ナタリー PowerPush - TOTALFAT
勝負作「Wicked and Naked」でバンドの全てをさらけ出す
TOTALFATのニューアルバム「Wicked and Naked」がリリースされた。メジャー移籍後通算3作目のアルバムとなる今作には、昨年秋から今春にかけて矢継ぎ早に発表されたシングル「Place to Try」「Good Bye, Good Luck」「PARTY PARTY」を含む全12曲を収録。王道メロコアチューンからシンガロング必至のロックナンバー、キーボードをフィーチャーしたミディアムチューン、毎作お約束となった疾走メタルナンバーまで、個性豊かな楽曲がずらりと並ぶ。
今回ナタリーではメンバー4人にインタビューを実施。アルバムを制作する際にメンバーが意識したことから、日本語詞の楽曲を導入したことによる心境の変化、さらにはアルバムタイトルやアートワークに込めた思いなどを、じっくり訊いた。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 佐藤類
ナタリーに載っていたX JAPANインタビューが励みに
──ニューアルバム「Wicked and Naked」、聴きました。前作「DAMN HERO」以降に発表された3枚の日本語詞シングル(「Place to Try」「Good Bye, Good Luck」「PARTY PARTY」)が軸になった、素晴らしい作品だと思います。アルバムに日本語詞の楽曲が収録されるのは今回が初めてですよね?
Jose(Vo, G) そうです。シングルでは日本語詞だった「World of Glory with JOE INOUE」がアルバム(前作「DAMN HERO」)では英語詞になってたので、ファンから「『Wicked and Naked』に『Place to Try』の英語バージョンは入らないの?」っていう声はありましたけど(笑)。
Kuboty(G) シングルとアルバム、どちらも楽しめるように歌詞やバージョンを変えるっていうのもアリかなと。
Bunta(Dr) 完全にいただきだよね。
Shun(Vo, B) 以前ナタリーに載っていたX JAPANのインタビューで、「海外ツアーで代表曲を演奏する際、最初は歌詞を英語にして歌ってたけど、お客さんはオリジナルバージョンの日本語詞で歌ってくれるから、ツアー後半はほとんど日本語詞に戻した」ってYOSHIKIさんが言ってたのを読んで、僕ら的には励みになったというか。自分たちのアルバムに日本語詞の楽曲を入れることに対して抵抗がなくなったのは、ここ1年の間にTwitterやFacebookを通じてインドネシアやアジア諸国のファンからメッセージが届くようになったのも大きくて。そうやって交流していく上で、日本語と英語の壁について僕らが考えていた以上にファンは気にしてなかったんだなと気付いたんです。
──日本の音楽はYouTubeなどを通じて、海外にいても聴けますし。もしかしたら「ロックは英語圏で生まれた音楽だから、英語で歌うのが当たり前」と思ってた外国人にとって、日本語で歌うロックって新鮮に映ったのかもしれないですね。
Kuboty K-POPアーティストも日本語バージョンで歌うより、韓国語で歌った原曲のほうがカッコいいと思うし。
日本語詞で歌うようになって歌い手として意識が高まった
──アルバムに収録されている新曲の日本語詞は全てShunさんが作詞していますが、制作は順調でしたか?
Shun 非常に楽しみながら書かせていただきました。歌詞を書いてるときは結構シリアスな空気になったりしたんですけど、ドキドキしながら歌詞をメンバーに渡したあと、彼らの反応を見るのがすごく楽しくて。ほかの3人からのインプットもありつつ、僕の中から湧き出てくる言葉をみんなが尊重してくれることに、喜びを感じるようになりました。
──バンド結成13年目にして、新たな喜びに気付いたと。
Shun はい。歌詞が書けてすごくラッキーだなって思います。書き終わったものをどう言われても別に構わないなって思えるようになったし、とにかくそのときに感じたことがちゃんと形にできて、ちゃんと向き合えるようになったというか。僕がライブのMCで涙を流しながら話していることを日本語詞でも表現できたことが、自分にとってすごく大きなことなんです。Joseくんも、今までは僕がMCで伝えてたことを、今度は自分が歌うパートで、言葉で表現できることがうれしいって言ってくれて。
Jose 英語詞だけでやってた頃から言ってることはあまり変わってないんですけど、日本語詞にすることで伝わり方が全然違うんです。例えば俺が英語詞で歌ったことと同じようなことを、ShunがMCで話すとします。すると俺は、「あれ、これ俺がさっき歌ってたことなのに、今のMCのほうが反応がデカイぞ?」って感じてたんです。
──日本語のほうがよりダイレクトに伝わりますものね。
Jose で、そういったことを日本語詞で歌うようになってからは、もっとうまく伝えるにはどうしたらいいんだろうとか、もっと表現力を付けなきゃとか考えるようになって。以前よりも歌い手として、より意識が高くなった気がするんです。
Shun 以前はMCで感極まって泣くことはあったけど、英語詞の曲を歌ってるときにある歌詞がグサっと心に刺さって感極まることはなかったんです。だから、お客さんとシンガロングしながら僕もお客さんも涙が出てくるような、共鳴できる日本語の歌詞をどうしても書きたかった。その思いをメンバーに伝えて、完成したのが「Place to Try」なんです。
──なるほど。
Shun まだ僕が書きたいテーマというのはひとつしかなくて、今回のアルバムではそのひとつのテーマに対してすごく集中することができました。そういう意味では、「Just Say Your Word」は今の僕が書くべきこと、書かなきゃいけないことを全て注ぎ込めたかな。この曲がアルバムに入るか入らないかで、アルバムの仕上がりはかなり違ったと思うけど、ほかのメンバーがちゃんと受け入れてくれたところに、バンドとして大きな成果を上げることができたと思うんです。
Bunta 日本語詞の曲はこういう内容だからこういうふうに演奏しようって別に話し合ってるわけじゃないんですけど、自然と演奏も変わってくるんですよね。特に「Just Say Your Word」はリハーサルの時点でとても新鮮な空気を感じて、それもあって叩き方や演奏の仕方も変わったんじゃないかなと思います。
Shun 自分たちが作った歌詞やメロディなのに、逆にそれが僕らにいろんな影響を与えるんです。
ニューアルバム「Wicked and Naked」/ 2012年7月4日発売 / Ki/oon Music
CD収録曲
- ROCKERS IN DA HOUSE!!
- Place to Try
- X-stream
- PARTY PARTY
- Just Say Your Word
- Highway Mark4
- We Rise Again
- Echoes Inside My Memories
- Friend Never Sucks
- Fat or Die
- Good Bye, Good Luck
- The Naked Journey
初回限定盤DVD 収録内容
- ROCKERS IN DA HOUSE!!(Studio Live)
- Place to Try(Studio Live)
- X-stream(Studio Live)
- .Documentary Films & Interview
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を続けている。2008年以降は「PUNKSPRING」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」などの大型フェスに出演。また、GOOD CHARLOTTEやTHE OFFSPRINGの来日公演ではオープニングアクトを務めた。
2010年6月にKi/oon Records(現Ki/oon Music)からメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。翌2011年5月には井上ジョーをフィーチャーした日本語詞のシングル「World of Glory with JOE INOUE」をリリースし、話題を集めた。続けて同月末にメジャー2ndアルバム「DAMN HERO」を発表。9月には全国ツアーのファイナル公演として、SHIBUYA-AXでワンマンライブを実施し大成功を収めた。同年11月に2ndシングル「Place to Try」を発売。2012年は1月に3rdシングル「Good Bye, Good Luck」、4月に4thシングル「PARTY PARTY」、7月にメジャー3rdアルバム「Wicked and Naked」を立て続けにリリースした。