ナタリー PowerPush - Tommy february6
川瀬智子15周年を飾る“原点回帰”盤
自分のことを考えるのは憂鬱
──ちなみに川瀬さんって、デビューしてからの15年間で新作をリリースをしなかった年がないんですよ。それだけのこだわりを持って制作している中で、休みをとってリフレッシュしようと思ったことはないんですか?
大きい休みはなかった気がするなあ。というか、音楽活動関連以外にやりたいことないんですよ、たぶん。今回もフェブラリーとしてまさかの9年ぶりのオリジナルフルアルバムだと聞いてびっくり(笑)。毎回「○年ぶり!」とかって付くけど、ほかのプロジェクト名でリリースはしてるからピンと来ないですとしか言えないです。プロデュースの仕事とか、PVのキャストやダンサーの設定やビジュアルを考えたりするのは超超楽しくて夢中になれるから、制作中に煮詰まってるときはそういう楽しいことを考えたりして気分転換してます。誰かの演出を考えているときが一番生き生きしてるかもね。自分のビジュアルとかはいつも後回しで、考えるのは憂鬱なんです。
──そうなんですか? ちょっと意外ですね。
基本、背景や周りのキャラクターが整っていればなんでもいいっていうか。制作が重なってるから、面倒なのもあるけど。とにかく自分の衣装はダンサーや背景に合わせて最後に決めればいい。自分のことは気乗りしないんですよ。変化が好きじゃないし見慣れてるからかな。今回のピンクのダイナーガールの衣装はダンサーの女の子たちのためにデザインしました。私が着てる黒ベースのものとダンサーが着てるピンクのものを2種類サンプルとして出して、ピンクのほうがカワイかったから私はボツのほうの黒でいいわって感じで急遽着ることにしたり(笑)。フェブラリーはメガネかけてればなんでもいいよとか思っちゃうから。衣装をお店に探しにいくのも最近は憂鬱で、1軒目で見つからなかったらもうしんどくてイヤになっちゃいますね。カフェばっかり入ってしまう。でも人のプロデュース用やダンサーの衣装ならいくらでもお店回れます。
──それってどういう違いなんですか?
なんでだろうなあ。自分に関してはイメージとしてベストな答えが見えちゃってるから、それに当てはまらないとイヤなんです。だから特に面白くないし、時間をかけたくない。でも人のことは予想できないところが作り込んでいて楽しいのかな。
──歌を作ったりレコーディングしたりするのが仕事モードで、周りのことを考えるのが息抜きになってるんですね。
そうですね。自分のことは本当にゲンナリ。スムーズにイメージ通りのものがそろってくるとテンション上がるんですけど、それなりに頭を使って時間がかかって、お金もかかる。でも、自分は自分でしかないし。ああこんなもんか、知ってる感じだなって。だから背景や出演してくれるキャストさんたちに関しては思いっきり凝りたいのが理想です。
外に出るの、怖いです
──ライブやツアーもやってほしいと思ってたんですけど、そこまで時間をかけて制作していて、しかも年内にあと2枚出すとなると、今年は難しいですかね。
本当はやりたいんですけどね。どうやったらいいのかわからないんですよ。世界観があって背景にもこだわっているから、これをライブでどう表現すればいいのかと。予算もかかるしお客さんが集まるのかって問題もあるから簡単にやりたいって言えない(笑)。
──なるほど、ライブでもやっぱりセットを作り込んでやりたい?
めちゃくちゃ凝りたいですね。でも、それができないから、みんなにがっかりされるしやらないほうがいいのかなって。
──ライブこそ本番だっていうタイプのアーティストさんもいるじゃないですか。
うん、それが本来のミュージシャンの考え方でしょうね。私も機会があればやりたいし、いつかそういう状況を作れるときがくるといいな。イベントでもいいし。まあ基本オタクだし、あまり外に出たくないっていうのがあるから制作中心でできるのはまったく苦痛ではないんですけど。
──そういう問題ですか(笑)。
自分の世界に入り込んで作るから、世間とのズレも感じるし、外は落ち着かない。例えば「人生ゲーム」とか「桃鉄」でも、都合が悪くなったらリセットしちゃう性格なんですよ。自分の世界観に浸っているのが心地よくて、現実でイヤなことをやらなくなっちゃった。現実逃避ばっかり(笑)。だから外に出るの、怖いです。
──まあ今は外出しなくても生きていけますしね。
そうそう、なんでもネットで買えるし届けてくれる時代だからね。近所にお店もたくさんあるし。世の中が便利すぎて、社交的にならなくてもいいでしょ。だから余計に世界が狭くなって、自分のワールドに固執しちゃう気がする。居心地がいいから。
ダイナーガールをマネしてもらえたらうれしいな
──今後、ほかに挑戦したみたいことってあるんですか?
やっぱりファッションも好きだから、そっちの方向で何かやってみたいですね。リアルクローズもいいですけど、今回のダイナーガールみたいになりきれるようなトータルコーディネートで考えた衣装を商品化したりしたいです。去年のハロウィン作品(2012年10月発売のアルバムTommy february6 & Tommy heavenly6 「HALLOWEEN ADDICTION」)で、眼帯ガールズっていうゾンビのチアリーダーのビジュアルをダンサーのために考えて、それをファンの人がマネしてくれたのがすごいうれしかったんですよ。Twitterで写真を送ってくれる人が何組もいて、そういうのを見て、今年のハロウィンもTommy関連の、例えば今回のダイナーガールをマネしてもらえたらうれしいなって思ってます! 一応、私が着てるアルバムタイトルの入ったTシャツ、缶バッジ、スカートと、ピンクのダイナーガールの衣装の商品化の話が進んでいるので、Twitterやオフィシャルショップページもチェックしてもらえたらある日突然グッズ化されてるかも! あとは音楽につながるようなショートストーリーとか、絵本もいつかは作ってみたいですね。
──では最後に、ファンに向けて今作の聴きどころをお願いします。
秋に予定しているヘヴンリーのフルアルバムへの導入を意識して作ったので、対訳も読んでもらえると面白いかも。次も楽しみにしてほしいですね。でも、自分の中にある意図とかコンセプトは抜きにしても、テンションが上がるような楽しい音楽にすることも目標でした。カンフル剤みたいに元気が出る作品になったと思うので、楽しくなりたいときに聴いてもらえたらうれしいですね。
- ニューアルバム「TOMMY CANDY SHOP SUGAR ME」 / 2013年6月12日発売 / Warner Music Japan / 初回限定盤 [CD+DVD] / 4300円 / WPZL-30596~7
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4300円 / WPZL-30596~7
- 通常盤 [CD] / 3150円 / WPCL-11416
- 通常盤 [CD] / 3150円 / WPCL-11416
CD収録曲
- FAIRY DUST
- SUGAR ME
- RUNAWAY
- ANGEL FADE
- SPACEY COWGIRL
- PINK ARMY
- AI NO AI NO HOSHI
- MY VACATION
- SUMMER BUBBLES
- BE MY VALENTINE
初回限定盤DVD収録内容
- SUGAR ME(Music Video)
- RUNAWAY(Music Video)
- SUGAR ME(Dance Video)
- RUNAWAY(Dance Video)
ニコニコ生放送「Tommy february6 NEW ALBUMリリースパーティ~CANDY SHOPへようこそ!!~」
配信日時:2013年6月14日(金)21:00~
Tommy february6(とみーふぇぶらりー)
the brilliant greenのボーカリスト・川瀬智子によるソロプロジェクトのひとつ。明るくポップでフェミニンなキャラクター設定を持つ。2001年に活動を始め、デビューシングル「EVERYDAY AT THE BUS STOP」ではチアガールのコスプレで話題を集める。2012年2月、Tommy february6のダークサイドであるTommy heavenly6との共同名義によるアルバム「FEBRUARY & HEAVENLY」で約7年ぶりに再始動した。これ以降活発にリリース活動を行っており、2013年6月にはニューアルバム「TOMMY CANDY SHOP SUGAR ME」をリリース。