音楽ナタリー Power Push - TOWA TEI
盟友・伊藤桂司&五木田智央と考える“音楽とジャケット”
アートワークや音楽は脳の使っていない部分を刺激するタッチポイント
──ジャケットには、それを通じてアートやデザイン、写真、ファッションなどの知識を得られるという側面もありますよね。
伊藤 僕もそうでした。アナログをもっとも熱心に買っていた70年代、デザイン集団のヒプノシスとかロジャー・ディーンとかが手がけたジャケットが好きでしたね。一般的な美術史とはまた違う文脈ですけど、彼らからの影響は計り知れなくて、今、その体験のすべてが役に立っている。
──ただ、先ほどテイさんも言っていたように、音楽が配信されている今、パソコンやスマートフォンなどでいかに目を引くかという視点でジャケットがデザインされることも多いと思います。
伊藤 でも、優れたジャケットは小さくなってもよさが変わらないですよね。まあ、僕自身はそういうことを特別に意識していないですけど、見え方の大小問わず、すべてに対応できるジャケットを作らないといけないと思っています。
──テイさんは坂本龍一さんが担当していたラジオ番組「サウンドストリート」のデモテープ投稿作品をまとめた「DEMO TAPE-1」(1986年)で初めてジャケットをデザインしたわけですが、今、自作のジャケットはどう捉えているのでしょう?
TOWA TEI ジャケットがなくても音だけで勝負できる自信はあるんですけど、アートワークや音楽は脳の使っていない部分を刺激するタッチポイントとして考えているんだよね。だから、今回の五木田くんのような絵があれば、極端な話、ジャケだけでもいいやって思うこともある。要するに音楽とジャケットがイコールだとは捉えていないんだけれど、これまでアルバムを作ってきた中で、桂司さんとか五木田くんとかバリー・マッギーとか素晴らしい人たちに絵を描いてもらえた。自分の音楽を作り続けていれば、そういう縁に巡り会えるんだよ。
「INTERSECT BY LEXUS RECORDS #001」の発売日である7月22日、東京・青山にある複合ラウンジ・INTERSECT BY LEXUS TOKYOのラグジュアリーな地下空間に約100人のゲストが集まった。招待客を見渡すと、「CUTE」にゲストボーカルとして参加したLEO今井や水原佑果、テイと旧知の仲である野宮真貴、小山田圭吾(Cornelius)などの姿もある。
この日、ゲストにはお気に入りのアナログレコードを持参するよう言付けられており、現場ではテイが来場者と持参したレコードを紹介し、実際に曲をかけて場全体で楽しむという試みが行われた。各々お酒や軽食を片手にアナログの音色と会話を堪能する。そんな中、「INTERSECT BY LEXUS RECORDS #001」収録の「甘い生活」がかかると、野宮がマイクを持って歌う一幕も。今度は同作収録の「CUL DE SAC」でLEO今井が歌い出し、突然のライブパフォーマンスに来場者は大いに沸き立っていた。
- TOWA TEIオリジナルアルバム「CUTE」
- [CD] 2015年7月29日発売 / 3000円 / MACHBEAT.COM / MBCD-1501
収録曲
- FLUKE
- TOP NOTE
- LUV PANDEMIC
- NOTV
- HEAVEN
- SOUND OF MUSIC with UA
- TRY AGAIN
- CUL DE SAC with Leo Imai
- BARU SEPEDA
- CHAISE LONGUE
参加アーティスト:細野晴臣、METAFIVE、Atom、NOKKO、UA、水原佑果ほか
- TOWA TEI監修7inchアナログレコード「INTERSECT BY LEXUS RECORDS #001」
- [アナログ] 2015年7月22日発売 / 1512円 / INTERSECT BY LEXUS RECORDS / IBLR-001
収録曲
- A-01. CUL DE SAC / TOWA TEI with Leo Imai
- B-01. 甘い生活 / 野宮真貴、高野寛
TOWA TEI(テイ・トウワ)
1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム「World Clique」で全米デビュー。その後活動の拠点を日本に置き、1994年にソロアルバム「Future Listening!」をリリースする。2005年からは「FLASH」「BIG FUN」「SUNNY」というアルバム3部作を発表し、その評価をさらに高める。2007年には自身の音楽プロダクション「hug inc.」、2010年には電子セレクトショップ「MACH」を設立。そのほか、DJやトラックメーカー、プロデューサーとして多彩な活動を展開。2014年にはソロデビュー20周年を迎え、ベストリミックス集「94-14 REMIX」、ベストカバー集「94-14 COVERS」、ベストアルバム「94-14」を続いて発表した。2015年現在、東京・青山にあるINTERSECT BY LEXUS TOKYOの店内音楽を監修。7月にはオリジナルアルバム「CUTE」をリリースした。
五木田智央(ゴキタトモオ)
1969年東京都生まれの画家。2000年、リトルモアより作品集「ランジェリー・レスリング」を出版。即興的に描かれた初期作品はカルト的な人気を集め、2000年代中盤より海外のギャラリーを中心に活躍する。個展は2006年にアメリカ・ニューヨークのATM Gallery、2007年にアメリカ・ロサンゼルスのHonorFraser Gallery、2008年に東京のTaka Ishii Galleryなどで開催。現在は美術の世界にとどまらず音楽、出版、ファッションなど各方面に活躍の場を広げている。
伊藤桂司(イトウケイジ)
1958年東京都生まれのアートディレクター。主に広告、雑誌、音楽などの分野でグラフィック、ビジュアルワーク、アートディレクション、映像を中心に活動。これまでに雑誌「Numero TOKYO」「SWITCH」「BRUTUS」「流行通信」「casaBRUTUS」「relax」「Cut」などのカバーアート、音楽関係ではTOWA TEI、スチャダラパー、キリンジ、木村カエラ、PES from RIPSLYME、ohana、クラムボン、Buffalo Daughter、野宮真貴、一青窈、BONNIE PINK、orange pekoeらのCDジャケットやミュージックビデオを手がける。ほかにNHK Eテレの番組のセットデザインやタイトル映像、ブルックリンパーラー博多の店内壁画など活躍は多岐にわたる。京都造形芸術大学教授、UFG(Unidentified Flying Graphics)代表。