このアルバムにはバンドとしてReborn感がある

──前回のインタビューで、Shunさんに当時制作途中だったニューアルバムの話を訊いたら、「前半は、かなりえらいことになってます。で、後半は新しい引き出しがたくさん詰まってる」って答えてくれたんですね。で、今回のアルバムを聴き終えたときに前回のインタビューを読み返したら、確かにそのとおりの内容になってるんですよね。

Shun　いざ作り終わってみて全体を見渡してみると、新しい要素はもちろん入ってるんですけど、1stアルバムみたいな感覚っていうか、新鮮さと同じくらい懐かしさみたいなものも感じられるんです。サウンドだけ取り出せば、多分世界のメロコアの中でもトップクラスにハイファイな音だし、楽器の鳴りやバランスなど全てにおいて完璧なんですよ。でも、制作中は自分自身の中でいろんな葛藤があったし、みんなで何回も話し合って、ときには泣きながら書いた曲もあって。そういった、自分たちが背負ってるものとか感情とか全部がこのアルバムに入っていて、そういったところが1stアルバムを作ったときの感情に近くて、自分たちが忘れていた何かを取り戻せそうな気がしてるんですよね。

──その「忘れていた何か」とは？

Shun　バンドを始めた頃の楽しさみたいな、そういう純粋な気持ちかな。このアルバムを作ってなければもっと取り戻しにくくなってたんだろうなっていう感情を、呼び戻すことができたんです。だから、いざ作り終わってみたら、もう引き出し云々とかそういった細かいことがどうでもよくなってきて。とにかくこれからは、そういった純粋な気持ちを再び背負ってライブをやれたらなと、今はそれくらい覚悟が決まってるというか、非常にポジティブですね。

Bunta　聴いた人は新しいことをやってるように感じるかもしれないけど、俺ら的には新しいことをやったっていう感じでもなくて。

Jose　ウクレレ入れましたとか、ピアノ入れましたとか。

Kuboty　わりとそういうのは貪欲にやってるけど、結構どうでもいいっちゃどうでもよくて、もっと根本の部分での大きな一歩がこのアルバムにはあるんです。

Shun　TOTALFATとして1枚は作らないと終われないようなものが作れたと思う。TOTALFATを12年続けてこれが作れたから、干支と一緒ですね（笑）。でも、このアルバムからまたゼロスタートですよ。

Jose　バンドとしてRebirth感というか、Reborn感があるよね。

将来的にバンドのターニングポイントになるアルバム

──最後に、アルバムのタイトルとジャケットについても訊かせてください。ジャケットには猿が登場しますが、アルバムタイトルの「Wicked and Naked」とどのような関連性があるのでしょうか？

Shun　僕らはメンバー4人で作った「Place to Try」を発表する際、TOTALFATが日本語詞の曲をやることやアニメのテーマソングをやること、それをシングルで出すことについて、逆風を覚悟して進んでいったんですけど、すごくいい流れを掴むことができて。そこで「周りを気にする以上に、やっぱり自分たちのことを信じなきゃダメだ」「人の根底にある喜怒哀楽の部分をもっとさらけ出して裸になって、メンバー4人でぶつかり合って、良い曲を作っていかなきゃいけない」ってことを、改めて実感したんです。そこから、アルバムを制作していく中で「Naked（＝裸）」という単語がキーワードのひとつになっていて、メンバー同士で話し合いをしてるときに「これはもう、アルバムタイトルに入れなきゃな！」って思ったんですね。で、アートワークの猿ですけど、猿って裸で生活する生き物ですし、そこも絡めつつ。

──なるほど。

Shun　人間誰しもいろんなノイズが目や耳に入ってくると、気にしなくていいことまで気になっちゃったり、感じる必要のない重圧を感じたりして、それに対して言い訳をしたくなる自分がいると思うんです。そういう外的な要素を一度排除しよう、そういうことに惑わされずに自分たちを信じていこうと。TOTALFATのファンにも、職場や学校などいろんなところで同じように生きていってほしいし、そうやって戦ってきた人たちがライブ会場で集まったときに本当にポジティブな感情が芽ばえると思うし。そういう意味で、邪悪なもの（＝Wicked）……目で見たものに惑わされず、耳から入ってきた雑音にも惑わされず、そこに対してその場しのぎで言いたい言葉を自分の中で我慢して、その代わりに自分自身を信じて裸になって全てをさらけ出して答えを見つけよう、という意味がタイトルとジャケットに込められているんです。

──今のTOTALFATにぴったりな言葉だと思いますし、アートワークとのリンクも非常に面白いと思いました。

Shun　すごくストイックなイメージかもしれませんけどね。で、TOTALFATが元々持ってるビビッドな部分を、殴り書きのタイトル「Wicked and Naked」に落とし込む、と。アートワークは、「World of Glory with JOE INOUE」や「DAMN HERO」の頃からずっとお世話になってる7STARS DESIGNさんが手がけてくれてるんですけど、僕らの考え方や感覚をちゃんと共有してくれていて、僕らが出したアイデア以上のものを返してくれるんです。ホント最高ですよね、これ。内容もアートワークも含めて、とにかく守りに入ってた部分を全部攻めに変えて、気持ちを新たにやっていけそうなアルバムになってると思います。例えば10年後にTOTALFATが過去を振り返って、ターニングポイントになったアルバムを選ぶときにこのアルバムをピックアップするかもしれない。将来的にはそういう作品になるんじゃないかな。