TOUCH×BIGMAMA|Zeppツアーに向け、心の琴線に触れる一瞬を

関係性が0になった今、必要とされる存在でい続けること

──BIGMAMAは新体制となって初のワンマンライブを昨年8月に無観客で開催しました(参照:BIGMAMAが過去や未来を行き来してキャリアを総括、そして今を選んだ新体制初ライブ)。コロナ禍という苦しい状況の中での再始動になりましたが去年の活動を振り返ってみていかがですか?

BIGMAMA

金井 メンバーが抜けて再始動するというのはネガティブなことだと思うんですけど、それが去年だったのはある種ラッキーだったというか。コロナ禍でこれまでのようなライブができなくなり、大げさに言うとすべてのアーティストとファンとの関係性が一度リセットされたと思うんです。つまりそういう意味で自分たちの再始動のタイミングが世の中の再始動のタイミングと重なった。もう一度存在価値が測られるときにフラットな条件なので、僕らにとってはラッキーだったなと思います。

──なるほど。

金井 ライブに声を出せない、ソーシャルディスタンスを守らなくてはいけないという決まりができて、例えば今日から前と同じようにやってくださいと言われても簡単には元に戻れないと思うんです。今までの状態だったらもう一度新体制で武道館に立てるようにがんばろうと思っていたんですけど、武道館でライブをすることがコロナ以前とは同じ意味合いではなくなってしまった。そうなると、具体的な目標ではないですが、バンドとして単純に必要とされることが目的になったんですよね。必要とされるために1つずつ丁寧にクリエイトして、必要とされる存在でい続けることが今やるべきことなのかなと思っています。

2021年は作品至上主義に向き合う年に

──新体制での活動はどうですか?

柿沼広也(G, Vo)

柿沼 僕らはドラマー探しをしている最中に緊急事態宣言になっちゃったので、イチかバチかでビス(Bucket Banquet Bis)にお願いして。でも早めに決めたことによってバンドで合わせる時間も多く取れたんです。一緒に合わせてみてドラマーが変わるとバンドの印象がガラッと変わるんだなと思いましたし、自分たちの楽曲のよさを再認識する機会にもなりました。ライブができない期間が自分たちのすり合わせの時間として有意義に使えてよかったです。お披露目はTOTALFATのライブに飛び入りみたいな感じでやらせてもらったんですけど、ファンの反応を見て新しいBIGMAMAを待ってくれてる人たちがたくさんいるんだなと思えたのが救いでしたね。

金井 1年前にやっていたツアー「Roclassick Tour 2020」は回を重ねるごとにマスクをしている人の割合が増えていって、みんなの表情がわからなくなっていって、それによって自分たちのライブの良し悪しがわからなくなっていったんですよ。最後の曲をやり終えたときの達成感が今までのやり方では測れなくなってしまった。今はみんなのマスクの下の表情を想像しながらやっています。そうやって試行錯誤してモデルチェンジをしている時期でもBIGMAMAに興味を向け続けてくれている人たちとの関係は一生ものだなと思います。ファンもアーティストもお互いが孤立してはいけないなと。音楽でつなぎとめている関係なので、明るい気持ちになれるようなクリエイションを増やしたいと思っています。

──2021年は今回の「TOUCH」や5月のツアーを含め、どんな活動をしていきたいですか?

金井 ライブに関しては無理をしないというのが1つのテーマですね。約束を守ること以上に世の中の空気を読んでちゃんとみんなが動きやすいときにライブをやるべきだと思っているので。音楽を作ってライブをすることはルーティーンとしてうまくやっていきたいですけど、臨機応変にやっていきたい。制作面でもマインドは変わってきていて、昔はライブで楽しんでもらえるもの、演奏して高揚感があるものを第一主義にしていたんですけど、もっと作品至上主義になるべきだと思ってますね。ライブでこういうことがしたいからこんな曲を作るというルーティーンからは外れて、完成された世界観の中でサイズにこだわらず、1つひとつ作品をきちんと作りたい。そのほうが自分の創作欲求やモチベーション、ひいては結果的にライブしやすくなると思うので。

──作品至上主義での活動は金井さんが得意なことでは?

金井 そうですね。得意なことに改めて向き合いなさいと言われているような気もします。それをちゃんと自己満足じゃなくていろんな人の満足につなげていけるようにしたい。もうここまでキャリアがあると焦ってもしょうがないですし、丁寧に作るうえで時間は財産なので、時代があるべき姿になったと思ってがんばります。伝えたいことをきちんといい形で音楽にまとめて発表していきたいですね。

BIGMAMA