「Always」のベースはマイクを手元に立てて録音

──そして3曲目にはアコースティックナンバーの「Always」が収録されています。ここまでアコースティックにこだわった曲は、バンドとしても初めてでは？

Shun　インディーズの1stアルバム「End of Introduction」や前のアルバム「DAMN HERO」でもそれっぽい曲をやってるけど、フルアコースティックって意味では初めてと言っちゃっていいと思います。

──楽器の音数が少ないアレンジですよね。

Shun　そうですね。アコギ1本とカホン、途中からベースが入ってきて。実はこのベースの音、僕がエレキベースを弾いてるときに手元にマイクを置いて録った、要はエレキベース自体の生音なんです。

──それでああいう丸みを帯びたやわらかい音なんですね。そもそもどうしてこんな方法でベースをレコーディングしたんですか？

Shun　ギターのコードがめまぐるしく展開していくので、コード感がわかるルート音を残したいねって話になったんです。僕が普段使ってるベースは出力がめちゃくちゃ強いのでアンプにつなげたら音が飽和しちゃって話にならないので、アコースティックベースで録ろうって話だったんですけどアコースティックベースが身近になくて。それで「どうしよっか？」って考えてたときにKubotyが「手元にマイク立てりゃあいいんじゃない？」って思い付いて、実際に試してみたらエンジニアもビックリするくらい音が良かったんですよ。

──歌が軸になっていて、スピーカーの左側でアコギ、右側でカホン、そして真ん中でうっすらとベースが鳴ってる。この振り分けも新鮮でした。

Bunta　ちゃんと真ん中でベースが鳴ってるから、アコギやカホンを左右に振っても違和感がないし。これでベースがなかったら、アコギもカホンも真ん中に寄せてただろうし、全く違う感じになってたんじゃないかな。

Shun　カホンが真ん中で鳴ってないことで歌がより映えるんですよね。そういうレコーディング手法も実験的にやったにしてはうまくいったなと。実はINCUBUSの新作「IF NOT NOW, WHEN?」を聴いてたときに、こういうアレンジも面白いなって思い付いて。普段のTOTALFATの音って超ハイファイで、自分たちの意向を元にエディットもたくさんしてるし、いい意味ですごくケミカルで整理された音だと思うんです。一方で、その真逆とは言わないですけど、それとは異なるアプローチの音があってもいいなっていうのをINCUBUSの「Promises, Promises」っていう曲を聴いたときに考えて。そこからの影響はありますね。

バンドの規模拡大で曲のバラエティも豊富に

──TOTALFATは作品を重ねるごとにいろんなタイプの曲に挑戦していて、アレンジの幅も以前と比べてかなり広がりましたね。

Bunta　バンドの規模が前より大きくなったことで、いろんなタイプの曲が演奏できるようになったんだと思います。実際、ワンマンライブのセットリストも以前より長くなったし、フェスに出ても昔は30分だったところが50分のショーをできるようになった。そういうときに、昔だったら「この曲、ライブやフェスでどのタイミングで演奏するの？」っていうような曲も、今ならちゃんと流れの中で聴かせることができるようになったんです。例えば1時間くらいのライブで、後半にちょっとスローな曲やアコースティックナンバーを演奏するだけでライブの空気が変わるし、あとで演奏する曲も映えてくるし。

Shun　実際に昨年末の「COUNTDOWN JAPAN 11/12」もアンコール込みで1時間くらいだったんですけど、以前のTOTALFATだったらアッパーな曲だけをぎっしり詰め込んだライブになってたと思うんです。

Bunta　お客さんもそれを求めてたりするしね。

Shun　でも、この前の「COUNTDOWN JAPAN 11/12」では「See You Later, Take Care」から「All for You」（2曲ともアルバム「DAMN HERO」収録）っていうすごくまろやかなパートを設けて。アコースティックナンバーの「See You Later, Take Care」をじっくり聴いてもらって、そこから「All for You」で最後に向かって上げていく、そのコントラストがいいなと思いましたね。

Bunta　この前の「PUNKSPRING 2012」の話に戻るんですけど、THE OFFSPRINGも「Pretty Fly (For A White Guy)」から「Kristy, Are You Doing Okay?」「Why Don't You Get A Job?」っていうセットリストを組んでいて。やっぱりアコースティックナンバーがレパートリーにあるバンドはいいよね。

Shun　「Why Don't You Get A Job?」でまったりした後、最後まで全速力で突っ走っていくからね。そういうところもやっぱり自然と見習っちゃいますよね。

これから世に出す作品に関しては限りない自信がある

──アルバム「DAMN HERO」からそろそろ1年経ちますが、現在は次のアルバムの準備をしているんですか？

Shun　はい。ちょうど佳境です。

──どんな感じになりそうですか？

Shun　すげえいい感じです。早い段階でアルバムの押し曲候補を用意してたんですけど、その中からピックアップしたのが「PARTY PARTY」だったんですよ。だから次のアルバムには、「PARTY PARTY」級に僕らの中で優先順位が高い曲がまだまだあって。前半はけっこうえらいことになっていて、後半で僕らの新しい引き出しと遊びが詰まってる感じかな。毎回お決まりのメタルチューンも入る予定ですけど、今回は笑っちゃうと思いますよ、いろんな意味で（笑）。

Bunta　今までも常に全力でやってきたと思うんですけど、次のアルバムは多分それとはまた違う感じっていうか。俺らの中の一番濃い部分がギッシリ詰め込まれてる感じがするんですよね。

Shun　エモいかもね。

Bunta　でも、それがいいんだろうね。

Shun　作るときにどれだけ苦しんだか、どれだけのものを犠牲にしたかが、きっと聴く人に伝わる仕上がりになると思うんで。これから世に出す作品に関しては限りない自信があるので、胸を張って世界中どこでもツアーできると思いますよ。