下げることではないですもんね。
トン・ニーノ 実際、しゃべってるときは恥ずかしくて言えないことでも、歌だったらわかりやすく気持ちを込めて歌えるんですよ。そこにウソがないっていうか。
CD収録曲
- がんばリーヨ!!
- つながリーヨ
- 気合でハリケーン
- 小さな恋の物語
- スーパー立ち上がリーヨ!
- 勝って泣こうゼッ!
- 「E」
- DASH!!!!
- GOOD キター!
- 素晴らC
- 最強で最高
- マジで感謝!
- がんばリーヨ!!(リプライズ)
T-Pistonz+KMC(てぃーぴすとんずぷらすけむし)
2008年8月にシングル「リーヨ~青春のイナズマイレブン~」をリリースしたパフォーマンスユニットT-Pistonzに、ラッパー・KMCが加わったエンタテインメント集団。2009年6月発売のシングル「マジで感謝!」からT-Pistonz+KMC名義での活動をスタートさせ、リリースを重ねることに着実に知名度を高めていく。一度観たら踊らずにはいられないハッピーなパフォーマンスと、心に染みるメロディライン、KMCによる親しみやすいラップが融合した独特のスタイルが魅力。2010年3月発売の5thシングル「勝って泣こうゼッ!」は、オリコンウィークリーチャート最高4位を記録するヒットとなった。これまでに発表したシングルはすべて、人気のゲームソフト「イナズマイレブン」および同名アニメのテーマソングに起用。子供から大人まで、幅広い層から支持を集めている。